年⾦積⽴⾦管理運⽤独⽴⾏政法⼈(GPIF)は10月5日、「ESG 活動報告」の別冊として「2020年度 GPIF ポートフォリオの気候変動リスク・機会分析」を刊⾏した。GPIF は2018 年に「気候関連財務情報開⽰タスクフ ォース」(TCFD)への賛同を表明して以降、TCFDの提⾔に基づいた情報開⽰を⾏っており、昨年度に続く発刊。今年は①サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量に基づく分析②分析対象を伝統資産のみからオルタナティブ資産へ拡⼤③低炭素社会への移⾏に伴う機会とリスクの産業間移転の分析を新たに⾏っている。
20年度ESG活動報告では、温室効果ガス排出量の分析対象範囲をサプライチェーン全体に拡大し、分析対象資産についても、新たに一部のオルタナティブ資産(国内不動産)へ拡大した。また、低炭素社会に伴う機会とリスクの産業間移転などについても分析を行っている。特に分析対象を「スコープ3 下流」(販売された製品・サービスの消費や利用に関する間接消費)まで拡大したことで、前年の分析結果と大きく異なる結果となった。
GPIFは結果について「企業がコストを負担する(責任を有する)移行リスクの範囲をどこまでとするか、どの程度製造・販売側にコストが転嫁されるのかによって、結果が大きく変わるのは自然なこと」と肯定しながらも、内容を詳細に紹介するため別冊を取りまとめた。
本編は 4つの章で構成。第1章「カーボンフットプリント等の測定」では、Trucost社のデータに基づき、カーボンフットプリント(温室効果ガス排出量)の測定や、売上高(付加価値)当たりの温室効果ガス排出量であるカーボンインテンシティについて計測している。また、2020年度ESG活動報告に掲載していない新たな分析として、「温室効果ガス排出についての企業の情報開示」や「企業の排出削減目標分析」などを紹介している。第2章「リスクと機会についてのシナリオ分析」では、昨年度に続き、MSCI 社の気候バリューアットリスクの分析手法を用いて、気候変動に伴うリスクと機会が GPIF のポートフォリオにどのような財務的なインパクト(資産価値に与える影響)をもたらすかを分析した。
第3章「移行リスクと機会の産業間の移転に関する分析」では、低炭素社会への移行において、産業間でどのように移行リスクと機会が移転するのかを分析。第2章の MSCI社のCVaRによる分析では、低炭素社会への移行において、機会とリスクは同一セクター(産業)内で再分配されるという前提に基づいている。一方、分析を担当したアスタミューゼ社では、低炭素技術がサプライチェーンを通じて、セクターを越えて炭素排出削減に貢献することで、セクター間の利益や需要の移転が生じるという前提に基づいて分析している。その結果、特にエネルギーや社会インフラ、化学産業等においては、脱炭素社会への移行に伴う機会がリスクを大きく上回り、日本にはこれらの産業において有望な低炭素技術があることが明らかになった。第4章「その他の分析」では「SDGs に関連した収益機会とリスクに関する分析」などを行っている。
「GPIF が国内の上場企業だけでなく海外の主要企業に幅広く投資を行うユニバーサル・オーナーであることから、日本企業全体、海外企業全体、ひいては世界の国々が気候変動に関連して、どのような課題やリスクを抱えているのか、逆に課題解決のために必要とされる技術にどれだけの価値があり、ビジネスチャンスが生まれるのかについて、投資家以外の方々にも参考になる情報が含まれている。気候変動に伴うリスクと機会を考える上での一助となれば」としている。
【参照レポート】GPIF「2020年度GPIF ポートフォリオの気候変動リスク・機会分析」を刊⾏しました」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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