仏産業ガス大手エア・リキード(ティッカーシンボル:AI)とパリ空港公団(ADP)は6月15日、空港での水素インフラの開発促進に特化した初の合弁事業として「水素空港」を建設する計画を発表した(*1)。2035年までに水素航空機の運航を目指す。翌16日には、エア・リキード初となる中国での再生可能エネルギーの長期電力購入契約(PPA)を締結するなど、再エネの導入を加速させている(*2)。
両社が50:50で出資する合弁会社は、フランスを始めとする世界中の空港が水素エネルギーへの移行を進めるのに必要なエンジニアリングとサービスを提供する方針だ。
特に、合弁会社のサービスには、各空港で必要な水素量の試算や最適な供給体制の構築、投資計画、環境インパクト評価などが含まれる。
21年に締結した覚書(MoU)の下、エア・リキードとADP、および欧州エアバス(AIR)は、世界30ヵ国の空港で水素を燃料とする航空機の運航に関するフィージビリティスタディ(プロジェクトの実現可能性を事前に調査・検討すること)を始めた。
事前調査では、航空業界の脱炭素化に資する水素の可能性や、水素インフラの開発および供給体制を確認している。
エア・リキードが水素を製造する電解槽、液化、貯蔵、空港への水素供給を担う。ADPは空港運営に関するエンジニアリングやノウハウを提供する。
エア・リキードは産業ガスの世界的リーダーだ。産業ガスとは、製造業の生産現場や医療現場などで使われるガスの総称であり、酸素や窒素が代表格となる。
同社は水素を始めとする再エネの取り組みも積極化している。日本では水素ステーションの運営などを行う。
6月16日には、中国三峡新能源および中国長江三峡集団江蘇支店と、年間200メガワット(MW)の再エネを供給する長期PPAを締結した。
エア・リキードはこれまで、米国、欧州、南アフリカでPPAを締結したほか、中国では再エネ・低炭素エネルギーの短期PPA事業を複数手がけてきたが、今回初めて中国で長期PPAの締結に漕ぎ着けた。
江蘇省にある太陽光・風力発電所から再エネ電力を供給する。足元の排出量と比較して、年間最大12万トンの二酸化炭素(CO2)の排出を削減でき、これは中国の30万世帯超の電力使用に伴う排出に相当するとしている。
【参照記事】*1 エア・リキード「Air Liquide and Groupe ADP announce their ambition to create the first joint venture to facilitate the development of hydrogen infrastructure at airports」
【参照記事】*2 エア・リキード「Air Liquide signs first long-term Power Purchase Agreement for renewable electricity in China」
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