炭素集約型事業や環境負荷の高い事業活動を脱炭素型や低環境負荷型に移行させるための投融資「トランジション・ファイナンス」で、経済産業省は2月7日、トランジション・ファイナンスモデル事業で、化学分野のモデル事例に住友化学株式会社が調達を予定しているトランジション・ローンをモデル事例として選定した。同省は「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」に適合し、モデル性を有すると考えられる事例を支援しており、化学分野では初めての選定となる。
トランジション・ファイナンスに関連して、同省は脱炭素への移行に向けた分野別の技術ロードマップを策定しており、今月4日に電力、ガス、石油分野のロードマップを公表。既に公表した化学・鉄鋼分野に続くもので、カーボンニュートラル実現に向け、科学的根拠に基づいて、現状利用可能な省エネ・高効率化、燃料転換などの着実な低炭素への取り組みに加え、将来的な革新技術についても国内の各政策、国際的なシナリオを参照し、背景や時間軸とともに表している。
今後は紙・パルプ、セメントについて策定予定。モデル事例、ロードマップとも、企業が気候変動対策を検討する際、または金融機関などが、企業が資金調達を行う際、その戦略や取り組みが適格かを判断する際に参照することを想定する。
同省は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーなど既に脱炭素の水準にある取り組みに加えて、CO2多排出産業が着実に脱炭素化に向かうための移行(トランジション)の取組への資金供給を促進している。環境省、金融庁と共同して21年5月にクライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針を策定。「トランジション・ボンド/ローン」とラベリングをするための基本的考え方を整理した。
併せて、トランジション・ファイナンスを普及させるため、基本指針、ロードマップと整合し、モデル性を有する事例を選定、情報発信、評価費用の負担軽減を行っている。
検討組織は「経済産業分野におけるトランジション・ファイナンス推進のためのロードマップ策定検討会」で、地球環境産業技術研究機構(RITE)システム研究グループリーダーの秋元圭吾氏を座長に討論を重ねた。
【関連サイト】経済産業省「トランジション・ファイナンス情報ページ」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

最新記事 by HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム (全て見る)
- 2050年も化石燃料41〜55%、マッキンゼー最新予測で脱炭素目標達成困難に - 2025年10月20日
- 米Gevo、SAFプロジェクトで14.6億ドルの融資保証期限を延長獲得 - 2025年10月20日
- 米エネルギー省、中西部送電網に16億ドル融資保証 - 2025年10月17日
- 住友金属鉱山とトヨタ、全固体電池用正極材の量産化へ共同開発契約 - 2025年10月17日
- 日本最大16MW、グリーン水素で脱炭素実証 サントリー白州工場で稼働開始 - 2025年10月17日