今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の宮林悠成 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
- Meta社におけるNFTの取り組み
1-1. NFT投稿機能
1-2. Polygonとの提携
1-3. Arweaveの活用 - Meta社がWeb3に進出することの影響
- まとめ
Meta社によって提供されているFacebookおよびInstagramに対して「NFT投稿機能の実装されたこと」「Instagramのプラットフォーム上でNFTをゼロコストでミント・販売するために、Polygonと提携」「NFTに紐づたデータの保存には分散型ストレージネットワークであるArweaveの利用」といったNFTに関する機能が実装されることが続々と発表され、Meta社が本格的にNFTに参入してきました。今回はNFTに注力するMeta社のNFTの取り組みについてまとめていきたいと思います。
Meta社におけるNFTの取り組み
NFT投稿機能
ユーザーはRainbow、MetaMask、Trust Wallet、Coinbase Wallet、Phantom、Dapper Walletなどのサードパーティーウォレットに接続することができ、Web3ウォレットを両アプリケーションに接続することで、保有するNFTを投稿できるようになりました。またユーザーがNFTの画像を投稿すると、Instgramは画像に効果を加えることができ、コレクションや作品の説明、作成者のタグ付けなど、NFTに関する公開情報を表示します。この効果というのは、Twitterの六角形のプロフィール写真と同じように機能し、資産の信頼性と所有権を視覚的に示すものになっています。さらにInstagramは今後、動画ベースのデジタルコレクティブルをプラットフォーム上で表示することを可能にする予定です。
またMetaは、再生可能エネルギーを購入することで、Instagramでのデジタルコレクタブルの表示に関連する可能性のあるCO2排出量の影響を軽減することに貢献する予定です。
Polygonとの提携
Meta社は、Instagramのプラットフォーム上でNFTをゼロコストでミント・販売するために、Polygonと提携することを発表しました。YouTubeやTikTokとは異なり、クリエイターへの直接的な報酬がないため、クリエイターから長い間非難されていたInstagramでしたが、ついにクリエイターはInstagram上で独自のデジタル・コレクティブルを作り、Instagram上と外の両方でファンに販売することができるようになります。この機能は、米国の一部のクリエイターとコレクター向けに試験的に展開されました。しかしMeta社は、この機能を近いうちに他の市場にも拡大したいと述べています。
ユーザーは、Instagram内で直接デジタルコレクティブルを購入することで、お気に入りのクリエイターを簡単にサポートすることができます。また、コレクション名や説明文など、OpenSeaによってメタデータが充実した一部のコレクションの情報を、Instagramで公開される予定です。2022年11月現在、ユーザーはコラボ投稿、資金調達、位置情報タグ付け、ブランドコンテンツやブーストなど、従来コンテンツ制作者の収益に貢献してきたマネタイズ機能などの特定のツールを使用することができませんが、クリエイターは、NFTを使って、自分の作品、ファンとの関係、そして収益化の方法をよりコントロールできるようになりました。
Arweaveの活用
Arweaveは、データを極めて長い期間保管することのできる分散型ストレージサービスです。これまでは分散型ストレージサービスを利用せず自社サーバーにデータ本体を、ブロックチェーンにその証明を記録することで、改ざんを防止しつつ高速な処理を実現しようとする例も見られました。しかしながら、この手法では何らかの原因でサーバーからデータが失われることを防ぐことが難しいと考えられます。以前の記事でもArweaveについて扱ったことがありますので、詳細はこちらを参照してください。
2022年11月3日にMeta社は、クリエイターのデジタルコレクティブルを保管するためにArweaveを活用すると発表しました。これによりInstagramのユーザーは、Arweave上に保存された自分の投稿に対してデジタルコレクティブルを発行できるようになりました。つまり、Meta社はArweaveを利用して、そのプラットフォームにデータの永続性をもたらすことが可能になります。
Meta社がWeb3に進出することの影響
上記のようにMeta社がWeb3領域、とりわけNFT領域に参入してきた事例を見てきましたが、これによってどのような影響があるのか見ていきたいと思います。
そもそもMeta社は何十億人ものユーザーを抱えているプラットフォーマーであることからMeta社がWeb3に進出することによりその何十億人ものユーザーをWeb3サービスに触れるきっかけとなることが考えられます。これよりNFTのマスアダプションが進み、Meta社による莫大な投資によりさらにWeb3の成長が加速することが可能性があります。
Polygonとの提携では、TikTokやYouTubeといった他のプラットフォーマーとの激しい競争の中で、ソーシャルメディアプラットフォームの今までにないWeb3との提携だと考えることができます。ただし、Apple社が「アプリは、ライセンス キー、拡張現実マーカー、QR コード、暗号通貨、暗号通貨ウォレットなど、独自のメカニズムを使用してコンテンツや機能のロックを解除することはできません。」と発言した事実を考えると、これらのNFTがどの程度限定されたものになるかは明らかではありません。つまり、Meta社のNFTツールは、ブロックチェーン上でアートを販売することに限定されることが考えられます。
このようなより広い層へWeb3サービスを提供できるような影響はある一方で、Meta社などのビックテックはWeb3のオープンなエコシステムとは相反するものでもあり今後どのようにWeb3と関わるのかが注目されています。一般に、Web3やクリプトの考え方と従来のWeb2.0サービスといったプラットフォーマーが対立するように思われる傾向があります。しかし、これは対立することなく、お互いがカバーしている領域が違うため両方のサービスが共存する可能性が高いと考えます。そして、Meta社のようなWeb3を採用した企業がどのような課題とチャンスをもたらすかを注視することで、意図的な戦略を練ることができるでしょう。
まとめ
今回はNFTに注力するMeta社のNFTに対する取り組みについて見ていきました。Meta社のNFTに対する姿勢をお分かりいただけたのではないでしょうか。このようにWeb2のプラットフォームがWeb3のサービスを使用することが今後ますます増えることが予想されます。
ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。
Fracton Ventures株式会社
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