ガスとは、イーサリアム上でトランザクションを実行する際に必要となる手数料のことです。ガスの単位は一般的にGweiと表記され、1Gweiは0.000000001イーサリアム(1ETHの10億分の1)となっています。ガスのコストは通常、ガス料金、ガス代、ガスコストなどと呼ばれます。
ブロックチェーン上で暗号資産の送金取引を行う場合、そのトランザクションに必要な計算処理を行ってくれるマイナーに支払う手数料がかかります。イーサリアムの場合は、マイナーへの手数料に加え、スマートコントラクトを実行する際の手数料も必要となり、これらの合計が、ガス代になります。
ガス代は、海外のレストランでのチップ制度のように、ユーザー自身が設定することが可能です。マイナーは報酬を最大化するためにガス代の高いトランザクションから優先的に実行することができ、ユーザーがガス代を低く設定するとマイナーに処理を後回しにされてしまいます。その結果、取引の承認に時間がかかることもあります。
そもそもなぜガスが必要になるのか
ガスは元々、イーサリアムにおける無限ループを防止するために実装された仕組みです。無限ループとは、その名の通り、無限に終了しないプログラムのことを指します。これだけを聞くと便利そうな感覚を持たれる方もいるかもしれません。実際に、無限ループのプログラムを組むこと自体は決して難しいことではありません。しかし、コンピュータサイエンスの世界では、「意図しない」無限ループの発生は大きな課題の一つとして認識されています。なぜなら、無限ループに陥ったプログラムはリソースを無限に消費し続ける上に、それ以降使い物にならない状態になってしまうからです。
ブロックチェーン技術は、不特定多数のノードから構成されているため、もしブロックチェーン上で無限ループが発生してしまうと、全てのノードが同時にダウンするまで無駄なエネルギーを消費し続けてしまうことになります。
この無限ループを防ぐための方法として導入されたのがガスです。イーサリアムは、ガスと呼ばれる手数料を設定し、もしガスが不足した場合には強制的にプログラムが停止する仕組みを導入することで、無限ループ問題を解消しました。トランザクションを実行する際にあらかじめ設定したガスが不足している場合、そのトランザクションは無効となる仕組みです。
また、ガスには「イーサリアムネットワークの負荷を軽減する」という役割も存在します。イーサリアムの利用者は世界中に存在するため、トランザクションの量が増えすぎるとネットワークへの負担が大きくなり、送金スピードも低下します。そのため、ガスという手数料を設定することで、ネットワークへの負荷をコントロールしています。また、マイナーはガス代の高い取引から優先的に作業を進めていくため、マイナーの労働単価を高めることでマイニング作業が追いつかなくなることを防ぐ目的もあります。
ガス代を低く抑えるには
ガス代は、前述した通りユーザー自身で価格の設定が可能となっています。もう少し具体的に言うと、ガス代は「Gas(仕事量)× Gas Price(1Gasあたりの単価)」で算出できます。このうちの、「Gas Price」をユーザー側が設定できるということです。ガス代は、イーサの相場価格にも直接影響を受けるため、どれだけのガス代を支払うべきかを理解することができれば、ガス代を節約することも可能になるということです。
それではここで、実際にガス代を低く抑えるために使える工夫を3つ紹介したいと思います。
1. リアルタイムのガス代相場をチェックする
イーサリアム上のネイティブ通貨であるイーサ(ETH)は、リアルタイムで価格変動が起きているため、トランザクションを実行する前に適切なガス代を確認することが大切です。それを確認できるのが、ETH Gas StationやEthereum Gas Trackerなどのウェブサイトです。これらのウェブサイトを利用することで、ガス代やトランザクションにかかる推定時間をリアルタイムで知ることが可能です。
2. L2スケーリングソリューションを活用する
L2は、レイヤー2またはセカンドレイヤーなどと呼ばれ、ブロックチェーン(レイヤー1)に記録されない「オフチェーン」のことを指します。L2ネットワークを利用して取引を実行することで、1秒あたりに処理できる取引量を上げ、少額の送金を高速で行うことを可能とする技術です。
人気のL2スケーリングソリューションはArbitrum、Optimisim、Loopringなどが挙げられます。これらのサービスを利用することもガス代を抑える上では有効な手段です。L2の取引はオフチェーンで発生し、イーサリアムネットワークによって検証され、オンチェーンで記録される仕組みとなっています。ArbitrumやOptimisimでは、かかるガス代は単純なイーサ送金の約10分の1になります。ガス代が抑えられる理由は、取引検証の時だけイーサリアムでやり取りが行われることで、マイナーが必要とするガスが少なくなるためです。
3. 気長に待つ
ほとんどの場合において、DeFi関連の取引では、低くガス代を設定したままでも承認を待つことは可能です。急ぎの取引でない場合は、ガス代を低めに設定して気長に待つことも一つの節約術といえるでしょう。万が一、ガス代が安すぎるために取引が保留になっている場合は、その取引を削除したり、ガス代を少し高く設定し直すことも可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回の記事ではガスとは何か、またガス代をどのように低く抑えるのかについて解説しました。
ガス代については、シンプルで分かりやすい基準として「もしトランザクションがすぐに承認された場合は、ガス代を過払いしている可能性がある」というポイントも抑えておきましょう。
また、実際のトランザクションにおいては、ユーザーがガス代を毎回計算するというケースはそこまで多くありません。基本的に、利用しているウォレットなどが自動的にガス代の計算をしてくれるからです。ただし、イーサはリアルタイムで価格が変動しているため、ウォレットに表示されているガス代と、実際にイーサリアムネットワークに支払うガス代に大きな差がある場合もあります。
そのようなリスクを避けるためにも、自分自身でリアルタイムのガス代の見積りができるウェブサイトをチェックすることは、必須であるといえるでしょう。
監修者: 株式会社techtec リサーチチーム
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