年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5月8日、「第5回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表した。同アンケートは、運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価と「目的を持った建設的な対話」(エンゲージメント)の実態および前回アンケート実施以降の1年間の変化の把握を目的に2016年から実施している。東証プライム上場企業2160社(19年12月30日現在)の対象のうち回答社数は662(前年604)、回答率30.6%。回答期間は20年1月10日~3月13日。
1年間の大きな変化として、企業の長期ビジョンの想定期間の延伸が挙げられる。前回アンケートで最も多かった「3年以上5年未満」が26.8%(前回38.9%)に減少し、「10年以上15年未満」と回答した企業が40.4%(同29.6%)と最多になった。また、「20年以上」と回答した企業の割合も増加しており、より長期を想定したビジョンを設定する企業が増加していた。また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同企業が22%(144社)に増加した。また、賛同していない企業のうち、今後賛同予定、賛同を検討中の企業が約6割(298社)を占め、一層の拡大が予想される。
企業のESG活動における主要テーマを聞く質問では、回答企業の70.8%が「コーポレートガバナンス」と回答、前回に引き続き最多となった。前回比での回答率増加が最も大きかったテーマは、昨年に引き続き「気候変動」(前回比8.4%増)となり、続いて、「サプライチェーン」(同3.3%増)、「ダイバーシティ」(2.4%増)となり、ガバナンス(G)に加え、環境(E)・社会(S)への関心も高まっている。
SDGs(持続可能な成長目標) については「知っている」と回答した企業がほぼ100%となり、取組みを始めている企業も6割を超えた。検討中の企業も含め、取り組みの際に参考にしているものとして経済産業省の「SDGs経営ガイド」が最も多く(49.8%)、次いで GRI と国連グローバル・コンパクト(UNGC)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)による 「SDG Compass」(38.5%)、環境省の「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」(36.9%)、経団連の「Society 5.0 for SDGs」(32.9%)などが挙げられた。
GPIFが選定した4つのESG指数それぞれに対する評価については、いずれも前回同様に約5割の企業が評価しており、大型株の企業を中心に評価が高い。しかし、依然として小型株の企業からは「分からない」という回答が最も多かった。企業規模により指数採用が難しい MSCIや FTSEと、制約がほとんどない S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数とを比較しても、回答に大きな違いはなかった。この結果について、GPIFは「小型企業からの評価が高まらないことは、数ある経営課題のなかで、大企業と比べて、ESG課題の優先度が高くない」可能性を読み取っている。
GPIFへの期待としては、①長期的視点での投資・対話の働きかけ、②建設的かつ本質的な対話の促進、③ESGの定着を促すような働きかけ、④時価総額が小さい企業を含めたESG投資や直接的・間接的なスチュワードシップ活動、⑤ESG 評価会社のガバナンス向上の働きかけなどを挙げた企業が多くみられた。
【参考記事】GPIF「GPIF「第5回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」の公表について
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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