炭素回収スタートアップの米IONクリーンエナジー(ION Clean Energy)は4月4日、4,500万ドル(約68億円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、組織の拡大と液体アミン型二酸化炭素(CO2)回収技術の商用展開を図る。
今回の投資ラウンドでは、米シェブロン子会社で脱炭素関連事業を手掛けるシェブロン・ニュー・エナジーズ(CNE)と、カーボンマネジメント企業に厳選した投資を行う投資会社カーボン・ダイレクト・キャピタルが出資した。
IONの創業者兼取締役会長を務めるバズ・ブラウン氏は「我々の溶媒技術は、少ないエネルギーを利用し、非常に効率的に炭素を回収できる」と述べた(*1)。
IONは2008年に設立され、コロラド州ボルダーを拠点とする気候テックスタートアップだ。燃焼後のCO2回収に関連した総コストの削減を目指し、2050年までに10億トンの炭素を回収することをミッションとして掲げる。
電力や産業など排出削減が困難な業界向けに、アミン吸収液「ICE-31」を用いたCO2回収システムを通じ、燃焼後のポイントソース(#1)での回収技術を提供する。
同社独自の吸収液を用いたCO2回収プロセス技術は、ボイラーで燃やされた燃料からCO2を多く含むガスを吸収塔に送り、そこでアミン吸収液がCO2を吸着する。その後、吸着剤を加熱してCO2を分離し、圧縮・輸送して永久的に隔離したり、付加価値の高い製品に利用したりすることができる。
IONの液体アミンソリューションは、ポイントソースでの炭素回収のゲームチェンジャー的な技術になり得る。回収効率は最大99%と非常に高く、既に1万6,000トンのCO2を回収した実績を有する。
既に米エネルギー省(DOE)、CO2液化・貯蔵・荷役設備建設工事(EPC)パートナー、および顧客より実地調査(バリデーション)を受けているほか、DOEからは8,500万ドルの資金を獲得している。
CNEのCO2回収・利用・貯留(CCUS)・エマージング部門バイスプレジデントを務めるクリス・パワーズ氏は「IONの溶媒技術と我が社の資産と能力を組み合わせることで、多くの排出事業者にリーチし、低炭素の未来を実現するという我々の野望を後押しする可能性がある」と述べた(*1)。
今回の資金調達に伴い、ティモシー・ベイル氏が最高経営責任者(CEO)としてIONに参画する。同氏は、バイオマス残渣からグリーンな合成ガスを製造するArbor Renewable GasのCEOを務めていた。
(#1)ポイントソース…工場など特定の場所から汚染物質が排出されるような汚染源。
【参照記事】*1 IONクリーンエネルギー「ION CLEAN ENERGY ANNOUNCES $45 MILLION INVESTMENT FROM CHEVRON NEW ENERGIES AND CARBON DIRECT CAPITAL AND LEADERSHIP TRANSITION」
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