グリーンマテリアルスタートアップClaros Technologiesは5月28日、2,200万ドル(約35億円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、有害性の指摘がある有機フッ素化合物「PFAS(永遠の化学物質)」の分析、除去を推進する。
今回の投資ラウンドは、サステナビリティに特化したベンチャーキャピタル(VC)のエコシステム・インテグリティ・ファンドと、米国の独立系投資顧問会社アメリカン・センチュリー・インベストメンツが主導した。
ミネソタ大学などの既存投資家のほか、化学品メーカーのクレハのグループ会社であるKureha Americaやアーリーステージ(起業前後)のVCであるCapita3などが新たに加わった。
Clarosはミネソタ大学で開発された技術研究をもとに設立された。グリーンケミストリーと先進材料科学を活用し、世界中で人体に影響を及ぼしているPFAS汚染の危機解決を目指している。
同社の技術は短鎖、長鎖、超短鎖PFASを含む、あらゆるPFASタイプに対して99.99%の破壊および脱フッ素化する性能を誇る、クローズドループのPFAS汚染解決策を提供する。PFASを除去する最も効率的で費用対効果の高い方法となる。
産業界の顧客のために排水の内容物を分析するソリューションも手掛ける。同社の分析、モデリング、破壊能力は、PFAS汚染を食い止めるという重要な課題に取り組むための重要なツールとなる。
Clarosのミシェル・ベランカ共同創業者兼最高経営責任者(CEO)は、同社を立ち上げる前に化学大手のスリーエム、IT(情報技術)のIBMなどでテクノロジートレンドの特定や機能拡張などに従事してきた。
直近までは、3Mの戦略的コーポレート・ベンチャー(アジア太平洋地域)のマネージング・ディレクターを務め、アーリーステージのプラットフォーム・テクノロジー企業に投資していた。
PFASは社会的に極めて重大かつ緊急の課題となっている。同化学物質は、半導体から衣料品、家具、食品包装の製造まで、あらゆる分野で使用されている15,000種類以上の化学物質群である。環境や人体に深刻な影響を及ぼし、環境中に残留する。
PFASはどこにでも存在し、ガン、甲状腺疾患、腎臓機能障害、先天性欠損症、自己免疫疾患、その他の深刻な健康問題に関連している。スウェーデンNGOの国際化学物質事務局(ChemSec)によると、PFASの社会的コストは年間17.5兆ドル(約2,700兆円)に上る。
生産者はようやく、PFASに対する責任を問われるようになった。米国環境保護庁(EPA)は飲料水中のPFASの規制を開始し、包括的環境対策・補償・責任法(CERCLA)ではPFASを有害廃棄物に指定している。
現在のPFAS除去方法は、問題を永久に解決するものではなく、廃水処理施設での希釈、埋立などを通じて環境中に戻すことにより、永続的なライフサイクルとなるため、これらはいずれも持続可能なものではない。
そのような中、Clarosは2021年の前回の資金調達以来、廃水中のPFAS汚染を修復するための持続可能で効果的なソリューションを提供している。
世界水準のISO/IEC 17025:2017に基づく試験所も構築したほか、バイオベースの原料を使用した耐久性のある機能性材料を商品化した。同化学品は、耐久性(洗濯しても安全な)、抗菌、抗臭気、抗ウイルス、広範なスペクトルのUVAおよびUVB特性を有している。
ミシェルCEOは「PFAS汚染に対する最先端の解決策を開発・商品化することで、弊社は成長市場の最前線に位置している。持続可能でスラーラブル、コスト競争力のある化学物質や工業プロセスへの需要が高まる中、弊社の技術は顧客、パートナー、地球にとって長期的な成功の一翼を担えると確信している」と述べた(*1)。
【参照記事】*1 PR Newswire「Claros Technologies, Inc. Raises $22 Million to Accelerate PFAS Destruction and Analytical Technologies」
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