英ロンドン証券取引所を運営するLSEGの最新の調査レポートによると、環境および気候ソリューションといったグリーンエコノミーの市場は、過去10年間でテクノロジー部門を除く全ての産業を上回るリターンをあげている(*1)。
LSEGの第5回目となる年次レポート「Investing in the Green Economy 2024」は、同社独自のデータ、分析、指数を使用して、グリーンエコノミーへの企業のエクスポージャーを測定した。世界中で19,000社以上の企業を評価し、FTSE Russellグリーン収益分類システム(GRCS)に基づき、133のグリーン製品およびサービスに分類されたグリーン収益データを評価した。
同調査によると、グリーンエコノミーの時価総額は、より広範な市場よりもはるかに高い割合で成長している。過去10年間の年平均成長率(CAGR)は13.8%であるのに対し、世界の株式市場の成長率は8.3%であった。グリーンエコノミーを独立したセクターとして見た場合、時価総額は7 兆ドルを超え、銀行、小売、エネルギー部門を上回り、ヘルスケア、資本財、テックに次ぐ第4位のセクターとなる。
グリーンエコノミーの収益は、過去10年間のCAGRが7.6%と、調査対象企業全体の5.3%を上回った。
グリーンエコノミーは長期的に好調な業績を上げてきたが、同調査では2020年以降の業績の不安定さも浮き彫りになった。要因としては、サプライチェーンの混乱、コストインフレ、金利上昇、地政学的な分断、グリーン保護主義などが複合的に影響している。
20年と21年に市場が急成長した後、22年にはグリーンエコノミーの市場規模は大幅に減少した。市場は23年に回復し、好調な業績を収め、現在では世界時価総額の8.6%を占めている。これは、21年に記録した時価総額シェアをわずかに下回っている。
国別では、24年に米国が最大の市場となる見通しであり、台湾、中国が続く。
グリーンエコノミーの分野別パフォーマンスでは、エネルギー管理と効率化(効率的なIT機器やグリーンビルディングなど)が過去5年間で17%のCAGRを記録し、最も高いパフォーマンスを達成した。エネルギー効率ソリューションの費用対効果の高さが要因である。
一方、再生可能・代替エネルギーは、再生可能エネルギーの導入が堅調であるにもかかわらず、収益性の低下により、最近パフォーマンスが低迷している。
グリーンエコノミーのパフォーマンスを上げる要因の1つとして、デジタルテクノロジー、特に人工知能(AI)とデータセンターの成長を挙げている。巨大テックは、エネルギー消費と環境への負荷の増大を懸念しており、再エネの最大の購入者となりつつある。マイクロソフトは、クリーンエネルギーの電力購入契約(PPA)において、企業単独としては過去最大の契約金額となる100億ドルを投じる。
チップやサーバー、冷却システム、超大規模データセンター、エネルギー需要管理などは、さらなるエネルギー効率の改善が必要であり、潜在的に急成長が見込まれる分野である。
【参照記事】*1 LSEG「Investing in the green economy 2024: Growing in a fractured landscape」
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