油田サービスSLB(旧シュルンベルジュ)は3月27日、炭素回収スタートアップのアケル・カーボン・キャプチャー(Aker Carbon Capture)の株式の過半数を取得し、新たに炭素回収の合弁会社を設立することを発表した(*1)。新会社では、技術ポートフォリオや事業プラットフォームなどを統合し、より迅速かつコスト効率の高い炭素回収ソリューションを市場に投入する方針である。
アケル・カーボンは、2020年7月に設立された二酸化炭素(CO2)の回収・有効利用・貯留(CCUS)専業のスタートアップだ。ノルウェーの石油ガスエンジニアリング会社アケル・ソリューションズからスピンアウト(分離独立)した。
アケル・カーボン独自の炭素回収技術は05年から開発され、09年より提供されている。同社の炭素回収プラントは、低エネルギー、非常に高いロバスト(頑強)性を有する溶媒、優れたHSSE(衛生・安全・セキュリティ・環境)パフォーマンスなどの利点を有する。
アーカー・ソリューションズ時代より20年にわたり培われてきたCCUSの経験、エキスパート、技術、プロジェクト・リファレンスの全てを受け継いでいることも特徴として挙げられる。
本拠地のノルウェーを始め、米国、ドイツ、スコットランドなどで6万時間以上の運転実績がある。独ハイデルベルクセメントが推進する、セメントとして世界初の炭素回収を活用した工場にも参画している。
今回のパートナーシップを通じ、アケル・カーボンが有する商用レベルのCO2回収製品とSLBの新技術開発および商用化に向けた高い専門ノウハウを活用する。相互補完的な技術ポートフォリオ、最先端のプロセス設計の専門知識、確立されたプロジェクト・デリバリー・プラットフォームも組み合わせる。
これらの取り組みにより、商業レベルで実績のあるプラットフォーム上において、アーリーステージの技術を世界市場へ導入加速させるためのツールを手にすることになる。SLBが新会社の株式80%を、アケルは20%を所有する。
アケル・カーボンのエギル・ファーゲルランド最高経営責任者(CEO)は「SLBと提携することで、我々は多角的でグローバルな炭素回収プレーヤーとなる。私たちが持つ一連の技術とグローバルリーチを組み合わせることで、より早く利益を上げられるプラットフォームを構築し、顧客、従業員、株主に利益をもたらせる」と述べた(*1)。
SLBによるアケル・カーボン株の取得は、規制当局の承認を経て、2024年第2四半期末までに完了する予定である。
国際エネルギー機関(IEA)は、CCUSがネット・ゼロ移行において重要な役割を果たすと考えている。30年までに年間1ギガトン以上のCO2を回収する必要があり、50年までに6ギガトン以上に拡大すると試算する(*2)。
CCUSは脱炭素の切り札と見られている。アケル・カーボンとSLBの両社が炭素回収事業を統合してシナジーを発揮することで、CCUS市場の発展およびカーボンニュートラルの実現に貢献することに期待したい。
【参照記事】*1 アケル・カーボン・キャプチャー「Aker Carbon Capture Announces Agreement to form Joint Venture with SLB」
【参照記事】*2 国際エネルギー機関「Carbon capture, utilisation and storage」
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