EU ロシア産化石燃料への依存低下とグリーンエネルギーへの転換に27兆円

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欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は5月18日、ロシア産化石燃料への依存低下とグリーンエネルギーへの転換を図るための計画である「リパワー(REPower)EU」の詳細を公表した(*1)。これらの目標を実現するために、官民で2,100億ユーロ(約29兆円)の資金を投じる方針だ。

同計画は省エネの強化やエネルギー調達先の多様化、クリーンなエネルギーへの転換加速を柱とする。2022年から27年までの5年間に2,100億ユーロを投じる見通しである。再生可能エネルギーに関しては、欧州のエネルギーミックス(#1)に占める割合を、30年までに従来の40%から45%に引き上げるよう提案した。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、欧州がロシア産化石燃料への依存低下を図るには、需給ギャップを埋めるために新たに石油・ガスの調達先を見つけ出さなければならない。欧州委は石油の安定供給確保に向けて15~20億ユーロほどの投資が必要になると指摘。また、ロシア以外より十分な量の液化天然ガスとパイプラインを通じたガスを輸入するために、30年までに100億ユーロを投じなければならないと試算する。

欧州は50年までにカーボンニュートラルの実現を目指す。30年までに温室効果ガス(GHG)を1990年比で少なくとも55%削減を達成すための政策パッケージ「フィット・フォー(Fit for)・55」も公表している。欧州委はフィット・フォー・55で提案された内容をすべて迅速に実行するとともに、再生可能エネルギーの比率とエネルギー効率を高めなければ、リパワーEUは機能しないとみている。

ロシア産の化石燃料から脱却するためには、ガスの安定供給確保に向けた投資が必要なほか、電力供給網や水素プロジェクトに大規模な投資が求められるという。また、気候中立の達成と経済成長の実現を掲げた「欧州グリーン・ディール」担当のフランス・ティマーマンス上級副委員長は、エネルギーの移行期において天然ガスの利用を減らすことにより、石炭を当初の予定よりも少し長く利用しなければならず、GHGの排出の観点で負の影響をもたらすとの見解を示した(*2)。一方で、太陽光、風力、バイオメタンといった再生可能エネルギーの導入を加速させることで、逆の動き(排出削減)をみせるという。

同日には、デンマーク、ドイツ、オランダ、ベルギーのエネルギー相が洋上風力およびグリーン水素に関する協力協定を締結。4ヶ国は洋上風力の発電容量を30年までに少なくとも合計65ギガワット(GW)、50年までに少なくとも合計150GW拡大するという目標を掲げる。さらに、EUは30日にロシアへの追加制裁として、ロシア産石油のEUへの輸入を禁止することで合意した。

ウクライナ侵攻が長期化する見通しとなるなか、EUはエネルギーの脱ロシアとグリーンエネルギーへの転換を図る取り組みを推進する。

(#1)エネルギーミックス…火力、水力、原子力、再生可能エネルギーによる発電をバランスよく組み合わせ、それぞれの特徴を最大限に活用していくこと。

【参照記事】*1 欧州委員会「REPowerEU
【参照記事】*2 CNBC「EU plans renewables expansion, says coal needed a little while longer

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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