世界的な資産運用コンサルタントであるマーサーの日本法人マーサージャパン株式会社は11日、マーサーが運用機関の運用プロダクトの評価にあたって実施しているESG(環境・社会・ガバナンス)評価の日本株運用における評価状況を発表した。
今回のESG評価では、2番目に高い評価となるESG2のレーティングが5プロダクトから8プロダクトに増え、全体の中での比率は5%から8%へ増加した。
グローバル全体でのESG1とESG2の比率と比較して「日本株運用におけるESG要因の取り込みの状況はまだ発展途上にあるが、ESG4の比率はグローバル全体での比率を下回る状況になっており、アクティブ運用にESG要因を取り込むことの重要性の認識が着実に広がっている」と評価した。
同社は2014年8月に機関投資家の行動規範「日本版スチュワードシップ・コード」の受け入れを表明、評価は同コードの精神に則り行っているもので、今回が4回目の発表。18年8月末時点における、日本株のESGレーティングの付与数と分布は以下の表の通り。

マーサーの日本株運用プロダクトの評価担当者である若槻学氏は「運用会社のESGに対する意識は、マーサーがESGレーティングの付与を開始した08年頃と比較すると格段に向上している。
特にG(ガバナンス)に関しては日本版スチュワードシップ・コードやガバナンス・コードの導入以後、企業が投資家との対話に以前よりも前向きという追い風を受け、運用者もエンゲージメントをアルファに繋げるべく努力している様子が窺われる」と指摘する。
E(環境)とS(社会)に関しては「意識は高まっているものの進展はGよりも緩やか」としながらも、「ESG全般に対する運用者のスタンス自体は総じて前向きで、ESG2の日本株式戦略が徐々にだが増加傾向にある等、
運用会社の意識の高まりがマーサーのESGレーティングの分布にも反映されている」として、「今後も海外株式の運用プロダクトのように高レーティングの割合が増加することが期待される」 と述べた。
マーサーの日本における資産運用コンサルティング部門の責任者である大塚修生氏は「巨額な資金を運用し、市場全体に影響力を持つ公的資金のESG要因の重視姿勢は明確になってきた。企業年金でもこの1~2年でESGへの関心は急激に高まってきている」と所感を述べ、一過性のブームではなく、長期的な取り組みとして根付くことに期待を寄せる。
マーサーは運用機関のアクティブ運用プロダクトを4段階のレーティングで評価しており、運用機関の投資判断におけるESG要因の取り組み度も合わせて評価している。ESGの評価の結果は、以下の表のように4段階のレーティングとして表示。

ESGを含む評価対象となる運用プロダクトはマーサーの顧客のニーズ等を踏まえながら評価担当者が選定している。評価対象とした運用プロダクトはアクティブ運用の日本株(小型株を含む)だが、現段階でSRIの専門ファンドは含んでいない。
また、パッシブ運用のESG評価では、議決権行使とエンゲージメントを中心とした評価を行うが、評価実績数が限られることから、昨年に引き続き公表の対象としていない。
【参照記事】「マーサー、日本株のESG評価状況を発表 」
【参照記事】「日本株のESG評価状況 2017年の調査結果」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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