【元トレーダーが解説】暗号資産市場のドミナンスを使った「スプレッド取引」とは?

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証券会社を経て、暗号資産(仮想通貨)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。

目次

  1. スプレッド取引とは
  2. 暗号資産のスプレッド取引とは?
  3. 暗号資産におけるスプレッド取引の注意点とは?
  4. スプレッド取引は必ず損切りを徹底すること

暗号資産を取引している投資家の中で、暗号資産同士の強弱でトレードしている方は少ないのではないかと思います。暗号資産同士のペアだとレートがわかりにくいことが要因としてあるかもしれません。

証券や通貨市場では銘柄間の強弱を活かしたスプレッド取引というものがあります。暗号資産市場でも同様に銘柄間の強弱を活用できると、トレードの幅が広がることでしょう。ここでは暗号資産のスプレッド取引とは何か?そしてどのようにして行うのか?ということを解説したいと思います。

①スプレッド取引とは?

最初にスプレッド取引について解説します。スプレッド取引は金利差や価格差を利用して行う取引を指しています。

異なる市場で生じる価格差「市場間スプレッド」や、米国債金利と日本国債の金利差等差分で生じる価格差「金利差スプレッド」などがあり、それらを活用して利益を狙うトレードをスプレッド取引と呼びます、

例として下記は日経平均株価とNYダウの価格差になります。
Spread1

スプレッド取引はこの価格乖離にフォーカスしており、この差分が広がったり縮小したりする動きを利用して利益を狙いに行く投資手法です。上図の場合、NYダウ(赤)が日経平均株価(青)と比較して相対的に上昇しすぎていると判断し、NYダウを「ショート」、日経平均株価を「ロング」するという判断になります。

価格の絶対値が異なるので、基本的にはパーセンテージを見てリスク量を調整することになります。

スプレッド取引と聞くと難しく聞こえるかもしれませんが、リスクは低く堅実に利益を出したい投資家向けの取引手法と言えます。

上図の場合、NYダウと日経平均株価両方とも上昇していますが、相対的な強弱があります。片方でショートポジションを作ることで、たとえ下落しても、ある程度損失を免れることができます。そのため、スプレッド取引は大きな金額を運用するときに利用されています。

それでは次に、どのように暗号資産でスプレッド取引を利用できるか見ていきましょう。

②暗号資産のスプレッド取引とは?

暗号資産のスプレッド取引は、暗号資産間のスプレッドをチェックしてトレードするものです。イメージとしては「ドミナンス」を売買しているようなものです。

ドミナンスとは市場占有率であり、下記が暗号資産市場のドミナンスチャートになります。ドミナンスは暗号資産のマーケットでも常にチェックされている大事な項目であるため投資家としてみておくと良いでしょう。
Spread2

これは暗号資産マーケット全体に占める銘柄毎のシェアを表しています。このドミナンスの変化に基づいて売買することで、暗号資産のスプレッド取引を行うことができます。

それでは次に、暗号資産間のスプレッドの例をチェックしていきます。
Spread3上記はビットコイン(青)とイーサリアム(赤)の相対的なチャートです。2020年初頭を「0」として、どの程度変動したかを示しています。

年初からイーサリアムが大きく上昇している一方、ビットコインはイーサリアムの強さに追いついていないことが把握できます。

そしてスプレッド(緑)が大きく開いています。仮説として「スプレッドは流石に広がりすぎであり、今後はイーサリアムが伸び悩み、ビットコインは強くなるだろう」と予想する場合、イーサリアムを「ショート」、ビットコインを「ロング」することになります。こうすることで、『スプレッドが縮小したときに利益が出るようなポジション』を構築できます。

それでは別のケースを見てみましょう。
Spread4これはリップル(青)とイーサリアム(赤)の相対的なチャートです。これもイーサリアムが強いことが理解できます。そのため、スプレッド取引のポジションをとる場合はイーサリアムを「ショート」、リップルを「ロング」することになります。

このようにご覧いただくとスプレッド取引は簡単に理解できるのではないでしょうか。それでは暗号資産におけるスプレッド取引の注意点について解説します。

③暗号資産におけるスプレッド取引の注意点とは?

暗号資産でスプレッド取引を行う場合の注意点として、どの程度のポジションを持つかは重要です。

その場合は、価格変動幅(%)に基づいた評価損益を判断材料とします。例えば、ビットコインが1%動いた場合とイーサリアムが1%動いた場合の評価損益が同等となるポジションを取るのです。ここが一致しないとスプレッド取引が成立しません。日本円換算でどのくらいリスクを取っているのか計算しておくと良いと思います。

例として1BTC=1,000,000円 1ETH=40,000円とします。
この場合1BTCロングした場合、リスク量は1,000,000円となるため、250 ETH(=1,000,000円)をショートすると言った具合です。これはリップルでもライトコインでもどの暗号資産同士のペアでも同様です。リスク量の計算はスプレッド取引を成立させる上でとても重要です。

次の注意点は、スプレッドがどれ程開くのかわからないということです。参考になるのは、「過去に最大でどの程度開いたことがあるか?」ということです。つまりそのスプレッドまで開けば、そこで止まりやすいと考えることができます。

しかし、暗号資産市場はまだ歴史が浅いこともあり、資産間のスプレッドはどこまで開くのかわからない部分があります。比較的最近誕生したようなアルトコインでは成立しづらい場合があります。

④スプレッド取引は必ず損切りを徹底すること

Spread5スプレッド取引に限らずトレードの基本として損切りを徹底しましょう。

スプレッドがある程度拡大すると縮小に転じる傾向は確率論的には正しいものの、例外もあります。個別のニュースが出て強く上昇し始めると、スプレッドは拡大し続けることも往々にしてあります。

イーサリアムに関しても2020年にDeFi関連のバブルの恩恵を受けて、価格は堅調に推移しています。こうなると、これまで目処としていたスプレッドを利用できなくなります。スプレッド取引をしていたトレーダーは、一旦撤退を余儀なくされた格好になります。

そのため、スプレッド取引は損切りラインを決めてからエントリーすることが大切です。損切りは継続的な利益を出すために大切なルールです。徹底することをおすすめします。

今回ご紹介したスプレッド取引のコンセプトを理解して頂き、トレードの幅を広げて頂けると幸いです。より安定したリターンを得ることができるようになるでしょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12