「仮想通貨はリバタリアン、AIはコミュニスト」その意味するところとは

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PayPalの創業者でリバタリアンであることでも知られる投資家のピーター・ティールが、LinkedInの創業者リード・ホフマンとスタンフォード大学で行った対談で、今注目の2大テクノロジーについてこう発言した。「仮想通貨は非中央集権的であり、AIは中央集権的だ。イデオロギーの話として捉えるのなら、仮想通貨はリバタリアンでありAIはコミュニストだ。」

キャッチーな発言だと話題だが、なぜこういう捉え方をされるのだろうか。それは仮想通貨とAIそれぞれのテクノロジーが発展してきた経緯が関係している。両者はほぼ同時期に台頭してきたテクノロジーでありながら、その性質は正反対とも言えるほど異なっている。

まずAIは、一時ブームにもなったビッグデータを分析するテクノロジーだ。Googleなどの大企業が、自社に集まるデータを有効活用する術としてAIを利用している。つまりAIは膨大なデータを収集可能な一部の組織に力を与える、中央集権的な技術だと解釈できる。個々人は自分の情報をいつの間にか提供している側だ。

この状況がコミュニスト的だと同氏は指摘している。世界の歴史から考察すると、旧ソビエト連邦や毛沢東率いる中華人民共和国は非常に中央集権的な統治を目指した。どちらも共産主義を掲げた政権だ。AIを用いて人民のありとあらゆる情報を中央組織に集約できれば、これらの統治者はさぞかし喜んだことだろう。現に「中国共産党はAIが大好き」という同氏の指摘もある。

一方の仮想通貨は、既存の金融システムに取引を支配されない、個々人に力を与えるテクノロジーとして登場した。利用者のデータを集約する中央集権的な組織は存在しない。取引に必要な秘密鍵は本人にしか分からず、本人が管理する。この仕組みは個人の完全な自治を標榜するリバタリアニズムととても相性が良い。法的支配の及ばない理想郷をつくる。今や政府の規制が入ることもあり、全てが思い描いた通りになっているわけではないが、これがサトシ・ナカモトの希求した世界だ。

ちなみに、同氏と対談したリード・ホフマンは件の発言に対し「仮想通貨は無政府状態であり、AIは法の支配のもとにある」と別の表現でそれぞれの違いを言い表した。どのメタファーがしっくりくるだろうか。中央集権と非中央集権の対比はよく見かけるが、リバタリアンとコミュニストという思想の対比は新鮮な観点だ。

【参照サイト】Peter Thiel Says, ‘Crypto Is Libertarian, A.I. Is Communist.’ What the Heck Does That Mean?

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木村つぐみ

海外ビジネス情報の翻訳、ライティングを幅広く手掛けており、HEDGE GUIDEでは暗号通貨・仮想通貨関連記事を担当しています。暗号通貨・仮想通貨の特に興味深い点は、貨幣の持つ共同幻想性を明るみに出したことだと思っています。初心者の方にも分かりやすい説明を心掛けていきます。