帝人のESG・サステナビリティの取り組みや将来性は?株価推移、配当・優待情報も【2023年7月】

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経営でESGやサステナビリティを重視する流れは強まっており、企業も自社の利益追求のみならず、環境や人権など幅広い課題の解決に貢献するよう求められています。帝人は炭素繊維や医療ソリューションなどを手掛ける化学メーカーで、サステナビリティに関しても積極的な取り組みを行っています。

今回は帝人のサステナビリティの取り組み、株価推移や業績について解説します。帝人への投資を検討している方、ESGに関心のある方は参考にしてください。

※2023年6月29日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 帝人の概要
  2. 帝人のESGに関する取り組み
    2-1.水資源の管理
    2-2.有害化学物質の排出削減
    2-3.資源の循環
  3. 帝人の10年間の株価推移と業績
    3-1.10年間の株価推移
    3-2.業績
  4. 帝人の将来性
  5. 帝人の配当・優待情報
  6. まとめ

1.帝人の概要

銘柄 帝人
証券コード 3401
株価 1,385円
PER 20.50倍
PBR 0.63倍
配当利回り(会社予想) 2.17%

※2023年6月15日時点
参照:Yahoo!ファイナンス「帝人

帝人は東京都千代田区に本社を構える、繊維を中心とした素材や医療ソリューションなどの事業を展開している大手化学メーカーです。売上高は10,188億円、連結従業員数は国内・海外合計で約22,484名、グループ会社数は合計169社に及ぶ規模となっています。

参照:帝人「会社概要
 
帝人の事業別の2021年度の売上・営業利益は下記のとおりです。

売上高(億円) 営業利益(億円)
マテリアル 3,851 -57
ヘルスケア 1,836 432
繊維・製品 2,825 56
IT 538 97
その他 212 -86

参照:帝人「株主・投資家情報

最大の売上規模があるのはマテリアル事業で、日常生活で身近な素材、社会の発展に必要な産業用製品など、多彩なマテリアルを提供しています。具体例として、炭素繊維、樹脂、アラミド、複合成形材料などがあります。

ヘルスケア事業では医療用医薬品と在宅医療機器の、2本柱で事業を展開しています。また疾病の治療だけでなく、予防から介護の領域まで事業範囲を拡大しています。

2.帝人のESGに関する取り組み

帝人はサステナビリティ重視の経営を推進している企業でもあります。ここでは同社における環境関連の取り組みをいくつか紹介します。

2-1.水資源の管理

グローバルな環境課題の1つである水不足や水質汚染に対し、資源の効率的な利用を推進しながら、水使用量の削減を行っています。2030年度のグループ目標(KPI)として、淡水取水量の売上高原単位を2018年度比で30%改善するとしています。

2021年度の淡水取水量は、新型コロナの影響軽減による生産回復で、対前年6%増となりました。しかし松山事業所における使用量削減によって、売上高原単位は対前年で4%改善しました。2018年度比では8%の改善となっています。

また排水による負荷の抑制にも取り組んでおり、染色工場の洗浄水削減活動を行っています。2021年度の化学的酸素要求量(COD)は対前年で14%削減されましたが、生物科学的酸素要求量(BOD)は対前年24%増となりました。

参照:帝人「水資源の管理

2-2.有害化学物質の排出削減

炭素繊維や樹脂などの事業を中心に、有害化学物質の削減や漏洩防止に取り組んでいます。有害物質とは主にジクロロメタン、メチルエチルケトン、スチレンなどです。2030年度グループ目標(KPI)として、有害化学物質量の売上高原単位を2018年度比で20%改善することを掲げています。

2021年度の有害化学物質排出量は、生産回復などに伴い、対前年12%増となりました。売上高原単位は対前年で1%悪化したものの、新型コロナの影響を受ける前の2019年度に比べると15%改善されています。

2018年度比ではすでに20%改善されており、2030年度のKPIの水準に達しています。今後さらなる削減が期待されます。

参照:帝人「有害物質の排出削減

2-3.資源の循環

素材を手掛ける化学メーカーであることから、廃棄物への取り組みも積極的に行っています。2030年度のグループ目標は、埋め立て廃棄物量の売上高原単位を対2018年度比で10%改善することとしています。

特には廃棄物の発生量が多いのは米国にある「Teijin Automotive Technologies」であり、各工場での歩留まり改善によるプラスチック廃棄物の削減などを推進しています。

2021年度の埋め立て廃棄物量は、前年比33%増、売上高原単位も前年比20%悪化しました。新型コロナの影響からの生産回復、自動車向けの副業材料の新規プロジェクト立ち上げに伴う一時的な要因ではあるものの、新型コロナの影響を受ける前と同じ水準に戻ってしまっています。今後は再び廃棄物量減少の方向に持っていけるかが問われます。

