女性特有の健康課題をテクノロジーにより解決を目指すFemTech(フェムテック)のスタートアップCercleが、11月8日にサービスを開始した(*1)。米メタの元最高執行責任者(COO)シェリン・サンドバーグ氏らの支援を受ける。人工知能(AI)を活用し、女性の健康、特に不妊の改善を目指す方針だ。
Cercleによると、医療業界は世界の30%のデータを生み出しているが、その80%は非構造化データ(画像、音声、センサーデータ、テキストデータなど)になるという(*2)。そのため、我々の病歴を包括的に収集、研究し、そこから学ぶことは不可能だった。
そのような中、同社のプラットフォームCercle Biomedical Graphは、不妊治療の医師や研究者向けに、カルテや検査結果など数十億点の非構造化医療データを標準化されたフォーマットに整理する。生物医学とゲノミクスのデータを標準化された形として収集、研究することで予防医学の発展に貢献できる。臨床医がよりパーソナライズされた治療計画を立てたり、個人の病歴や医療ニーズに合わせた薬を開発したりするのに役立つことが期待されている。
ある患者が卵子凍結を希望した場合、担当医はCercleのプラットフォームを利用し、同じように卵子凍結を行った患者のデータを見ることができる。Cercleによれば、プラットフォームで収集した情報は匿名であるが、医師はどのような治療が有効であったか、あるいは有効でなかったかを確認することができ、その情報を基にした個別医療を推進することか可能だという。
Cercle Biomedical Graphは既に、世界最大級且つ最も信頼されている不妊治療機関Eurofins GenomaやUS Fertilityで利用されている。さらに、世界中の不妊治療クリニックを顧客としていることから、より正確なデータに基づいて健康に関する洞察を提供できる。なお、Cercleは当初、不妊治療分野に重点を置くが、将来的に女性の健康に関する他の分野にもサービス領域を拡充していく方針だ。
マッキンゼーによると、バイオ医薬品のパイプライン(新薬候補)の僅か1%、またMedTech(メドテック、テクノロジーを医療に活用する取り組み)分野において認可される新技術の2%しか、女性の健康状態に対処することを目的としていないという(*3)。Cercleのプラットフォームが普及拡大することで、女性医療の向上や不妊の改善が進むことに今後も期待したい。
【参照記事】*1 Cercle「To personalize and contextualize biomedical and genomics information so everyone can make better, more informed health decisions.」
【参照記事】*2 Cercle「Cercle’s Mission to Unlock Medicine 3.0」
【参照記事】*3 マッキンゼー「Closing the data gaps in women’s health」

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