「PGN」がシャットダウンを決定、公共財に持続的に資金を提供することの難しさに直面

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2023年後半よりEthereumのLayer2として多くのネットワークが立ち上がりました。そのような状況の中で、それぞれのL2が独自性を打ち出していくことが求められました。特にPublic GoodsにフォーカスしたL2であるPGNも2023年にローンチしましたが、2024年1月にネットワークをシャットダウンする予定であることを発表しました。

本記事では、シャットダウンを発表したPGNの概要と思想、そしてPublc Goodsに持続的に資金を提供することの難しさについて紹介致します。

目次

  1. Layer2(L2)とは
  2. 公共財にフォーカスした「PGN」とは
  3. 公共財に持続的に資金を提供することの難しさ
  4. まとめ

Layer2(L2)とは

2023年後半から多くのLayer2が立ち上がりました。そもそもLayer2とは、Ethereumの真上に構築されたブロックチェーンネットワークです。有名なものでArbitrum One、OP Mainnetやzk Sync Eraなどが挙げられます。技術的なアプローチで大別した場合、Optimistic Rollupという技術を採用したArbitrum One、OP Mainnetが現状の主流で、zk Rollupを採用するzk Sync Eraが今後注目されると考えられています。

そしてこれらのArbitrum One、OP Mainnetの技術スタックを活用して独自のLayer2(Layer3)を立ち上げることが比較的容易になりました。Arbitrumの場合はArbitrum Orbit、OP Mainnetの場合はOP Stackという技術スタックをローンチしており、PGNはOP Stackを活用して構築されたLayer2になります。

公共財にフォーカスした「PGN」とは

PGN(Public Goods Network)は、Ethereumの真上に構築されたLayer2であり、公共財に持続的に資金を提供することを目的として、Gitcoin Foundationが中心となって立ち上げられました。

公共財への資金提供の財源は、Layer2というネットワークによる収益であり、シーケンサー手数料を予定していました。Layer2におけるシーケンサーは、トランザクションの順番を決定する役割を担い、その報酬として手数料を獲得します。シーケンサーはブロックチェーンにおけるバリデータに似ていますが、バリデータに比べると仕事量が少ないものと認識してもらうとよいでしょう。

PGNにおけるシーケンサーはGitcoin Foundationであり、シーケンサー手数料の大部分が公共財プロジェクトに提供される仕組みです。つまり、PGNのユーザーが増えて、トランザクションが増えれば増えるほど、シーケンサー手数料が増加して、公共財プロジェクトへの資金が提供される循環になる予定でした。

しかし、残念なことに2024年1月18日に、2024年6月にPGNをシャットダウンする予定であることが発表されました。シャットダウンを決定した主な要因は下記とされています。

  • ネットワークのトラフィックが想定より遥かに少なかったこと
  • CSR(Contract Secured Revenue)の実装が出来なかったこと
  • ネットワークの維持管理のコストが高かったこと

PGNはOptimismが提供するOP Stackによって構築されており、OptimismのSuperchainの一部でした。技術的リソースが制限される中で、CSRをPGN単独で実装することが困難であることが判明し、dappsの誘致に苦戦してしまいました。

CSRは、PGN上のdappsのスマートコントラクトが利用される際に、一部の手数料を開発者などが獲得できる仕組みです。CSRのような仕組みがあれば、多くのdappsがPGN上に構築されたり、マルチチェーン対応の一環としてPGNを採用していた可能性も高いです。

dappsの誘致に苦戦したとともに、その他Layer2とのユーザーやTVLの奪い合いにも負けてしまいます。その他のLayer2は、将来的なガバナンストークンのエアドロップの可能性を示唆することにより、多くのユーザーとTVLを獲得しました。その一方で、PGNはSupperchainの一部であるため、ガバナンスはOptimismに委ねたいという考えのもと、独自のガバナンストークンを発行することを避けていました。これが原因でネットワークのトラフィックが想定よりも遥かに下回る結果になってしまいました。

公共財に持続的に資金を提供することの難しさ

参照:Gitcoin

結果的に想定した結果を得られなかったものの、Layer2を立ち上げることによって公共財に持続的に資金を提供しようとしたPGNのチャレンジには意義がありました。

PGNの運営を行っているGitcoin FoundationによるGitcoinは、寄付のプラットフォームです。Gitcoinでは、公共財だけでなくClimate Techなどの社会課題に挑むプロジェクトに寄付することが可能なプラットフォームになっています。寄付の仕組みにはQuadratic Funding (QF) という仕組みを利用しており、マッチングプールとのマッチングによって寄付金額を最大化することが可能になっています。

公共財に寄付という形で資金を提供することには成功しているものの、マッチングプールに持続性はありません。誰かがプールのための大量の資金を提供する必要があり、提供者がいなくなると資金が提供することができなくなります。このような持続性の無さから、別のアプローチとしてPGNというアプローチを行ったかと思われますが、残念ながら成功には至りませんでした。あらためて、公共財に持続的に資金を提供することの難しさが浮き彫りになりました。

まとめ

本記事では、公共財にフォーカスしたPGNのシャットダウンを取り上げました。市況やタイミングによっては、もっとネットワークを持続することができたかもしれないので、とても残念な結果となりました。しかし、まだ別の技術スタックを活用することでコスト削減できる可能性や、別の運営者が関わるなどの形によって存続される可能性も残されています。今後の動向については、ガバナンスフォーラムで議論されるので是非追ってみてください。

【参照記事】Announcing the spin down of PGN (EoL June 2024)
【参照URL】@pgn_eth
【参照サイト】Gitcoin

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ビニール 【ReFi Japan】

2017年より暗号資産への投資を開始。海外プロジェクトの日本アンバサダーなどを務め、日本コミュニティの拡大や運営を担当。2022年よりWeb3インキュベーターであるFracton Venturesにて、主に企業様向けのWeb3研修会などを担当。ReFi JapanのCo-Founderとして、日本でのReFiの認知拡大の活動に尽力。