自分で仮想通貨を作ってわかった、仮想通貨業界の発展に必要なこと

仮想通貨は良くも悪くも世間を賑わせています。仮想通貨や仮想通貨を支えるブロックチェーン技術は世の中を変える革新的な技術だとも言われますが、まだまだ世間一般に十分認知されているとは言い難く、その技術面についてはなおさら浸透していない印象を受けます。

新しく革新的な技術で、かつ投機対象にもなっている仮想通貨に対しては、まだ世界各国で懐疑的な声も聞こえ、政府も手探りでルールを作っている最中です。そのような中にあり、仮想通貨業界はまさに激流のような早さで変化を続けています。

仮想通貨やブロックチェーンの注目度は年々増しているように思えますが、一方で仮想通貨取引所のハッキング被害が注目されるなど不安要素もあり、まだ世間一般に十分浸透している状況とは言えません。

そうした中で、仮想通貨業界が今後発展し、世の中の多くの人が仮想通貨やブロックチェーンによるメリットを享受できる世の中となるためには、いま何が求められるのでしょうか。世界各国の仮想通貨活用事例を調査し、自分自身でも仮想通貨を作成しプロジェクトを運営した経験を持つ私の立場から考察したいと思います。

目次

  1. 仮想通貨の正しい認知が世間に広がること
    1-1.「怪しい」「怖い」というイメージが生まれた理由
    1-2.「伸びる投資対象」という認識にはズレがある
    1-3.正しい認知の拡大に必要なのは「事業化」だ
  2. 仮想通貨の税制と法整備を確立すること
    2-1.日本における仮想通貨税制の問題点
    2-2.既存法規との対立、動きづらい事業者たち
  3. 異常な値動きの激しさが沈静化すること
  4. まとめ:仮想通貨業界が今後発展するには

1.仮想通貨の正しい認知が世間に広がること

仮想通貨はまだ、世間一般の人々から正しい理解を得られているとは言い難い状況にあります。というのも私自身の経験から、「仮想通貨」という言葉を聞いた時に「怪しい」「怖い」あるいは「儲けたい」ということを返す人が非常に多いからです。

こうした世間の仮想通貨に対する認識は、間違っているわけではありません。しかし、自身で仮想通貨に関する事業を行う身になると、世間では仮想通貨やブロックチェーンという技術の意義や本質を理解しないまま、恐怖感や価格といった面ばかりがフォーカスされている印象をどうしても受けてしまいます。

1-1.「怪しい」「怖い」というイメージが生まれた理由

「仮想通貨は怪しい」という言葉は、私自身はたして何度聞いたかわかりません。私が独自の仮想通貨プロジェクトを立ち上げた時には、仮想通貨に詳しくない知人や親族からは「大丈夫?」「誰かに騙されたりしてない?」ということを頻繁に聞かれました。

さらには銀行や公的機関での手続きにおいても、「仮想通貨」という単語を聞いた瞬間に担当者の目がこわばり、追加で質問を受けるという経験も何度かしてきました(特に問題はありませんでしたが)。一般人も企業も行政も、多くの方が仮想通貨に対して何かしらいぶかしさを覚えているのでしょう。

こうした悪いイメージが根付いてしまった理由は複数考えられます。まず前提として、仮想通貨は新しい技術であり、かつWeb上のみで完結すること、一般ユーザーには技術面の理解が難しいことがあるため、世間一般には「良くわからない、実態が掴めない」という印象を与えてしまい、それが「怪しい」「怖い」という印象に繋がってしまうのです。

また、仮想通貨取引所がハッキングされ仮想通貨が盗まれるという事件が発生し、メディアで大々的に報道されたことや、ビットコイン目当ての強盗殺人が発生した時に「ビットコイン殺人」など、「仮想通貨=怪しい、怖い」という心理を掻き立てる見出しのニュースが踊ることは、ユーザーに懐疑心を植え付けるのに十分な理由でしょう。

仮想通貨を謳う詐欺や詐欺まがいの行為が世界中で頻発していることは事実です。フィッシングサイトに誘導して仮想通貨取引所のIDやパスワードを不正入手しビットコイン等を盗む詐欺や、新規プロジェクトへの投資を謳って仮想通貨で資金を集めたものの、実際には事業を行わず雲隠れするケースが様々に存在します。

こうして形成された仮想通貨へのネガティブなイメージは、仮想通貨業界が成長していくために払拭していかなければならない目下の課題の一つとなっています。

1-2.「伸びる投資対象」という認識にはズレがある

仮想通貨に関心を持つ人は一定数存在しますが、私自身がSNSなどで数千人単位の仮想通貨ユーザーを見てきた限り、ほとんどのユーザーは「儲かるから」という理由で手を出していたように見受けられます。

