洗濯用洗剤のヒット事例として、P&Gのジェルボール洗剤が挙げられます。以前には日本では見られなかった独特の形状、使いやすさなどでイノベーティブな製品としても注目を浴びました。
2014年の発売から、ジェルボールは大ヒットを記録し、売り場に定着しています。今回はジェルボール洗剤が多くの消費者に支持された要因、イノベーションを生み出すためのP&Gの組織づくりについて解説します。
※本記事は2023年11月21日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- ジェルボール洗剤は量を測らずに洗濯できる
1-1.アリエール ジェルボール4D
1-2.アリエール プロクリーンジェルボール
1-3.ボールド ジェルボール4D - ジェルボール洗剤がヒットした要因
2-1.時短のニーズに合致した
2-2.新しい路線を開拓した
2-3.機能性も優れている - イノベーションを生み出すP&Gの組織づくり
3-1.イクオリティ&インクルージョン
3-2.インクルージョン推進の歴史 - まとめ
1.ジェルボール洗剤は量を測らずに洗濯できる
P&Gのジェルボールは、2014年に発売された洗濯用洗剤です。「粉末でも液体でもない第3の洗剤」がキャッチコピーで、洗剤市場におけるP&Gのシェアアップに大きく貢献しました。ジェルボールは洗濯槽に置くだけでよいため、洗剤の量を測らずに済む利便性が強く支持されています。
現在のさまざまなラインナップの中から、主な製品を3つ紹介します。
1-1.アリエール ジェルボール4D
「アリエール」ブランドにおけるジェルボール洗剤で、主力製品です。1粒を洗濯槽にポンと置き、洗濯物を後から入れて洗濯をスタートするだけと、使い方がとても簡単なのが特徴です。
ボール1粒で35L~65Lまでの洗濯に対応できるため、一人暮らしでも2人以上の家族でも使えます。すすぎは1回で済むため、節水・節電・時短につながるのもメリットです。また、洗濯槽クリーナーなしでも防カビの役割を果たし、洗濯槽を清掃する手間も省けます。
アリエール ジェルボール4Dは通常タイプ以外に、部屋干し用もあります。こちらは部屋干しによる生乾きの臭いを防止し、部屋干しでもさわやかな香りを実現します。
1-2.アリエール プロクリーン ジェルボール
通常のアリエールより、さらに洗浄能力をアップさせたジェルボールです。P&Gによると、頑固な油汚れに対し、洗濯機に入れる漂白剤を超えるレベルの洗浄力を発揮します。
洗浄力は高いものの、色物や柄物の衣服にも問題なく使用できます。また、衣類の抗菌や洗濯槽の防カビなどの効果も、通常のアリエール ジェルボールと同様です。
1-3.ボールド ジェルボール4D
「ボールド」のブランドでも、ジェルボールが販売されています。柔軟剤入りの洗剤のため、洗剤と柔軟剤を別々に使うのが面倒な方に向いている製品です。現在は下記4種類の香りが展開されています。
- プレミアムブロッサム
- フレッシュフラワーサボン
- ラベンダー&フローラルガーデン
- シトラス&ヴァーベナ
ボールドジェルボールの特徴は、強い洗浄力・消臭効果・柔軟効果・香りの4つの機能が1粒に入っていることです。アリエールジェルボールと同様、すすぎは1回で済みます。
2.ジェルボール洗剤がヒットした要因
ジェルボールは2014年に発売されてから、売れ筋商品として定着しています。ここからは、消費者に支持された要因について解説します。
2-1.時短のニーズに合致した
2010年代にはすでに「コスパ」や「タイパ」を重視するトレンドが生まれており、家事も効率性を求める声が多く見られました。日中は仕事や家事で多忙なため、洗濯もできるだけ時間をかけずにスマートに行う「時短」のニーズが高まっていました。
ジェルボール洗濯槽にそのまま置くだけで良いため、洗剤の量を測る手間が省けることから、家事で時短を重視する消費者に大きく支持されました。また子供でも扱いやすいため、洗濯を手伝ってもらいやすいことも支持された理由となりました。
ジェルボール洗剤はサンケイリビング新聞社の「助かりました大賞」で、家庭用品部門で金賞を獲得しました。この賞は主婦が「助かった」と思うものを選び大賞を決定するもので、9万4,508票の全国の主婦の投票により決定されました。
