スウェーデン鉄鋼SSAB、アマゾン傘下AWSと提携。データセンター向けに化石燃料フリー鋼供給へ

スウェーデン鉄鋼大手SSABは11月26日、アマゾン・ドット・コム傘下でクラウドコンピューティング事業を手掛ける米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)との提携を発表した(*1)。スウェーデンに新設するデータセンター向けに化石燃料を使用しない鋼材を供給すると発表した(*1)。

今回の提携の一環として、AWSがスウェーデンに新設する3つのデータセンターのうちの1つに、SSAB独自のHYBRIT技術で製造された化石燃料を使用しない鋼材を試験的に供給する。SSABの子会社であるRuukkiは建物の屋根と壁の構造を手掛ける。

AWSの北欧地域担当マネージングディレクターであるケレン・オコナー氏は「2040年までに事業全体でネットゼロ炭素を達成するという目標を掲げている。データセンターの建設に伴う炭素排出量を削減することは、当社にとって重要な優先事項である。SSABやRuukkiのような革新的なローカル企業と提携することにより、データセンターで使用する素材の脱炭素化に向けた重要な一歩を踏み出し、持続可能なインフラの新たな基準を打ち立てることができる」と述べた(*1)。

AWSは現在、スウェーデンのメーラルダーレンに3つの新しいデータセンターを建設中である。使用する鉄鋼による二酸化炭素(CO2)排出量を最小限に抑えるため、主に高炉で製造された鉄鋼よりもCO2排出量が少ないリサイクルスクラップから製造された鉄鋼を使用している。

ただし、スクラップは限られた資源であるため、SSABおよびRuukkiと提携し、HYBRIT技術で製造されたバージン鋼(生産されたばかりで未利用の鉄鋼)の調達も試験的に行うことになった。

HYBRIT技術は、鉄鉱石会社LKABおよびエネルギー会社Vattenfallと共同でSSABが開発したもので、炭素を大量に含む高炉によるバージン鋼の生産に代わるものとなる。同技術はコークス用炭の代わりに、化石燃料を使用しない電気で生産された水素を使用してスポンジ鉄を製造し、さらに加工して鉄鋼にする。

このプロセスではCO2ではなく水蒸気が排出されるため、鉄鋼製造プロセスからのCO2排出をほぼ完全に排除できる。SSABが化石燃料を使用しない鋼材を製造し、スウェーデン・ヴェステロースにあるAWSの新しいデータセンターの一部を覆うRuukkiが供するサンドイッチパネルに使用する。

従来の製鉄は、世界全体のCO2排出量の約7%の原因となっており、新たな鉄鋼生産とリサイクルの両方が排出量に影響している。SSABは鉄鋼の生産方法を変更することで、完全に化石燃料を使用しないバリューチェーンを構築したいと考えている。

SSABのサステナビリティ事業担当バイスプレジデントを務めるトーマス・ホーンフェルト氏は「AWSがHYBRIT技術を用いた鋼材を選択したことで、鋼材がスクラップ由来であろうと、鉄鉱石由来であろうと、データセンターの建設に伴うCO2排出量を削減できる」と述べた(*1)。

【参照記事】*1 SSAB「SSAB enters fossil-free steel collaboration with Amazon Web Services

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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