海外機関投資家は2022年市場環境に懸念も「ESG投資に付加収益を見いだせる」。ナティクシスIM調査

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「インフレ率が30年来の高水準に達し、中央銀行が景気刺激策を縮小し、顧客の期待リターンが現実的な水準を上回る中、2022年は厳しい市場環境になる」。資産運用大手のナティクシス・インベストメント・マネージャーズ株式会社が2月8日に発表した世界のプロのファンド投資家を対象とした調査で、コロナ禍の影響によるサプライチェーンの混乱や労働力不足、変異株への懸念が、世界経済への見通しを厳しくしていることがわかった。

調査対象は、世界中のプライベートバンク、富裕層向け資産運用会社、ファンド・オブ・ファンズ、ファミリーオフィス、ブローカーなど、資産規模で総額12兆6000億ドルを運用する436のファンド投資家。このうち、世界経済に関する質問では、ファンド投資家の半数がサプライチェーンの混乱を懸念しており、45%が中央銀行による支援策縮小を最大の経済的リスクとして挙げた。また、オミクロン株がもたらした現場の労働力不足などの混乱を受け、投資家の40%がウイルスの変異株を22年の経済的な最重要懸念事項と考えている。

続くリスクはインフレだ。投資家の7割が、2022年のポートフォリオの主なリスクとして金利を挙げており、次いで68%がインフレを挙げた。また、バリュエーションもポートフォリオの最大の懸念事項として挙げており、ファンド投資家の84%が「低金利がバリュエーションを歪めている」と見ていた。

このような厳しい見通しにも関わらず、長期的な想定リターンは上昇傾向にあり、21年の見通しでは7.1%だったのが、2022年には7.8%に引き上げられている。21年2月、3月に実施した前回調査では、顧客による14.5%という高水準の長期的な実質リターンに対する期待が示されたが、投資家は(期待に)応えることは難しいと見ている。

このような背景から、投資家はポートフォリオのリスクとリターンの可能性のバランスをとるために、年内は劇的な変化は行わず、戦術的な動きをとれるよう準備する傾向が高まりそうだ。

金利が史上最低に近い水準で推移する中、投資家は利回り獲得の代替を求めて、プライベート市場に注目する。調査では、インフラ(45%)、プライベートデット(35%)、不動産(30%)など、プライベート市場全般でのインカムを創出する投資への配分の増加が確認された。

一方、債券戦略はより厳しく精査されるようになり、ファンド投資家の39%が、金利に敏感な国債やソブリン債への配分を減らすと回答。しかし、グリーンボンドに投資している投資家の5割が、ESG(環境・社会・ガバナンス)に焦点を当てた戦略へのシフトが拡大し続ける中、22年に配分を増やすことを検討していると回答している。

ESGについては、自社がすでにESGインパクトへの投資を積極的に実施(37%)または考えている(39%)と答えた投資家は76%となった。半数以上(54%)は、社会問題や環境問題に影響を与えたいという願望がESG投資の需要を高めていると考えており、63%は、ESGに付加収益を見いだせると明言した。

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズの日本・北アジア代表を務める加藤欣司氏は「中央銀行の景気刺激策の後退と貿易再開の重視は、市場に大きな変化をもたらしており、ファンド投資家は22年を通してこの変化が継続すると予想している。運用会社は、この変化に対応するために、プライベート資産、アクティブ運用、ESGへの戦略的な分散投資に目を向けている」とコメント。株式や債券の高いボラティリティと、あらゆる資産クラスでの調整の可能性とが相まって、積極的なポートフォリオを求める投資家と、ディフェンシブなポートフォリオを求める投資家の数はほぼ同数としている。

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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