トヨタ自動車のESG・サステナビリティの取り組みは?ESG格付けも

大手機関投資家が投資対象の絞り込みをする際、ESGを考慮するようになり、企業も持続可能な社会のため、ESGなどを経営に取り入れるようになりました。その流れの中、多くの企業は、従来の財務データに加え、ESGの取り組み、目標など非財務データを加えた統合報告書を発行するようになりました。

企業のESGへの取り組みは、株価の形成に影響を与えるという論文も多く発表されています。そこで、各企業のサステナビリティやESGの取り組み、ESG格付けなどを解説していきます。初回はトヨタ自動車を取り上げました。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. トヨタ自動車のサステナビリティ基本方針
  2. トヨタ自動車のESGへの取り組み
    2-1.環境(E:Environment)
    2-2.社会(S:Social)
    2-3.ガバナンス(G:Governance)
  3. トヨタ自動車のESG格付け
  4. まとめ

1 トヨタ自動車のサステナビリティ基本方針

トヨタ自動車は、サステナビリティに対する考え方やESGの取り組み方針を2020年から毎年公表しています。同社のサステナビリティの基本方針は、社会・地球の持続可能な発展への貢献です。それを実現するために、トヨタフィロソフィー*のもと、サステナビリティ基本方針や個別方針(下記参照)に基づき取り組んでいます。

*トヨタフィロソフィー:トヨタの従業員や家族、これからトヨタを支える次世代のために果たすべき使命と、実現したい未来を定義したもの。

主なサステナビリティ関連個別方針

  • 地球環境憲章
  • 人権方針
  • 税務ポリシー
  • 仕入先サステナビリティガイドライン
  • トヨタ行動指針
  • 贈収賄防止ガイドライン
  • 個人情報に関する基本方針

2 トヨタ自動車の ESGへの取り組み

同社のESGの取り組みを、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)それぞれの分野からみていきましょう(参照:トヨタ自動車「Sustainability Data Book 2022年10月」。

2-1 環境(E:Environment)

同社は、トヨタ環境チャレンジ2050を策定し、これに基づく取り組みを進めています。具体的には、2050年までに、ライフサイクル全体での二酸化炭素排出ゼロを目指す、新車平均二酸化炭素排出量の90%削減(2010年比)、グローバル工場の二酸化炭素排出ゼロを目指すとしています。

また、水使用量の最小化と排水の管理、日本で培った水の適正処理やリサイクル技術・システムのグローバル展開、自然保全活動の輪を地域・世界とつなぎ、未来へつなぐとしています。

トヨタ環境チャレンジ2050には、短期目標(2025年目標)、中期目標(2030年目標)が設定されています。それぞれの短期目標(2025年目標)と、2021年の取り組み実績をみてみましょう。

ライフサイクル全体での二酸化炭素排出量ゼロを目指す

ライフサイクル二酸化炭素排出量を、2025年度に2013年比18%以上の削減を目指しています。目標達成のために物流部門では、輸送効率の改善により二酸化炭素排出量を2018年比7%削減、自動運搬船2隻を液化天然ガス(LNG)船、に切り替える、サプライヤーを対象に二酸化炭素排出量削減に向けた活動を推進、新改築の販売店の二酸化炭素排出量削減アイテム導入率100%を決めています。

2021年の取り組み実績

積載率の向上や共同輸送、北米向け完成車輸送用LNG船の1隻導入、サプライヤー対象の気候変動対策コミュニケーションを開始。主要41カ国・地域の新改築販売店での二酸化炭素削減アイテム導入率100%を達成。2021年は、ライフサイクル二酸化炭素排出量を2013年比で13%削減。

新車平均二酸化炭素排出量の90%削減(2010年比)

グローバル新車の平均二酸化炭素排出量については、2025年に2010年比で30%以上削減を達成していることが目標です。あわせて、電気自動車販売台数を累計3,000万台以上販売することを目指しています。

2021年の取り組み実績

主要国の新車平均二酸化炭素排出量が、環境性能の向上と電動車ラインアップの拡充により、2010年比で24%減少。電動車販売累計は2,030万台に上り、これによる二酸化炭素排出抑制効果は、累計約1億6,200万トンに相当。

グローバル工場の二酸化炭素排出ゼロを目指す

工場での二酸化炭素排出量削減目標は、グローバル工場からの二酸化炭素排出量を2013年比30%削減するとしています。達成するために、再生可能エネルギー電力導入率を25%(2013年は13%)に引き上げ、水素利活用技術の開発を積極的に進めるとしています。

2021年の取り組み実績

タイでの太陽光パネル設置などにより、再生可能エネルギー電力導入率13%に上昇。2021年の二酸化炭素排出量は2013年比で21%削減。

その他

自動車のライフサイクル全体における循環型社会構築に向け、リサイクルの技術・システムのグローバル展開を目指しています。また、トヨタ自然共生方針を制定し、同社が様々な事業を通じて培った技術やノウハウを使い、人と自然が共生する持続可能な社会の実現を目標に掲げています。

