ニュージーランド政府は10月11日、牛や羊などの家畜のゲップや尿といった温室効果ガス(GHG)を排出する農家に課税する計画を発表した(*1)。世界初の取り組みとして2025年までに導入する意向である。
ニュージーランドには約1,000万頭の牛と2,600万頭の羊が飼育されており、同国のGHG排出量の半分ほどを農業が占めている。さらに家畜から排出されるのは主にメタンだ。メタンが持つ温室効果は二酸化炭素(CO2)の25倍になる。
ニュージーランドは、30年までにメタンの排出を20年比で最低30%以上削減することを目指すイニシアチブ「グローバル・メタン・プレッジ」に参加している。農業団体からの反発は必至とみられるものの、メタンの排出削減を推し進めるべく、主要な排出源となる家畜への課税政策を打ちだしたものと推察される。03年にも同様の構想を表明したが、当時は農家の反発で実現には至らず、農業はこれまで、排出量取引制度の対象外となっていた。
アーダーン首相は「この提案はニュージーランドの農家が排出削減で世界をリードし、競争優位性と輸出ブランドの向上をもたらす」と強調した。税収は農業セクターの新技術、研究、農家へのインセンティブ付与にあてるという。
同提案は11月18日までとするコンサルテーション(意見募集)期間に入った。
温室効果のある気体としてはCO2、一酸化二窒素、メタン、フロン類などがあり、これらをまとめてGHGという。CO2の排出量が圧倒的に多いため、GHGはCO2という印象を持たれやすい。また、農業は「エコフレンドリー」とのイメージを持つかもしれないが、農業・林業・その他の土地利用(AFOLU)は世界の経済部門別GHG排出量の22%を占める一大排出源となっている(*2)。
畜産大国ニュージーランドでは農業がGHG排出量の約半分を占め、家畜のゲップから排出されるメタンは高い温室効果を持つ。同国は30年までにGHG排出量を05年比50%減、50年までのネットゼロを目指すなか、メタン削減対策が緊喫の課題といえる。
メタン削減をめぐる民間レベルの取り組みとしては、仏エネルギー大手のトタルエナジーズ(ティッカーシンボル:TTEF)が、世界各国で操業する石油・ガス上流部門(#1)の事業すべてで、ドローンを活用した排出検知・定量化する取り組みを開始した(*1)。
(#1)上流部門…石油業界を原油の探鉱・開発・生産までにいたる開発段階。それ以降の精製・販売・輸送その他の段階は下流部門。
【参照記事】*1 ニュージーランド政府サイト「Pragmatic proposal to reduce agricultural emissions and enhance exports and economy」
【参照記事】*2 IPCC「Climate Change 2022 Mitigation of Climate Change Summary for Policymakers」

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