米エネルギー省(DOE)は3月25日、バイデン政権の「米国への投資(Investing in America)」アジェンダの一環として、20以上の州で33件のプロジェクトに最大60億ドル(約9,000億円)を拠出すると発表した(*1)。エネルギー集約型産業の脱炭素化や高賃金の雇用支援、製造業の競争力強化などを図る。
これらのプロジェクトには、超党派によるインフラ投資・雇用法およびインフレ抑制法(IRA)より資金が提供される。これにより、何万人もの質の高い雇用を創出・維持するとともに、新たに産業用脱炭素技術の商業規模での実証を加速させる。
アルミニウムなどの金属、セメント・コンクリート、化学・精製、鉄鋼など、脱炭素技術が最も大きなインパクトを与える排出量の多い産業に焦点を当てる。これらのプロジェクトを合わせると、年間1,400万トン以上の二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる見込みであり、これはガソリン車300万台分の年間排出量に相当する。
例えば、化学・精製プロジェクトは、回収した炭素を付加価値の高い製品にアップサイクルし、リサイクル製品から高品質の燃料や材料を作り、化石燃料から脱炭素燃料に置き換える機会を実証する計画だ。海洋分野向けのクリーン燃料、電気自動車バッテリー用の電解質、高品質プラスチックなどの製品が生み出す。
鉄鋼プロジェクトは、製鉄に伴う排出の大部分を除去できる世界初のクリーンな水素直接還元実証プラントを含む、新技術の実証を計画している。これらのプロジェクトは、製鉄・鉄鋼業の脱炭素化を支援し、石炭に依存する従来の炭素集約的な生産方法からの段階的な撤退を促す。この投資は、自動車産業向けの高品位鋼のような製品を生み出す一助となる。
プロジェクトの多くは、国内初となる排出削減技術を導入するものであり、米国の製造業の未来を支えるものだ。今回の資金拠出は、産業界の脱炭素化に対する米国史上最大の投資であり、米国の製造業者と労働者が世界のクリーンエネルギー経済をリードするための一助となる。
各プロジェクトは、コミュニティと労働者がある活動に参加して有意義に貢献できるようにするためのコミュニティ・ベネフィット・プランを策定し、最終的に実施することも期待されている。プロジェクトの80%近くが、バイデン政権が環境正義を推進する「ジャスティス40イニシアティブ(Justice 40 Initiative)」によって定義された、恵まれない地域で行われる。
産業部門は、国全体の温室効果ガス(GHG)排出量の3分の1近くを占めているが、プロジェクトを通じてGHG排出量を平均77%削減する見込みだ。また、エネルギー効率、電化、クリーン水素のような代替燃料や原料を含む、ユニークで革新的な脱炭素化ソリューションが必要であるとDOEは指摘する。
ジェニファー・M・グランホルムDOE長官は「鉄鋼、製紙、コンクリート、ガラスなどの主要産業において次世代の脱炭素技術の革新に拍車をかけることにより、米国は地球上で最も競争力のある国であり続けることができる」と述べた(*1)。
【参照記事】*1 米エネルギー省「Biden-Harris Administration Announces $6 Billion to Transform America’s Industrial Sector, Strengthen Domestic Manufacturing, and Slash Planet-Warming Emissions」
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