米通貨監督庁(OCC)の通貨管理官代行を務めるブライアン・ブルックス氏が、分散型金融(DeFi)を「自動運転銀行」として概念提唱した。同氏は、世界最大手取引所CoinbaseでCLO(Chief Legal Officer)を務めていた人物だ。
「Get ready for self-driving banks」と題した米ファイナンシャルタイムス紙への寄稿で、ブルックス氏はDeFiを自動運転車に例えた上で次のように考察している。
「各種DeFiプロトコルは、自動化されたアルゴリズムによって管理されたシステムであり、金融サービス・商品における人間のコントロールの必要性を本質的に省いています。速度制限や信号機の働き、飲酒運転などをはじめとする多くの自動車関連法では、危険な車に対してではなく危険なドライバーに対して規制することを前提に設計されていました。昨今の自動運転車は、従来のルールでは想定されていない新たなリスクをもたらしています。銀行も同じ道を進んでいるのです。」
ブルックス氏は、CoinbaseからOCCへ活躍の場を移して以降、暗号資産業界の発展に大きく貢献してきた。2021年に入ってからも、米国立銀行に対するステーブルコインの使用を認可する書簡を公開している。
自動運転銀行を表現したDeFiのメリットについては、主に次のように述べている。
- アルゴリズムによって最良の金利を選択することができるため、預金者は比較検討に時間をかける必要がなくなる
- ソフトウェアを信用し自動的に実行されるため、特定の借り手に対する差別がなくなる
- 取引に人間の恣意性を介在させないため、詐欺や汚職のリスクを排除することができる
一方で、DeFiが抱えるリスクについても言及している。
- 取引頻度が増加することで株式の売却が加速するのと同様、ソフトウェアが預金者の引き出し回数を増加させる可能性がある
- これに付随して、従来の銀行と比較した場合に流動性のリスクが高まる可能性がある
- 資産のボラティリティが懸念される
- 人間がバリュエーションに関与していない場合、ローンの担保管理などはより複雑化する可能性がある
なお、ブルックス氏は2021年1月14日にOCCの職を辞任したことを突如発表している。トランプ大統領より2020年11月17日に、新たに5年の任期を承認されていた中での発表ということもあり、業界内では多くの話題を集めた。
【参照記事】Get ready for self-driving banks
株式会社techtec リサーチチーム
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