暗号資産のマイニングツール「Coinhive(コインハイブ)」を巡る一連の裁判において、最高裁判所が逆転無罪の判決を下した。日経新聞が1月20日に報じている。
コインハイブは、プログラミング言語JavaScriptを使用したマイニングツールであり、Webサイト閲覧者のコンピューター上で自動的にプログラムを動かすことができる。コインハイブでは、暗号資産Monero(モネロ)のマイニングが可能であり、2017年10月頃よりサービスが提供されていた。
その後2019年3月に、暗号資産価格の暴落を受けサービスは終了していたが、プログラムがWebサイト閲覧者の許可を得ずに動かされていたことから、これを違法として神奈川県警察などが検挙および控訴していた。
神奈川県警察は、コインハイブを「不正指令電磁的記録(いわゆるコンピュータウイルス)」に該当するとして違法性を主張したものの、セキュリティの専門家や弁護士はこれを疑問視してきた。背景には、一般的なWeb広告に使用されるJavaScriptとの類似性があげられる。仮にコインハイブの違法性を認めた場合、他のWeb広告の説明がつかなくなるのだ。
今回最高裁判所は、「利用者の意図に反するプログラムではあるが、社会的に許容される範囲内で不正性は認められない。」として無罪を言い渡している。これにより、2018年より約4年にわたって行われてきた一連の裁判に幕がおろされた。
コインハイブを通して得た収入は約800円であり、二審の有罪判決では罰金10万円が言い渡されている。金額だけを考慮した場合、規模は小さく、ここまで争う必要はなかったように感じるだろう。しかし、コインハイブの有罪性を認めてしまった場合、JavaScriptの開発者が今後の開発や技術革新に取り組む際に、有罪となる可能性がある恐怖を抱かなければならなくなるのだ。
そういった意味では、今回の裁判は暗号資産業界のトピックにとどまらないものだったと言えるだろう。
【参照記事】仮想通貨の無断「採掘」、逆転無罪 最高裁判決: 日本経済新聞
株式会社techtec リサーチチーム
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