英国における個人投資家への暗号資産デリバティブ商品の提供禁止に関する法規制が、予定通り1月6日に施行される運びとなった。
今回の法規制は、金融行動監視機構(FCA)により2020年10月に制定されたものだ。差金決済取引(CFD)や先物取引、オプション取引、上場投資証券(ETN)などが規制対象に含まれるという。
FCAからは、今回の施行に伴い5300万ポンド(約72億円)の損失を防ぐことができるとの試算が出されている。FCAは今回の施行に先立ち、暗号資産デリバティブについて次のように見解を述べていた。
- 暗号資産デリバティブを評価するにあたり信頼できる根拠がない(固有の原資産が存在しない)
- サイバー犯罪・盗難および金融犯罪の温床になる可能性がある
- 暗号資産は価格変動(ボラティリティ)が極端に高い
- 個人投資家の暗号資産に対する理解が不十分
- 個人投資家の暗号資産デリバティブに対する投資需要が欠けている
これらを理由に、1月6日以降に英国内で暗号資産デリバティブ商品を販売する事業者は、詐欺を行なっている可能性が高いとの注意も促している。消費者保護がFCAの使命であり、市場が黎明期の状態では投資家に大きなリスクが伴うとの意向だ。
昨年末には、米国財務省による自己管理型ウォレットの規制案が提出されるなど、ここにきて暗号資産に対する規制強化の波が全世界で強まっている。
この風潮に対しては、各国事業者より痛烈な批判が相次いでいる状態だ。そのほとんどは、自国に閉じた一方的な規制強化では単に国外にユーザーや投資家を流出させてしまう結果に終わってしまうといった趣旨のものである。
暗号資産デリバティブ商品を提供するCoinsharesでは、昨年末までに英国内での買い注文を全てストップさせている。英国での事業を縮小し、他国での拡大を模索する構えだ。
なお日本では、2020年5月1日に施行された改正金融商品取引法によって暗号資産デリバティブの取り扱いを規制している。英国とは異なり、金融庁に認可された事業者のみ暗号資産デリバティブ商品の提供を行うことが可能だ。
実際、海外の大手暗号資産デリバティブ取引所BitMEXやDeribitが、5月1日を機に日本市場からの撤退を発表している。
株式会社techtec リサーチチーム
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