ReFi(再生金融)をはじめとするWeb3の分野において、2023年より注目されるようになったワードとして「RWA(Real World Asset)」があります。RWAとは、現実世界の資産をデジタル化して、ブロックチェーン上で流通させたりするような領域を指します。ReFiにおいては、カーボンクレジットのオンチェーン化もRWAであり、その他の穀物や不動産をオンチェーン上のデジタル資産として表現しようという動きが加速しています。
本記事にて紹介するAgrotokenは、穀物に注力しているRWAおよびReFi領域のプロジェクトです。
目次
Agrotokenとは
Arrotokenはアルゼンチン発のスタートアップで、2020年に創業しました。アルゼンチンから事業をスタートしたものの、メインの市場をブラジルに設定しています。
2023年の年末にはプレシリーズAラウンドで1250万ドルの調達を完了したことを発表しました。同ラウンドには2023年11月に決済大手Visa社が200万ドルの投資をおこなっており、Bunge Ventures、Borderless Capital、 Xperiment Ventures、Beagle CapitalなどのVCが参加しています。同ラウンドのリードを務めたのは、食料問題や気候変動分野などの領域に投資を行うBunge Venturesです。投資家陣を見ると、クリプト関連に主に投資する投資家はBorderless Capitalぐらいで、あまりクリプト色を感じません。
Agrotokenは、大豆(SOYA)、トウモロコシ(CORA)、小麦(WHEA)といった現実世界の作物をトークン化し、1トークンは備蓄されている同じ穀物1トンによって裏付けられています。実際に備蓄されている穀物の量は、PoGR(Proof of Grain Reservation)を通じて検証され、透明性が高く、安全で、分散化され、常に監査可能となっています。また、マルチチェーン対応することによって、様々なユースケースにおいての最適化を目指しています。
現状対応しているチェーンは、Ethereum、Polygon、Algorandです。なお、Borderless CapitalはAlgorandエコシステムと密接に関わっており、そのような背景からAlgorand対応が決まったとも推測されます。Algorandとしては、南米領域に注視しており、南米のスタートアップにも投資をしているので、将来的にAgrotokenエコシステムとの繋がりが生まれてくるかもしれません。
トークン化された穀物の使用方法
Agrotokenのプラットフォームを介して、トークン化された穀物は現物1トンの価格に裏付けられます。つまりステーブルコインにカテゴリー分けすることになります。現在一般的に使用されているステーブルコインは、法定通貨担保型であるUSDCやUSDT、そして暗号資産担保型のDAIなどが有名です。Agrotokenでは、実際に収穫された穀物によって担保されているので、穀物担保型のステーブルコインを発行することになります。
Agrotokenのプラットフォームを介してステーブルコインを使用することによって、農家の方々の資金効率が上がることが予想されます。これまで穀物を収穫してから、販売して、売り上げが手元に入るまでのタイムラインはとても長くなってしまうという問題点を抱えていました。Agrotokenによってステーブルコインを発行することによって、収穫してから備蓄業者に引き渡した時点で、収穫物を資産として運用することが可能になります。
具体的には、発行したステーブルコイン担保にして融資を受けることや、ステーブルコインで決済を実施することが可能になります。農家は新たに融資を受けることができれば、設備投資を増やし、これまで以上に効率よく穀物を生産する体制を整えることができるようになります。またVISAから投資を受けていることもあり、デビットカードによって決済することも可能になるとされています。これまで生産した穀物を現金化するまでのプロセスが煩雑かつ時間がかかっていましたが、ステーブルコインを介することによって現金化するまでのタイムロスを気にする必要がなくなります。また一部の南米地域においては、法定通貨の価値下落リスクを軽減させる一面もあります。
そして金融の側面では、穀物自体の収穫量に応じて価格が変動するというメリットとデメリットが存在します。2023年アルゼンチンで干ばつが発生して収穫量が減少してしまったことによる穀物価格上昇の恩恵をメリットとして享受し、豊作の場合はその逆の影響をデメリットとして享受します。ステーブルコイン化することによって、金融資産になるので、このような金融の側面を新たに持つことになります。
今後の展望
Agrotokenチームは、2024年に最も注力するのはブラジルとアルゼンチンの市場としています。それ以外の地域の候補として、コロンビア、メキシコ、パラグアイ、ウルグアイなどが候補にあがっています。まずは中南米を中心にユースケースを創出し、エコシステムを築いていくことになります。
RWAおよびトークン化の領域は、規制との兼ね合いもあり、プロジェクトの進捗を生み出すのに時間がかかります。2024年はRWA元年とも言われていますが、主に注目されているのは社債や不動産などの金融資産領域であり、Agrotokenのような農業分野に注目したプロジェクトは少ないです。地方創生の文脈においても、このようなプロジェクトとの相性は良いと考えられるので、日本の農業を生かした類似プロジェクトが国内においても登場するかもしれません。
【参照サイト】Agrotoken
【参照URL】WHITEPAPER
【参照記事】Los nuevos “Reyes del Agro”: detrás de Agrotoken y sus planes para tokenizar la economía
ビニール 【ReFi Japan】
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