炭素除去スタートアップInherit Carbon Solutionsは12月11日、マイクロソフト(ティッカーシンボル:MSFT)と炭素除去に対する複数年のオフテイク契約を締結したと発表した(*1)。
同契約を通じ、Inheritは2028年までマイクロソフトに対し、恒久的な炭素除去によって創出されたクレジットを供給する。
植物は成長するために空気中の二酸化炭素(CO2)を取り込むが、腐らせたままにしておくと、その炭素はCO2として再び大気中に放出されてしまう。また、世界中の何千ものバイオガスプラントが、生ごみ、下水、糞尿を再生可能エネルギーに変えている。このエネルギーはバイオメタンという形をとり、家屋の暖房、バスの動力源、化石燃料の代替として使われている。
廃棄物は炭素を多く含み、CO2はこのプロセスから自然に生じる副産物であるが、これまでバイオガスプラントは、CO2をそのまま大気中に放出していた。そのような中、Inheritは有機廃棄物を再エネに転換する際に発生するCO2を回収する。
このCO2は、他の炭素回収ソリューションとは異なり、他の物質から分離する必要がなく、北欧やその他の地域で燃料として使用されている再生可能天然ガス(RNG)を生産する際に発生する。InheritはCO2を回収した後、液化し、恒久的な地中貯留層に輸送する。
Inheritは21年にノルウェー・オスロで設立された炭素除去スタートアップだ。同社の共同創業者兼最高経営責任者(CEO)を務めるマイク・カーペンター氏は、CO2貯留プロジェクトで15年以上の経営を有する。また、15~21年にかけては、ノルウェー国営企業ガスノバ(Gassnova)でノーザン・ライツ(Northern Lights)プロジェクト(#1)の設計、エンジニアリングを支援した。
Inheritは、炭素を除去するために廃水と食品廃棄物を活用することで、炭素排出に対処するだけでなく、責任ある廃棄物管理にも貢献する。この取り組みを実践するために、同社は有機廃棄物を処理するのみならず、貴重な再エネを生み出すRNG施設とも提携している。
現在は、ギガトン(10億トン)規模のCO2を除去し、1,000年以上貯留することができる技術を有している。ノルウェー石油大手エクイノールや炭素除去プラットフォームを運営するフィンランドPuro.earthなどとパートナーシップ契約を締結してもいる。
InheritはRNGから発生したCO2を回収するところに特色を持つ。RNG市場の拡大が見込まれる中、同社の技術も普及拡大し、炭素排出や廃棄部処理の分野において大きなポジティブインパクトをもたらすことに期待したい。
(#1)ノーザン・ライツプロジェクト…ノルウェーで進められている炭素回収・貯留(CCS)のバリューチェーン構築のためのプロジェクトのうち、輸送・貯留を行うプロジェクトのこと。
【参照記事】*1 Inherit Carbon Solutions「https://www.inheritcarbonsolutions.com/news/inherit-to-provide-microsoft-with-carbon-removal-credits」
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