プライバシー確保とデータ共有の両立は可能か。イングランド銀行が分散型台帳のPoCを行う

イングランド銀行は4月、分散型台帳がいかにしてネットワーク内でデータを共有しながら関係者のプライバシーを守るのか、ブロックチェーンのスタートアップ企業Chainと手を組んでPoC(概念実証)を行ったことを発表した。

Chainと共に取り組んだのは、実用的というよりは学術的な調査であり、検証可能な技術を開発したわけではない。とはいえ今回の調査では、分散型台帳システムでプライバシーを確保することから生じる主要な疑問をいくらか探ることができた。

今回の調査で想定されたのは、中央当局、規制当局を含む複数の関係者間で、架空の資産の所有権を移転するというシナリオだ。ここで中央当局は、新たな資産を発行したり、関係者が台帳にアクセスすることを許可したりする。規制当局は全ての取引を見ることができる。調査における同銀行の目的は、主に次の通りだ。

ひとつめは、分散型台帳技術を基盤とするシステムにおいて、いかにしていずれの当事者(ただし規制当局を除く)も、自身が取引相手ではない取引の内容を推測できないと保証するのか、調査することだ。これには、承認プロセスの関係者が取引の内容を完全に可視化できないよう保証することを含む。ふたつめは、このプライバシーの保全がシステムのパフォーマンスに与える影響、同ソリューションがもたらすトレードオフ、リスク、課題を理解することだ。

同行とChainとの考察では、主要な課題やリスクの多くはプロセスフロー、ネットワーク構造をめぐる決定次第であることが明らかにされた。また今回の調査は、分散型台帳技術におけるプライバシーの課題へのアプローチ方法を確認する一助にもなった。

代替アプローチの多くは、データがネットワーク内の関係者に完全に行き渡らない手段を取っている。つまり、データは各取引に直接関わる関係者の間だけで共有されるというシナリオだ。このタイプのアプローチはプライバシーを確保するという面では強みがあるものの、分散型台帳技術の耐性を弱める可能性がある。だが、全ての関係者間でデータを共有するプライバシーソリューションはまだ開発のごく初期段階にあり、その展開例は限られている。

まとめると、ネットワーク内でデータを共有しながら取引のプライバシーを守り、同時に取引の監視を行う分散型台帳システムを設計することは、理論的に可能だと考えられる。とはいえ、暗号技術のスケーラビリティ、トランザクション、セキュリティを取り巻くリスクに関しては、より深く調査していく必要がある。

【参照記事】Fintech Proof of Concept
【参照記事】Bank of England Eyes Private Blockchain Oversight

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木村つぐみ

木村つぐみ

海外ビジネス情報の翻訳、ライティングを幅広く手掛けており、HEDGE GUIDEでは暗号通貨・仮想通貨関連記事を担当しています。暗号通貨・仮想通貨の特に興味深い点は、貨幣の持つ共同幻想性を明るみに出したことだと思っています。初心者の方にも分かりやすい説明を心掛けていきます。