拡張現実(AR)スタートアップのマジックリープ(Magic Leap)は5月31日、米アルファベット傘下のグーグルと提携したと発表した(*1)。現実と仮想世界を融合するクロスリアルティー(XR)技術の活用推進を図る。
マジックリープのARおよび光学分野の専門性をグーグルの技術プラットフォームと組み合わせ、ARソリューションの共同開発をおこなう。
マジックリープのジュリー・ラーソン-グリーン最高技術責任者(CTO)は「提携を通じて両社の専門性・技術を融合させることで、ARの変革を加速させ、開発者エコシステムと顧客のためにイマーシブ(没入型)体験を進化させ続ける」と述べた(*1)。
今回の発表を受け、グーグルが、これまで競合のメタやアップルにほとんど明け渡していたAR/VR市場への本格参入を目論んでいる可能性があると、一部の市場関係者は見ている。
グーグルは、サウジアラビアの政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンドが過半数を保有するマジックリープに投資している。マジックリープはARヘッドセットの分野で当初は時代の寵児と見なされていたが、消費者向けのニッチ市場で成功を収めるのに苦戦し、最近では技術のライセンス供与や他社向けの部品製造を模索しはじめている。
マジックリープとグーグルの両社は、今回の提携を通じて消費者向けARデバイスを生み出すか明言を避けた。グーグルは昨年からサムスン電子と複合現実(MR)技術の共同開発を進めているが、マジックリープとの提携に影響はない模様だ。
マジックリープは米国フロリダ州を拠点とする光学機器製造のリーダーである。AR業界のパイオニアとして過去14年間、魅力的で没入感のあるAR体験を創造すべく、文字の読みやすさ、色の忠実度、豊かな視覚の分野で画期的な進歩を遂げてきた。優れた設計とスケーラブルな製造により、広い視野範囲をカバーするのに十分な広なさの視野角(FOV)を備えた超軽量のアイピースを提供する。
主力AR製品である「Magic Leap 2」は、特許を取得した光学技術と軽量で人間工学に基づいたデザインを特徴とする。市販されているスタンドアローン型ARデバイスの中で、最高レベルの計算性能でアプリを実行する。同社は北米を拠点に、ベルギー、英国、イスラエル、日本、スイスにオフィスを構え、グローバルに事業を展開している。
一方、グーグルは10年以上前にスマートグラス「グーグルグラス」を発表したが、消費者ニーズを掴めず、15年に消費者向け市場から撤退していた。2年前には、英語やスペイン語など多言語の会話をリアルタイムに翻訳する眼鏡型端末を披露した。
しかし、今年1月にARチームの大半を含むハードウェア部門の従業員数百人を解雇しており、プロジェクトの先行きが見通しづらくなっている。
【参照記事】*1 マジックリープ「Magic Leap and Google are entering into a partnership to advance the potential of XR technologies」
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