参照:帝人「資源循環への取り組み

3.帝人の10年間の株価推移と業績

ここからは、帝人の長期の株価推移や近年の業績について解説していきます。

3-1.10年間の株価推移

帝人の株価は2018年1月までは上昇傾向にありました。山を複数形成しながら徐々に下値を切り上げ、2018年1月には一時2,600円超を記録しました。

2018年2月からは株価が下落し始め、次第に上値が切り下がる傾向が続きました。一時期1,200円を切る可能性があったものの、1,200円付近がサポートラインとして機能して反発し、現在は1,400円前後で推移しています。

参照:Yahoo!ファイナンス「帝人

3-2.業績

直近5年間の業績は以下のとおりです。

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
売上高(億円) 8,885 8,537 836,5 9,260 10,187
営業利益(億円) 600 562 549 442 128
当期純利益 450 252 -66 231 -176

※1億円未満は切り捨てで表示
参照:帝人「業績ハイライト
  
新型コロナの影響で2020年度は減収となったものの、2021年度に回復しました。ただし営業利益はこの数年徐々に減少傾向にあり、マテリアル事業の赤字が主な要因です。

2021年度通期の決算説明会資料によると、複合成形材料やアラミドでは原燃料価格の高騰の影響を受け、またアラミドは工場停電による生産休止の影響もあったそうです。販売価格改定は進めているものの、営業赤字となりました。一方でヘルスケアは売上・利益ともに好調で、過去最高益の営業利益も達成しました。

参照:帝人「2021年度決算及2022年度業績見通し
 
当期の2022年度に関して、第3四半期時点における見通しでは、売上は1兆300億円、営業利益は100億円としています。売上は1兆円を突破するものの、2021年よりさらに大幅減益を見込む厳しい状況です。

マテリアル事業における欧州拠点での工場火災、米国拠点での設備故障復旧後の立上げ遅延などが大きく影響するとのことです。また、ヘルスケア事業は黒字ではあるものの、医薬品「フェブリク」の特許切れで後発品が市場に参入した影響で販売量が減少し、2021年度からは減益となる見込みです。

参照:帝人「2022年度3四半期決算及び2022年度業績見通し

4.帝人の将来性

帝人の将来性について、ESGと業績の両面から考察していきます。まずESGでは環境に関する取り組みに積極的で、水資源管理や有害化学物質など、炭素繊維などの事業と関わりの深いテーマで施策を展開しています。

環境関連の2030年度のKPIを明確に複数定めており、いくつかのテーマでは着実に成果が出ています。有害物質削減ではすでに2030年度目標の水準に達しており、さらにチャレンジングな目標設定がされる可能性もあります。埋め立て廃棄物量の削減など、改善の成果がまだ表れていない分野についても、今後が期待されます。

次に業績面についてですが、売上は順調に増加しているものの、5年連続で営業利益が減少しており、かなり厳しい状況です。マテリアル事業が原燃料高などの影響で赤字が続いているほか、これまで高収益であったヘルスケア部門も2022年度は医薬品「フェブリク」の後発品参入による販売減や薬価改定等の影響により、苦戦しているようです。

同社の事業環境は厳しく、株価に関しても上値が重い状況が続く可能性があります。

5.帝人の配当・優待情報

1株あたり年間配当

2018年度 70円
2019年度 60円
2020年度 50円
2021年度 55円
2022年度 40円
主な株主優待 なし

「安定的・継続的な配当」を重視しており、状況に応じて自己株式取得等も機動的に実施する方針で。利益成長に応じた増配を目指し、中期的な配当性向は、当期純利益の30%を目安としています。

参照:帝人「株主還元

6.まとめ

帝人のESG関連の取り組み、株価推移や近年の業績について解説してきました。大手化学メーカーであり、炭素樹脂やアラミドなどのマテリアル事業、医療ソリューションのヘルスケア事業を展開しています。経営ではサステナビリティも重視しており、水資源管理や有害物質削減などのテーマに取り組んでいます。

業績に関しては、5年連続で減益が続いている状況です。2大事業である、マテリアル事業とヘルスケア事業で立て直しを図れるかが問われています。

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安藤 真一郎

マーケティング会社に勤務した後、ライター・コラムニストに転身。 さまざまなジャンルの執筆を行う途中でマネーリテラシーの重要性に気づき、現在はマネー・金融分野を中心に執筆活動を行う。投資、資産形成、年金、税制度、ローン、節約、キャッシュレス決済など多数の執筆実績あり。投資に関しては中長期での利益獲得を目指し、米国株式や先進国株式を中心とする投資スタイル。ファイナンシャルプランナー資格保有。