NFT市場の現状、今後の可能性について解説

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今回は、NFT市場の現状について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. NFTとは
  2. NFT市場の現状
    2-1.市場規模
    2-2.NFT関連の提供サービス
    2-3.NFTコンテンツの主要分野
  3. NFT市場のこれから
  4. まとめ

近年、「NFT」という単語が世界中で飛び交うようになりました。デジタルデータに唯一無二の価値を付与することに成功したNFTは、新たなビジネスモデルとしてさまざまな分野のコンテンツとコラボレーションしながら、その規模を拡大してきました。そこで今回は、NFT市場の現状に焦点を当て、市場規模の推移などについて詳しく解説していきます。

①NFTとは

NFTとは「Non-Fungible Token(ノンファンジブルトークン)」の頭文字をとったもので、日本語では「非代替性トークン」と訳されます。

NFTはその仕組みから不正や改ざんが極めて困難であるとされる「ブロックチェーン・テクノロジー」を利用して生み出されたもので、これまでコピーが比較的簡単だったデジタルデータにも一点ものの価値を持たせることに成功しました。

現在、国内外では数多くのNFTが存在しており、それぞれ「NFTマーケットプレイス」にて取引が行われています。中には、その希少性からかなりの高値で取引されているものもあり、投資の一環としても注目されています。

②NFT市場の現状

2-1.市場規模

NFT市場は21年夏ごろから急速な盛り上がりを見せ、その勢いは22年4月あたりまで継続する形となりました。しかし、22年6月には、NFT販売額がピーク時と比べて10分の1を下回る水準まで落ち込むこととなりました。

背景には、世界的なインフレおよび利上げと、それに伴う「リセッション(景気後退)」に対する懸念が、仮想通貨やNFT市場にも大きな影響を与えたものと考えられます。株式や仮想通貨をはじめとする「リスク資産」から大規模な資金が流出しています。

ブロックチェーン分析企業「チェイナリシス(Chainalysis)」のデータをもと、イギリスのメディア「ガーディアン」がまとめた内容によると、NFT市場の単月あたりの販売額は21年7月時点において20億米ドル程となっていましたが、その翌月の8月には一気に100億ドル近くまで跳ね上がりました。その後は70億ドルあたりを推移し、22年1月にはピークとなる126億ドル(約186億円)まで到達しました。しかし、ここからは下落の一途をたどることとなり、22年6月には10億ドルまで落ち込むなど、ピーク時と比べて10分の1を下回る水準となりました。

NFT市場が最も盛り上がりを見せていたピーク時には、Twitterの共同創業者として知られるジャック・ドーシー(Jack Dorsey)氏の「初ツイートNFT」が290万ドル(約4億円)というかなりの高額で落札されました。しかし、22年4月の報道によると、このNFTのホルダーが再び販売に出したところ、最高額が1万4,000ドル(200万円)までしか上がらず、販売が中止される事態となりました。

このように、NFT市場は一時熱狂的な盛り上がりを見せたものの、その後は比較的落ち着いている印象となっています。

出典:MarketsandMarkets

世界的な市場調査を行っている「マーケッツアンドマーケッツ(MarketsandMarkets)」の報告によると、NFT市場は22年の30億5,600万ドル(約4,196億円)から、27年までには136億7,900万米ドル(約1兆8,782億円)まで、およそ4.4倍を超える規模にまで成長するという予測が出ており、予測期間中の「CAGR(年平均成長率)」は35.0%にもなるという見込みです。

NFT市場では現在も多岐にわたる取り組みが行われており、ゲームやファッションをはじめとするさまざまな分野とのコラボレーションも進んでいるため、ピーク時のような爆発力はないとしても、今後も引き続きその規模の拡大が期待できると言えるでしょう。

2-2.NFT関連の提供サービス

NFT関連の提供サービスに焦点を当てると、NFTの作成や管理などに比べて、NFTマーケットプレイスが特に大きなシェアを占める状況となっています。マーケッツアンドマーケッツの報告によると、22年においてNFTマーケットプレイスが全体の約55.4%という最大シェアを誇っており、予測期間中も引き続きその地位を維持するだろうとのことです。

NFTマーケットプレイスとは、クリエイターやユーザーがNFTを自由に売買できるプラットフォームのことを指します。代表例には、OpenSeaやMagic Edenなどがあり、現在国内外において広く展開されています。NFTが世界中から脚光を浴びて以来、さまざまな企業や組織がNFT分野への参入を果たしており、中には自社のNFTマーケットプレイスを立ち上げたという企業も多く存在します。このような動きはNFT市場の発展に大きく貢献しており、今後その数が増えることで、さらなる市場拡大が見込めるでしょう。

2-3.NFTコンテンツの主要分野

NFTコンテンツの主要分野としてよく取り上げられるのがゲーム分野です。ブロックチェーンゲームの代表格「アクシ―・インフィニティ (AXS)」は、コロナウイルスが蔓延したことで雇用機会が激減した東南アジア諸国に代替収益源を提供したことで、大きな社会現象を巻き起こし、NFT市場の開拓を牽引しました。

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このような、ゲームをプレイすることでトークン報酬を獲得できるブロックチェーンゲームは21年時点で大きな盛り上がりを見せ、22年6月には市場としてのピークを迎えました。

Dapps関連の情報サイト「DappRadar(ダップレーダー)」によると、22年第2四半期にベンチャーキャピタルによって行われたブロックチェーンゲーム分野への投資総額は25億ドル(約3,400億円)にも上り、21年の年間投資額である40億ドルと比べても、その半分以上が第2四半期だけで投資された形になったということです。なお、22年におけるNFT市場自体の売り上げは第1四半期と比べて29%減だったにも関わらず、ゲーム関連のNFTは昨年比で19%増を記録するなど、仮想通貨業界の低迷とは裏腹に堅実な成長を見せています。

③NFT市場のこれから

NFT市場のピーク時には290万ドルという高額で取引されたTwitterの共同創業者の「初ツイートNFT」が、その後売りに出した際には1万4,000ドルまでしか上がらなかったという事例がありましたが、ここからも分かるように、NFT市場が今後さらに発展していくためには、NFT自体にユーティリティを持たせることが大切になってきます。

最近では22年6月に、世界最大規模のNFT特化型カンファレンス「NFT NYC 2022」が開催され、「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」などの人気NFTプロジェクトが多数参加しました。BAYCは多くの著名人が保有していることでも知られており、米人気ラッパーのEminemやSnoop Doggなどを招いて開催された「ApeFest 2022」には、BAYCまたは「Mutant Ape Yacht Club(MAYC)」のホルダーおよび招待者のみが入場を許可されました。このように、BAYCはNFT業界において特に強力なコミュニティとユーティリティを有しており、これによって不動の人気を維持することに成功しています。

NFT市場の盛り上がりが落ち着いている今、どのようなユーティリティを提供していくのかが、一つのポイントになると言えるでしょう。

④まとめ

NFT市場は21年に急激な規模の拡大を見せましたが、その後は販売額が徐々に下降する形となり、22年6月にはピーク時と比べて10分の1を下回る水準となりました。

しかし、ゲーム関連のNFT投資総額は昨年比で19%増を記録するなど着実な成長を見せているため、今後ユーティリティの充実したNFTなど、実生活と結びつけることのできるプロジェクトが多く出てきた場合、その市場規模は再び大きな拡大を見せるのではと期待されています。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12