ESG(環境・社会・ガバナンス)投資は日本にも定着した感があるが、主要国と比較して日本のESG投資の金額は大きく出遅れているようにみえる。日本企業の環境、社会、企業統治についての取り組みは国際的に劣っているのだろうか。三井住友DSアセットマネジメント株式会社は11月2日付で発行したマーケットレポートでこの点を考察している。
ESG投資は、企業の非財務面の要素も考慮した投資。環境や社会に配慮した経営を行い、企業統治に優れた投資先を選別することによって、潜在的なリスクを排除し、長期的な収益確保を目指す。また、社会的課題であるSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた取り組みが、社会・企業の使命となる中、その達成プロセスとなるESG投資への注目が高まっている。同社も「日本企業の間でもコーポレートガバナンスの重視、働き方改革などの社会面への配慮、カーボン排出量削減などの環境問題への取り組みなどが増え、ESGの取り組みは進んでいる」と見る。
さらに、日本企業のESGへの取り組みを主要各国と比較するため、MSCI社が作成するESG評価を集計し、国別の平均ESGスコアを求めた(9月28日時点、出所はFactset)。対象はMSCI ACWI(新興国を含む世界株式指数)採用企業。日本企業の平均ESGスコアは5.1で、MSCI ACWIの平均スコアと同水準となった。内訳をみると、ESGの3つの要素のうち環境のスコアは5.6、社会のスコアは5.2と、それぞれ全体平均を上回った。同社は、米国に本社を置く金融調査会社EPFRグローバルの見解を引用。「このところ日本株へのESG投資の資金流入は加速しているが、金額的には米欧やグローバル株式と比較すると極端な少額にとどまる」とする。
同様の視点で、PR会社の株式会社ベクトルと九州大学の馬奈木俊介教授がコロナ禍の状況におけるESGスコアが株価に与える影響の検証をグローバルに調査・分析している。9月25日の発表で、世界平均と日本の株価上昇率を比較すると、日本の株価上昇率は世界平均より2.62倍と大きく上回った。「日本企業のESGスコアに対する意識の高まり、および投資家側はコロナ禍においてもESGスコアを意識した経営をしている企業を投資対象として評価の軸にしている」ことを示す一方、ESG先進国のEU諸国と日本の株価上昇率を比較すると、EU諸国の株価上昇率は日本の1.58倍となり、ESG投資に対する関心に格差が見られた。
三井住友DSアセットマネジメントは「日本企業に対するESG評価が国際的に標準的な水準にあることを勘案すると、日本企業に対するESG投資は、今後、資金流入が加速する余地が大きいと考えられる。そのためには企業自らがESG面の取り組みのアピールを一層強化するなど、投資家に対する働きかけの積極化が進むことが望まれる」とレポートを締めくくっている。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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