ネットゼロで水素が果たす“現実的”な役割とは。シュローダーが考察

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2050年までにCO₂排出量を実質ゼロにする目標「ネットゼロ」で、CO2を排出しないエネルギーとして注目されるのが水素だ。シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社は6月12日に発表したレポート「水素とネットゼロ~どの役割が現実的でどの役割が非現実的か?~」で、英国において、水素がネットゼロで期待される役割と、「柔軟性だが万能ではない」という懐疑的な部分の両面から解説している。

水素は、電気、陸上輸送・航空・船舶の燃料、熱源、長期間の電力貯蔵、産業プロセスの化学原料といった、幅広い用途を持つエネルギー源だ。気体または液体の状態で貯蔵でき、長期貯蔵する場合はアンモニアやメタノールに変換できる。英国政府は水素の潜在的な重要性を認識し、2021年8月に英国水素戦略を発表。23年3月には、電解水素スキームによる支援対象として、イングランド、スコットランド、ウェールズの20のプロジェクト(合計容量250MW)の最終候補リストを発表した。

しかし、シュローダーは「水素はその柔軟性にもかかわらず、万能ではない」と懐疑的な視点を示す。水素の用途の多くは他の燃料や技術によってすでに充足されており、旅客輸送や家庭用暖房など多くの場合では、低炭素化された送電網による電化の方が、水素よりも経済効率が高くなる。

さらに、従来の水素は一般的に、水蒸気(H2O)とメタン(CH4)を反応させることで製造され、CO2を大量に排出する。このブラウン水素は、その後回収される。グリーン水素は、クリーンな電気エネルギーを使って水を電気分解することで製造される。ブルー水素は、ブラウン水素を製造する際に排出されるCO2を回収し、貯蔵することで製造される。石油化学産業など、現在すでに水素が使用されている分野で、ブルー水素やグリーン水素を使用するのが最も分かりやすいケースだ。

水素は、将来、化石燃料の代替として航空・船舶分野での利用が期待されている。これらの分野は世界の温室効果ガス排出量の約4.5%を占めており、同社は「ネットゼロ達成のためには化石燃料に代わる、よりクリーンでエネルギー密度の高い燃料を見つける必要がある」と指摘。最も可能性の高い使用例として「クリーンな水素から得られるクリーンなアンモニアやメタノールを船舶用燃料として使用する」ことを挙げる。水素は鉛から漏れることが知られていますが、アンモニアやメタノールは比較的簡単に貯蔵でき、すでに大量に海上輸送されているからだ。

逆に、水素がどの程度有効なのか、疑問が残る潜在的な用途もある。まず、家庭用暖房。クリーンな水素を製造し、それを供給するための送電網を整備することが、コスト的に効果的であるかどうかは確信を持てないため、現時点では、同社では積極的に投資を検討する分野ではないとしている。

結論として「クリーンな水素を製造するコストとリスクを負ってまで、クリーンな電気でより簡単にできることに対して水素を使うのは無意味」と同社。「代わりに、水素の用途は、クリーンな水素が唯一の選択肢となるようなタスクに絞るべき」と主張する。

政策やさまざまな技術的アプローチの相対的な経済性が進化するにつれ、水素の利用方法がどのように展開されるか明らかになるまで、今後10年ほどかかると同社は予測。「確かなことは中長期的に水素関連資産への大幅な展開があり、これは英国のネットゼロ目標の達成に不可欠。これは、水素の製造にとどまらず、貯蔵やアンモニア・メタノール製造への投資機会にも広がっていくだろう」としている。

「実証的な」投資は、政府の歳入支援によって促進されることが多いが、水素は太陽光発電や風力発電のような数千億ポンド規模の投資にはしばらくはならないだろうと同社は見込む。これは欧州各国の政府間の競争によって強化され、将来は他国で製造された技術を買い入れることがないよう、技術をリードする企業の設立や受け入れに奔走することが予想される。

現在、ほとんどの政府が風力発電や太陽光発電でこのような取り組みを行っている。現実的、非現実的と見方は分かれるが、同社は「これらの取組みは、特にネットゼロの実現の過程において、「公正な移行」「グリーン・ジョブの創出」を目標とするという文脈からも重要としている。

【関連サイト】シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

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