米小売り大手ウォルマート(ティッカーシンボル:WMT)は9月、米ヘルスケア大手ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)と10年間にわたる包括提携を締結したと発表した(*1)。ユナイテッドヘルスのネットワークやツールを活用し、高品質で低価格の医療サービスの提供をめざす。
ウォルマートは2019年、国民皆保険制度がない米国で、透明性のある低価格な医療サービスを提供すべく、店舗併設の診療所「ウォルマート・ヘルス」を開設した。現在はアーカンソー州やフロリダ州など27か所に拠点をかまえる。20年に処方薬管理アプリの米ケアゾーンを、21年には遠隔医療の米ミーエムディーを買収し、デジタルヘルスケアも強化。ウォルマート・ヘルスを拠点としたバーチャルケア(オンライン診療)も行っている。
今回の提携では、フロリダ州とジョージア州にあるウォルマート・ヘルスの15店舗で協業を開始し、徐々にその他の地域へもサービスを拡充していく方針だ。ウォルマート・ヘルスの医療従事者は、ユナイテッドヘルスの「オプタム(Optum)」が提供する医療データ分析ツールを利用できるようになる。最終的に数十万人の高齢者およびメディケア(#1)受益者むけに、複数のメディケア・アドバンテージを通じた「バリューベース・ヘルスケア(価値に基づく医療、#2)」の提供をめざす。
ジョージア州では23年1月より、両社共同ブランドの医療保険「ユナイテッドヘルス・メディケア・アドバンテージ・ウォルマート・フレックス(HMO-POS)」の提供を開始する。また、ユナイテッドヘルスの医療ネットワークへも加入する。これにより、ユナイテッドヘルスの保険加入者はいつでも、どこからでもウォルマート・ヘルスのオンライン診療を利用できるようになる。
ユナイテッドヘルスは健康格差をなくす取り組みを推進する。6月上旬には、同社が立ちあげた慈善財団ユナイテッドヘルス財団を通じ、10年間で1億ドル(約136億円)を投じると発表した(*2)。保健分野における人種や民族の多様化支援などに資金を活用する。
(#1)メディケア…65歳以上の高齢者および障がい者のための健康保険。メディケアのうち民間保険会社が提供するサービスが「メディケア・アドバンテージ」。
(#2)バリューベース・ヘルスケア…価値の高い医療にたいし、より多くの資源を配分すべく、医療の「結果(アウトカム)」に着目する考え方。
【参照記事】*1 ウォルマート「Walmart and UnitedHealth Group Collaborate To Deliver Access to High-Quality, Affordable Health Care」
【関連記事】*2 ユナイテッドヘルス財団、健康格差の是正に約130億円投じる方針。人種や民族支援のため奨学金サポートなど
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