米国の環境NGOレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)他7団体は6月22日、「森林と金融」のウェブサイトをリニューアル(6月8日)し、世界最大手54金融機関(銀行と投資機関)の森林関連方針を新たに評価・分析した結果、総じて方針が不十分であるという指摘を発表した。
森林と金融は、東南アジア、ラテンアメリカ、中央・西アフリカにおける牛肉、パーム油、紙パルプ、天然ゴム、大豆、木材など「森林リスク産品」への資金流入を包括的に分析したオンラインデータベース。金融商品、銀行・投資機関、国・地域、企業グループ、年、部門別に検索できる。今回の調査では森林リスク産品セクターのサプライチェーンに直接関わり、かつその事業が対象国やエリアの天然熱帯林に影響を与える可能性がある企業200社以上に対して行われた金融サービスを分析。対象のうち銀行は日本のメガバンク3行、バンクオブアメリカ、中国工商銀行(ICBC)など、投資機関には年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、ブラックロック、バンガードなどが含まれている。
方針評価は、各金融機関の森林関連方針を環境・社会・ガバナンス(ESG)の3分野35項目の基準で評価。結果は総じて低評価となり、10ポイント満点で平均2.4 ポイントだった。上記6産品セクターへの投融資の大半は、顧客企業の基準の検証はおろか、ESGの基本的な書類確認も行われていないとRANは指摘する。
金融サービスについては、対象金融機関の金融サービスの合計を調査・分析した結果、森林リスク産品への融資・引受額は、パリ協定締結以降の2016年から2020年4月で1280億米ドル、株式・債券の保有額は2021年4月時点で280億米ドルに上ることがわかった。メガバンクの方針がこの数年で改善した一方、野村グループ、三井住友トラスト・グループ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の方針は低いままだった。
公表された評価ランキングの1位は オランダのABNアムロ(7.1ポイント)、2位がラボバンク(6.8ポイント)、3位ノルウェー政府年金基金(6.5ポイント)。8位に三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)(5.1ポイント)、14位にみずほフィナンシャルグループ(3.8ポイント)、19位に三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)(3.1ポイント)、24位が野村グループ(2.6ポイント)。平均2.4ポイントを下回った三井住友トラスト・グループ(1.8ポイント)は31位で、GPIF(0.6ポイント)は39位だった。
今回の調査では、森林リスク産品企業への投資額が372億米ドル(2020年4月時点)から453億米ドル(2021年4月)に増加し、RANは「新型コロナウイルスの世界的流行と同時期に投資機関が森林破壊への投資を増やしていたことも明らかになった」と主張。森林生態系の破壊は、新型コロナのような新たな人畜共通伝染病の出現との相関を指摘する研究もあるとして、森林破壊の防止を訴えている。
【参照リリース】米環境NGO RAN『森林と金融』メガバンク等の森林方針の評価を発表
【参照リリース】三井住友フィナンシャルグループ「ESGに関するリスクの考え方について」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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