工業ガス大手英リンデ(ティッカーシンボル:LIN)は4月12日、独セメント大手ハイデルベルク・マテリアルズ(HEI)と、セメント業界としては世界初となる商用規模の二酸化炭素(CO2)回収・利用(CCU)施設を建設すると発表した(*1)。早ければ2025年に運用を開始する計画だ。
両社は「Capture-to-use(CAP2U)」と呼ばれる合弁会社を設立し、ドイツ・バイエルン州レンクフルトにある、ハイデンベルクのセメント工場に最先端の炭素回収・液化プラントを建設する。同工場で発生するCO2を年間約7万トン回収し、リンデが炭酸入りミネラルウォーターなどに利用して食品や化学業界向けに販売する。ハイデルベルクも、少量のCO2をカーボンリサイクル(CO2を素材や燃料として再利用)や再炭酸化などに利用する方針だ。
リンデ・エンジニアリングがプラントの設計・建設を担う。アルカリ性水溶液(吸収液)となるアミンと燃焼ガスを接触させ、吸収液にCO2を吸収させた後、分離・回収する。精製・液化のための設備、貯蔵タンク、輸送機器設備も提供する。ハイデンベルクは、セメント業界のカーボンニュートラル化をリードする。12年から16年の間にかけて、ノルウェーのセメント工場でアミン吸収法を用いたCO2回収の実証実験に成功していた。
ドイツ政府も両社の取り組みを後押しする。ドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK)が、「産業の脱炭素化支援プログラム」を通じ、約1,500万ユーロを助成する。
世界が脱炭素社会を実現する上で、CO2回収は重要なツールと見られており、各業界プレーヤーが市場の拡大に向けた取り組みを活発化している状況だ。22年8月には、肥料世界大手ヤラ・インターナショナル(YAR)が、世界初となる国境をまたぐCO2の輸送・貯留に向けて、欧州最大級のCO2回収・貯留(CCS)プロジェクト「ノーザンライツ」と契約を締結した(*2)。23年3月には、米気候テック企業CarbonCapture Incが、マイクロソフト(MSFT)と、大気中のCO2を直接回収する技術であるダイレクト・エア・キャプチャ(DAC)によって生成された炭素除去クレジットを供給することで合意している。
【参照記事】*1 リンデ「Linde and Heidelberg Materials Announce Large-Scale Carbon Capture Project」
【関連記事】*2 肥料大手ヤラと欧州最大級CCSプロジェクト・ノーザンライツ 世界初の国境またぐCO2輸送・貯留へ
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