イーサリアムの定義
暗号資産の世界に初めて足を踏み入れた人が抱く疑問に「ビットコイン(BTC)はよく聞くけど、イーサリアム(ETH)って一体何なのだろう?」というものがあると思います。
おそらく、取引所やニュースなどで、ビットコインの横に暗号資産イーサ(ETH)があるのを目にすることが多いでしょう。しかし、イーサリアムとビットコインを同じものと捉えるのは早計です。なぜならこの二つは、作られた目的も機能も、そして技術さえも異なるからです。
イーサリアムとは、イーサトークンを利用した分散型ブロックチェーンネットワークのことです。ユーザーは取引、ステーキングによる保有資産の利息獲得、NFTの使用と保存、暗号通貨の取引、ゲームプレイング、ソーシャルメディアの使用など、さまざまなことができます。
イーサリアムは多くの人から「次世代のインターネット」になると期待されています。Appleが提供するApp Storeのような中央集権的プラットフォームがWeb 2.0を代表するとすれば、イーサリアムのような分散型ネットワークはWeb 3.0と言えるでしょう。この「次世代ウェブ」は、近年注目されている分散型アプリケーション(DApps)、分散型金融(DeFi)、分散型取引所(DEX)などを意味します。
この記事では、イーサリアムの歴史や仕組み、イーサリアムとビットコインの違い、イーサリアムのアプリや今後の展望について紹介していきます。一緒に見ていきましょう。
イーサリアムの歴史
イーサリアムは現在、ビットコインに次ぐ世界第2位のブロックチェーン・プロジェクトとなっています。イーサリアム創業者のVitalik Buterin氏(当時19歳)は、ビットコインに存在する欠点を補うために、このプロジェクトを共同で立ち上げたとされています。
Buterin氏は2013年に発表したイーサリアムについての論文で、スマートコントラクトについて詳述し、分散型アプリケーションの開発を可能にしました。当時のブロックチェーン技術では、DAppsの開発自体はすでに行われていましたが、プラットフォームを相互運用できるものはありませんでした。Buterin氏はDAppsの実行と、プラットフォームの相互運用を統一することを目的として、イーサリアムを開発したのです。
こうしてイーサリアム1.0が誕生しました。これは、Apple社が提供するApp Storeのようなものだと考えてください。何千何万もの異なるアプリケーションが存在するプラットフォームです。App Storeとイーサリアムの大きな違いは、管理主体の有無です。
App StoreはApple社のルールに基づいて運営されていますが、イーサリアムでは開発者がDAppsの中で独自のルールを適用し自律的に実施されます。つまりイーサリアムには、規制を変更したり実施したりする管理者が存在せず、コミュニティとして活動する人々の手に権力が配分されている形となっているのです。
もちろん、このようなネットワークの構築は決して安価では済みません。そこでButerin氏と共同創業者たちは、トークンのプレセールを開催し1,843万9,086ドル相当のイーサを集め、イーサリアム発展のための資金としました。また同グループは、ネットワークの維持と発展を目的とするイーサリアム財団をスイスに設立しています。
時が経つにつれ、開発者たちが独自のアイデアを持ってイーサリアムに集うようになりました。2016年には、The DAOと呼ばれるネットワークの変更や提案に投票する民主的な分散型ブロックチェーンプロジェクトが立ち上がりました。この組織はスマートコントラクトによって支えられ、特定の管理者を持たない形で活動します。管理者が存在しない代わりに、一定数のトークンを保有している人々により資金の使い道や戦略に関する提案が出され、投票によって意思決定が行われる仕組みとなっています。
しかし、2016年に事件が起こります。The DAOには、保有するDAOをETHに変換するSplitという機能があります。このSplit機能を悪用し、正体不明のハッカーがDAOの保有資産から4,000万ドル相当の資金を盗むという、通称「The DAO事件」が起こりました。Split機能には、資金移動の指示から28日経たないとイーサを引き出すことができないというルールがあります。つまりこの期間は、不正流失を行ったハッカーでさえも、移動させたイーサを引き出すことはできていなかったのです。
この28日間という限られた時間の中で盗まれた資金を元に戻すため、The DAOはユーザー投票によってイーサリアムの「ハードフォーク」を行うことを決定しました。ハードフォークとは暗号資産の仕様変更の一つで、ハッキングされた取引自体を無効化することができます。ハードフォークの実行は、イーサリアムの目指す非中央集権性に反するのではないかという声も一部ありましたが、投票者による90%以上の賛成のもとハードフォークが実施されました。こうしてイーサリアムは資金流失を防ぎ、古いネットワークからアップグレードする大規模なソフトウェア更新を行い、現在に至ります。
イーサリアムと分散型ネットワーク
イーサリアムを理解する際に押さえておくべき大きなポイントが「非中央集権化」です。現在私たちが使用しているデジタルサービスには、必ず管理者が存在します。例えばGmailやInstagramを通して、私たちの個人データや財務情報などはすべて、Meta(旧Facebook)やGoogleなどの企業が所有するクラウドやサーバーなどに保存されていることになります。そしてそれらの管理者は、ユーザーの意志を問わずサービスを停止したり、使用をブロックすることが可能です。
イーサリアムのアイデアは、このようなインターネット上のアプリの仕組みを変え、管理者をスマートコントラクトに置き換えることで、ユーザーにより多くのコントロールを与えることを目的としています。多くの開発者は、インターネットは常に非中央集権的であるべきだと考えており、この目標を達成するための新しいツールとしてイーサリアムは期待されているのです。
イーサリアムとビットコインの違い
前述したように、イーサリアムは少なからずビットコインからヒントを得ています。どちらも暗号資産であることに変わりはなく、イーサリアムは基本的にビットコインと同じブロックチェーン技術を使用しています。これはネットワークを分散し、特定の組織だけの支配下に置かないようにするものです。
しかし、イーサリアムとビットコインには大きな違いがあります。ビットコインは主に「価値の貯蔵」として使用されていますが、イーサリアムはソーシャルメディアや複雑な金融取引など、さまざまなアプリケーションを分散化することが目的とされています。
イーサリアムはしばしば、インターネットを非中央集権化する「ワールドコンピューター」と表現されます。イーサリアムでは、これまで一般的であった中央集権的なサーバーが、世界中に散らばる何千ものノードに置き換えられるため、文字通りユーザーによる「ワールドコンピューター」が形成されます。イーサリアムは、いつか世界中の誰もが使えるようになることが期待されています。
イーサリアムの今後
現状のイーサリアムは、スケーラビリティ(システムの拡張性)の低さが課題とされています。スケーラビリティとは、ブロックチェーンを使用した取引が増大しすぎることにより、取引処理の遅延が発生することです。つまり、今すぐには多くのユーザーをサポートすることができず、GoogleやFacebookなどの中央集権的なプラットフォームを凌駕する真のワールドコンピューターになる日はまだ先になるということです。
しかし、2020年12月1日にローンチされたイーサリアム2.0は、こうした問題を解決することが期待されています。Proof-of-Work(PoW)からProof-of-Stake(PoS)への移行を伴うネットワークの重要なアップデートが行われることで、イーサリアムネットワークをさらに拡張することが可能となり、より一層安全性と持続性が高まることに繋がるのです。
まとめ
今回の記事では、イーサリアムの歴史や実用性、今後の展望について解説しました。果たしてイーサリアムが非中央集権化を実現し、本当の意味で「ワールドコンピューター」になる日は訪れるのでしょうか。
これからのイーサリアムの発展に期待しましょう。
監修者: 株式会社techtec リサーチチーム
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