事実、2018年1月に仮想通貨の価格が軒並み大幅に上がった際は非常に多くのユーザーが活発に仮想通貨に対して言及していたにもかかわらず、それ以降どんどん価格が下がるにつれて仮想通貨の話題が大きく減り、「稼げる」「儲かる」といった単語もあまり見なくなりました。

私自身も最初に仮想通貨に触れたのは「儲かりそう」という動機からなのですが、今になって振り返ると、多くのユーザーが考える「仮想通貨が儲かる」とか「伸びる投資対象である」ということは、少々事実とのズレがあるように思います。と言うのは、現状の仮想通貨の価格推移が現実の需要と供給のバランスからは説明が付かないからです。

以下のグラフは2018年におけるイーサリアム(ETH)の価格チャートです。1月14日には過去最高値の1ETH=1,397USDという価格に達しましたが、同年の大みそかには139.8USDと、当時の1/10の価格にまで下落しています。
ether-2018chart
【引用】CoinMarketCap – Ethereumチャート

様々な契約をWeb上で安全に完結できる仕組みを提供するイーサリアムは、2018年においてもビジネス利用において世界中で着実に導入数や実験数を増やしてきました。その一方で1月と12月で大幅に価格が異なるのは、現実のイーサリアムに対する需要に関係なく、投機的なマネーが一気に押し寄せたことが原因であると考えることができます。

ここまでの値動きは株式や外国為替ではまず見かけることはありません。それだけに仮想通貨の価格が現時点から上がるか下がるかは、論理的に答えを出せない、つまり「まったく分からない」というのが実情です。こういった背景を考慮せず、「仮想通貨は今後もっと成長するから価格も上がる。買えば儲かる」と考えるのは危険であると言えます。

どちらかと言えば、どうなるか分からない仮想通貨の価格自体に期待するのではなく、仮想通貨ビジネスが成功することで利益を増やし、それを株主に還元していける企業の株式などを購入する、という方が「仮想通貨で稼ぐ」という言葉には適しているのではないでしょうか。

こうした仮想通貨の価格に対する冷静な認識を持つことは、価格安定のための大切な一歩となります。後述しますが、仮想通貨価格の安定化は仮想通貨業界が発展するための重要な一要素であるため、現状の投機的な認識が強いことは、今後解決していくべき課題であると位置付けられます。

2.仮想通貨税制と法規制が確立すること

仮想通貨をめぐる法律や税金の取り扱いについては世界各国で議論が行われている最中です。特に既存の金融関係の法律との整合性が議論されることが多く、「この仮想通貨は通貨なのか、証券なのか、いずれも該当しないのか」などといった観点から法規制が検討されています。

また、仮想通貨は世界中のユーザー同士が自由にやり取りできるため、税金の取り扱いやマネーロンダリング、為替への影響など各国政府が懸念することが多くあります。そのため、仮想通貨の法律・税務の議論は世界中で繰り返し行われています。

以下では日本における仮想通貨の法規制および税制について、業界発展の妨げと考えられるポイントを解説します。

2-1.日本における仮想通貨税制の問題点

2019年2月時点の日本の税制においては、個人が仮想通貨を使用した際に利益が出ていた場合、それを雑所得として計上し、所得計算の対象としなければなりません。

ここでいう仮想通貨の使用とは、仮想通貨を日本円に替えたとき、他の仮想通貨に替えたとき、そして仮想通貨を決済に利用したときを指します。これらの行為を行った時点の価額が取得価額を上回っていた際に利益が発生したとみなされ、課税対象となります。

これにより生じる一番の問題点は「確定申告の手間が大きい」ということです。発生した為替損益を計上し申告しなければならないのはもっともですが、そのためには年間の仮想通貨取引データを全て集計し、損益を計算しなければなりません。

仮想通貨では株取引やFXの特定口座のように、事業者が損益計算や確定申告を代行してくれませんので、自分自身で行うか税理士などに依頼する必要があります。そのため複数の仮想通貨取引所の取引データや決済利用時のデータを一つずつ確認する手間が発生し、ユーザーは大きな負担を強いられます。

仮想通貨同士の交換や決済利用においても上記のような申告負担が生じることから、現状の税制では仮想通貨の決済やビジネス利用といった現実的な利用が多少制限されてしまいます。例えば、法定通貨に替えた時のみ損益計算の対象とみなす、国内の仮想通貨取引所に対して証券口座のような特定口座制度を設けるといった改正が望まれます。