参照:サンケイリビング新聞社「主婦が助かった家庭用品第一位は「ジェルボール型洗剤」!」
2-1.新しい路線を開拓した
ジェルボール洗剤は、軽量でコンパクトであるため、シニアなど力の弱い方でも扱いやすく、さまざまな年齢層が使いやすくなっています。
しかし、コンパクトな洗剤はジェルボール以前からすでに存在していました。花王の「アタックNEO」は2010年に発売され、従来の製品より濃縮された液体洗剤として注目を集めました。他社でもライオンの「NANOX」が誕生するなど、大手メーカーではしばらく濃縮液体洗剤が主流となり、既存路線となっていました。
これに対して、P&Gのジェルボールは液体ではなく固体であり、さらに洗剤の量を測る手間も省いたことから、既存路線とは一線を画する新たな路線です。新奇性・斬新さで消費者へ大きなインパクトを与え、注目度が高まったといえます。
2-3.機能性も優れている
ジェルボールは形状の新しさだけでなく、洗剤としての性能の良さも評価されています。アリエール ジェルボール 4Dはエリ・そでの気になる汚れも落とすことが可能で、液体洗剤の8倍の消臭成分を配合し、消臭効果も高くなっています。
P&Gによると、日本の平均洗濯量が1回あたり4kgなのに対して、アリエール ジェルボール 4Dは1回あたり6kgをまとめて洗濯できます。まとめ洗いは、節水・節電・時短にも繋がります。
3.イノベーションを生み出すP&Gの組織づくり
P&Gは、日用雑貨品におけるグローバルでのトップメーカーです。これまでもパンパース・パンテーン・ファブリーズといった、革新的な製品を生み出してきました。
同社がイノベーションを生み出すため、組織づくりで取り組んでいることを紹介します。
3-1.イクオリティ&インクルージョン
P&Gの組織づくりでは、平等な機会とインクルーシブな世界の実現を推進しています。さまざまな背景・特徴を持つ人材が、機会を平等に得ながら能力を最大限発揮するための組織づくりを行っています。
P&Gでは、以下3つの要素が組み合わさることにより、多様な個人の能力と成果の最大化につながるとしています。
文化 | 個々の多様性を互いに理解・尊重・活用しあう文化の醸成 |
制度 | 一人ひとりに合った働き方が選べる柔軟な制度 |
スキル | 多様性をビジネスに活かす社員のスキルの育成 |
P&Gでは、時間や場所を柔軟に設定し、個々の社員の事情に合わせた働き方がしやすくなるよう、以下の社内制度を導入しています。
フレックスアワー | 日ごとの開始・終了時間を個別に設定できる(コアタイムを満たす必要はある) |
ワーク・フローム・ホーム | 自宅などの場所でも勤務できる(情報セキュリティなどの確保は必須) |
ワーク・フローム・エニウェア | 居住地を自由に選び日本のどこでも働ける |
3-2.インクルージョン推進の歴史
P&Gでのインクルージョンは、下記のような段階を経て推進しています。
1990年代 | 女性活躍推進期 | ・ウーマンズネットワークの発足 |
1998年~2007年 | ダイバーシティ推進期 | ・ダイバーシティ・ネットワークの発足 ・ダイバーシティフォーラムの開催 |
2008年~ | ダイバーシティ&インクルージョン推進期 | ・全部門でキャリアデーの開催 ・女性管理職比率 30%超の達成 ・社外向け啓発プロジェクトの発足 |
2020年~ | 多様性と平等な機会推進期 | ・女性起業家育成プログラムの開催 ・LGBTQ+コミュニティの設立 ・アライ育成プログラムの発足 |
女性の活躍を推進していた90年代から、2000年代以降は多様性を重視する方針へと移っています。性別のみならず、多様な個性を尊重する流れが反映されています。
4.まとめ
P&Gのジェルボール洗剤の特徴や、ヒットした要因について解説しました。形状の新奇性、扱いやすさ、高い洗浄力や消臭効果などにより、現在も根強く支持されている商品です。
P&Gではイノベーションを生み出すため、多様性を尊重・活用しあう組織づくりを推進しています。今回紹介したもの以外にもさまざまな取り組みがあり、今後もイノベーティブな製品の開発が期待されます。
安藤 真一郎
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