2-2 社会(S:Social)

社会分野としては、人権の尊重、ダイバーシティ&インクルージョン、バリューチェーン連携、車両安全、品質・サービス、情報セキュリティ、プライバシー、知的財産、人材育成、健康・安全衛生、社会貢献が挙げられます。

ここでは、人権の尊重、ダイバーシティ&インクルージョンについて基本的な考え方と、同社が目指すありたい姿、それに向けた取り組みをみていきましょう。

人権の尊重

基本的な考え方として、ありたい姿を描き、それに向け取り組んでいます。ありたい姿は「ビジネスを行うすべての国・地域において、愛され、頼りにされ、その町のいちばんの会社になる、事業活動に関わるすべての人々の人権を尊重する、従業員一人ひとりが、安全で健康的な職場作りに貢献し、互いの尊厳を尊重し、差別やハラスメント、強制労働などの人権侵害のない労働環境にある」というものです。

取り組みとして、トヨタ自動車人権方針をトヨタ従業員に、サプライヤー各社には、仕入先サステナビリティガイドラインに基づいて人権の尊重を求め、人権デューデリジェンスや教育を実地しています。また、サステナビリティ分科会で人権に関する方向性・課題などが報告・審議され、重要案件についてはサステナビリティ会議に付議・意思決定することで、監督を実施しています。

ダイバーシティ&インクルージョン

自動車会社からモビリティカンパニーへの転換に向け、多様な才能や価値観を持つ人材が最大限能力を発揮できる環境を整えることを目指しています。

取り組みとしては、いかなる理由であれ差別を認めず(性別、年齢、国籍、人種、民族、信条、宗教、知的思考、性自認、障害など)、多様な生き方・働き方を尊重し、一人ひとりの意欲・能力の応じた活躍機会を与え、ハラスメントのない風通しの良い職場をつくるとしています。

サステナビリティ分科会で、方向性・課題などが報告・審議され、重要案件はサステナビリティ会議の付議・意思決定することで、監督を実施しています。

2-3 ガバナンス(G:Governance)

ガバナンスは、コーポレートガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンスの3部門から構成されています。それぞれ見ていきましょう。

コーポレートガバナンス

持続的な成長と長期安定的な企業価値の向上を支える体制を確立する会社を目指しています。そのため、顧客や現場の情報を経営陣に迅速に伝え、適時・的確な経営判断をし、その反応を常にチェックできる体制を構築しています。執行役員が権限を持ち、迅速な意思決定ができる体制が整えられています。

取締役会の構成メンバーは、ダイバーシティ(多様性)に配慮されており、独立社外取締役、女性、外国人などで構成されています。役員報酬は、SDGsなど社会課題解決への貢献度なども考慮されます。

リスクマネジメント

自動車業界を取り巻く環境が変化するなか、不確実な事象への対応として、リスクマネジメントを強化しています。リスクマネジメントの責任者の配下に、各地域、機能、製品別にリスク担当を設けることで、リスクの予防・緩和・軽減に取り組んでいます。

例えば、災害に強いサプライチェーンを展開するため、サプライチェーン情報を共有化し、災害時に速やかに生産ラインを回復できるシステムを構築しています。

コンプライアンス

コンプライアンスの周知・徹底のため、従業員向けにコンプライアンスセミナーやe・ラーニングによる教育が実施されています。また、役員向けには役員法令ハンドブックが配布され、法令遵守が徹底されています。

3 トヨタ自動車のESG格付け

ESGの評価会社が、各企業のESGスコアを発表しています。評価会社としては、MSCIやBloomberg L.P.、日本経済新聞社(日経NEEDS)、東洋経済新報社などが挙げられます。

MSCI格付けは、最も評価が高いAAAから最も低いCCCを付与しています。Bloomberg ESGスコアは、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)などの項目で数値が高いほど良いとされています。

トヨタ自動車のMSCI格付けはAです。Bloombergでは、環境スコアが4.53、社会スコアが3.18、ガバナンススコアが5.70です(2022年10月31日時点)。各スコアは自動車製造業の中では平均以上で、特に環境スコアは同業他社よりも高い評価を得ています。

まとめ

持続可能な世界を実現するために、従来よりもESGが重視されるようになりました。

日本政府は2050年カーボンニュートラルを実現するため、2030年にガソリン車の販売禁止を打ち出しています。こうした動きを背景に、自動車業界では構造改革が進められています。

トヨタ自動車では、2050年に新車平均二酸化炭素排出量の90%削減(2010年比)を目指した改革を推進したり、グローバル工場の二酸化炭素排出ゼロを目指した取り組みを進めたりしています。こうした取り組みが評価され、MSCI ESG格付はA、Bloombergの環境スコアは4.53と高い評価を得ています。

ESG投資が拡大傾向にあるなか、同社のESGへの今後の取り組み状況が注目されます。

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藤井 理

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。