2-2.既存法規との対立、動きづらい事業者たち

仮想通貨に対してはまだ世界各国も法整備が追いついているとは言えません。日本では2017年4月に「仮想通貨法」とも呼ばれる改正資金決済法が施行され、仮想通貨に対する法整備が始まりましたが、上述の税務的な懸念の発生やICO(新規仮想通貨の売出による資金調達のこと)に関する規制が定義されていないこともあり、まだ仮想通貨業界の実情に必ずしも即してはいないのが現状です。

ICOなど法律で明確に定義されていない事業を進めることは、現状においてはリスクが高いと言えます。なぜなら今後の法律次第で事業を断念せざるを得なくなり、今まで費やした経営資源が無駄になる可能性もあるからです。

世界中で仮想通貨を用いたプロジェクトがいくつも進行しているものの、法規制により特定の国における営業活動が禁止されたり、その国での事業継続を断念せざるを得なかったりするケースも散見されます。

日本においては仮想通貨交換業者未登録の企業が日本人に向けた営業活動を行うことを禁止しており、実際に海外の仮想通貨取引所やブロックチェーンを活用したサービスの展開が日本政府により中断される事例もありました。

仮想通貨業界は日々進化しており、かつ混沌としているため、各国とも法整備は容易ではないでしょう。そうは言っても、仮想通貨事業者が活動しやすいよう、包括的かつ厳重すぎない法整備や国際的な連携が望まれるところです。

3.異常な値動きの激しさが沈静化すること

先述のように、2018年においてイーサリアム(ETH)の米ドル建て価格は10倍もの変動を見せるなど、仮想通貨の価格は株式やFXといった金融商品にはない非常に激しい騰落を見せている状況です。一日で相場が前日比10%以上動くことも珍しくないため、非常にリスクの高い投資対象と言えるでしょう。

こうした激しい値動きはトレーダーや投機家にこそ愛されるものの、仮想通貨の本来の用途である決済や送金、ビジネスツールの手数料といった観点で見ると、どうしても障害となってしまいます。

例えば決済や送金を行う場合に、仮想通貨を購入してから相手のウォレットに着金するまでの間で価格が数%変動する可能性があります。こうなると、価格変動の分だけ購入側か受取側のいずれかが損をしてしまいます。個人間の送金ならまだしも、仮想通貨決済を導入しようとする店舗や企業から考えると、これは大きなデメリットとなってしまいます。

この値動きの激しさを沈静化するのは難しいかもしれませんが、今後さらに仮想通貨の時価総額が増え、取引が活発になれば徐々に価格が安定化する可能性はあります。また、各仮想通貨取引所にサーキットブレーカー(急激な価格変動が発生した際に取引を一定時間強制停止し、売買を沈静化する仕組み)の導入を義務付けるなども有効でしょう。

仮想通貨は今まで激しい価格の上昇により多くのユーザーを引き付けてきた背景もありますが、今後業界全体が発展していくためには、そうした投機的な見方が減っていくことが必要であると言えます。

まとめ:仮想通貨業界が今後発展するには

仮想通貨やブロックチェーンといった技術は、金融をはじめ世の中の多くのシステムを効率化する期待が持たれています。その結果として、海外送金など多数のサービスがより安く、より便利に活用できる社会の到来を期待できるでしょう。

私自身、仮想通貨を発行する側に回ってみて、改めてこれらの技術の強みを認識することができました。今まで実現するのにコストと時間が必要だったシステムの構築が、仮想通貨を活用することで非常に安価かつ短時間に行える可能性があるのです。その他にも様々な独自の強みを有しているため、私個人は仮想通貨業界の未来に期待を寄せています。

一方、現状ではまだまだ世間に対する仮想通貨のイメージは正確なものではなく、事業者と一般ユーザー間には隔たりがあるように感じます。仮想通貨業界は引き続き正しい理解のための情報発信と啓蒙を続け、誰もが前向きに活用したくなる環境を目指して活動することが望まれるでしょう。

また、法律や税制が仮想通貨の現実的な利用に適したものに改正されていくこと、価格変動が安定化していくことも、仮想通貨業界が発展していくために必要なことであり、その進捗を注視したいところです。

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すずき 教平

すずき 教平

ブロックチェーンや仮想通貨を活用したシステムの開発、導入支援やコンサルティングを行う「合同会社むすびて」代表。ブロックチェーンの可能性に惹かれ、様々な仮想通貨を入手してみたり、プロダクトを開発してみたりしつつ日々を過ごしています。 HEDGE GUIDEでは、ビジネスの観点から見た仮想通貨コラムを読みやすさにこだわって執筆していきます。