ネット証券大手のマネックスグループは4月26日、子会社であるコインチェック社の平成30年度3月期業績見込みを発表した。コインチェック社の税引前利益は、流出したNEM(XEM)補償の費用となる473億円を特別損失として計上してもなお、63億円となる見通しだ。
マネックスグループは2018年4月5日にコインチェック社を36億円で買収することを発表し、4月16日にコインチェック社の完全子会社化を終えたばかりだ。コインチェック社は2018年1月、かつて世界最大のビットコイン取引所であったMt.Gox社で起きたビットコインの盗難事件を超す巨額のNEM流出事件に見舞われたことでも記憶に新しい。
事件当初、コインチェック社は当時のレートで約580億円に相当する5億2,300万のNEMを補填できる支払い能力を有していないのではないかと疑われていた。だが、実際にはコインチェックは月間取引額は数兆円規模を超えており、自己資本で十分に弁済が可能であることが明らかになった。この事実は、資産流出の被害にあった顧客を安堵させるとともに、仮想通貨交換業の利益構造が垣間見えるかたちとなり、世間に少なからぬ衝撃を与えた。
コインチェック社が当初から発表していた通り、顧客への補償は実施され、一時的に取引停止となっていた仮想通貨の送金も順次開始されてきたものの、コインチェック社の財務状況の全容は公開されておらず、今回の発表には注目が集まっていた。
マネックスグループによると、コインチェック社の平成30年度3月期の業績見込みは537億円、前期の7億1900万円と比較し、約75倍と急増した。営業利益率は約86%で、東証プライム上場企業の営業利益率の平均が約6%であることから考えても、仮想通貨交換業の高い利益体制が分かる結果となった。この背景には、2017年末のビットコインの急激な価格上昇や新規参入の投資家の増加によって、仮想通貨業界自体が時価総額を伸ばし成長を続けていたことにある。
今回の決算発表会見でマネックスグループCEOの松本氏は次のように語った。「後の規制強化などで利益率は変わってくる。一方、信頼のある交換業をつくる中で顧客基盤を大きくすることも可能、現時点で利益率がどうなるかを語るには時期尚早だ」。マネックスグループは同社のCOOである勝也氏をコインチェック社の社長に任命し、コインチェック社の前CEOである和田氏をはじめとする経営陣を執行部に据え、経営体制の刷新とセキュリティの強化、人材の充実を図っていく。
顧客への補償や取扱通貨の出金・売却の再開など、着実に歩みを進めるコインチェック社だが、NEM流出事件によって被った損害に対する訴訟や仮想通貨交換業の再開に必須となると考えられる金融庁への登録など、依然として課題は残っている。松本氏は、訴訟費用は20億円程度と見積もっておりリスクと捉えていないことや、6月を目安に金融庁への登録を目指す見立てを持っている旨の発言をしているが、こうした見通しに対して不確実な部分が多くリスクが大きいと指摘する識者もいる。
今後進んでいく訴訟や仮想通貨交換業の審査の厳格化にマネックスグループはどのように対応していくのか。注目していきたい。
【参照サイト】マネックスグループ株式会社 株主・投資家情報
【参照資料】マネックスグループ株式会社 2018年3月期決算 説明資料
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