花王のめぐりズム「蒸気でホットアイマスク」は、目に付けるだけでじんわり温めてくれる商品です。デスクワークが多い方で、愛用している方もいるのではないでしょうか。
アイマスクは2010年に大ヒットし、多くの方に支持される定番商品となりました。この記事ではアイマスクがヒットした理由や、花王の研究開発について解説します。
※本記事は2023年11月10日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 花王「めぐりズム」は休息時間用のヘルスケア商品
1-1.蒸気でアイマスク
1-2.蒸気でグッドナイト
1-3.足パック - めぐりズムがヒットした要因
2-1.居酒屋のおしぼりがヒントになった
2-2.使い捨てカイロとは異なる使用感
2-3.テレビ番組で取り上げられた - 花王の数理科学研究
3-1.世の中の現象を数学で分析する
3-2.数理科学がめぐりズムの商品化につながった
3-3.ビオレの商品開発にも貢献 - まとめ
1.花王「めぐりズム」は休息時間用のヘルスケア商品
花王は、身近な日用雑貨品を数多く開発・販売しているメーカーです。領域は洗剤やシャンプーから化粧品にも及び、ドラッグストアで花王の製品を見かけないことは、ほぼありません。
同社の「めぐりズム」は、休憩時に使うヘルスケア商品として開発されたブランドです。パッケージから取り出して目元や首などに貼るだけで、蒸気が出てじんわり温められます。
2007年にアイマスクが登場し、2010年に大ブレークを果たしました。めぐりズムの商品ラインナップは主に3種類あります。
1-1.蒸気でアイマスク
目をケアするための商品で、目に当てると40度の蒸気が目元を温めます。家でリラックスする時、仕事の合間など、目が疲れた時にすぐ使えて便利です。
アイマスクには5種類の香りがあり、気分や好みに合わせて選べます。ラベンダーやカモミールなどは就寝前、メントールは仕事の合間の使用に向いています。
2022年の夏にリニューアルされ、パッケージと不織布が変わりました。従来品よりふっくら膨らむようになり、利用者の目元によりフィットしやすくなるよう改良されました。
1-2.蒸気でグッドナイト
蒸気でグッドナイトは、首元を温めるための温熱シートです。40度の蒸気が約30分間持続します。開封して貼るだけで温まるため、どこでもすぐ使えます。
夜に自宅でスキンケアをする時、ストレッチをする時などに使用できます。ラベンダーの香りの他に無香料タイプもあり、香りが必要ない方も使いやすくなっています。
1-3.足パック
足パックは、疲れた足に貼って、じんわり温めるシートです。デスクワークをした後、飛行機や電車などで移動をした後などに使って足のケアができます。
無香料タイプとラベンダーミントの2種類があり、ふくらはぎや足の甲に貼ります。
2.めぐりズムがヒットした要因
花王のめぐりズムがヒットした背景や、要因について見ていきましょう。
2-1.居酒屋のおしぼりがヒントになった
ホットアイマスクは、パソコンや携帯電話を使う時間の多い、現代人の習慣を背景に開発されました。デバイスを見続けた目に、蒸しタオルを当てたら気持ちが良く、商品にできないか考えたそうです。
開発メンバーに男性が多かったこともあり、居酒屋のおしぼりに例えると、多くのメンバーが納得しました。現場で多くの賛同者を得られたことは、商品化に成功したポイントの1つといえます。
2-2.使い捨てカイロとは異なる使用感
温める商品といえば、使い捨てカイロを連想する方も多いでしょう。しかし、蒸気でホットアイマスクのように目を直接温める商品は、それまでほとんどありませんでした。また、めぐりズムのシートタイプは比較的薄く、肌にフィットしやすくなっています。
温めている最中に内側から蒸気が出ることも、大きなポイントです。温めながら蒸気を当てることで、じんわり温まる感覚を生み出し、カイロの使用感とは差別化を図っています。
2-3.テレビ番組で取り上げられた
2010年の春のバラエティ番組で、ホットアイマスクを愛用していると、芸能人がコメントしました。この番組をきっかけに、ホットアイマスクは大きく注目され、売上を伸ばしました。
さらに中国では、中国人の作家や台湾の芸能人もホットアイマスクを愛用していると投稿し、一時期は中国人の、爆買いの対象にもなりました。
3.花王の数理科学研究
めぐりズムのさらなるヒット要因として、同社の数理科学研究があります。
3-1.世の中の現象を数学で分析する
数理科学研究とは、世の中の現象を数学によって理解・予測する学問です。数理科学の扱う領域は広く、金融市場や交通渋滞などにも及びます。
花王が扱う領域は主に「衛生」「美」「健康」「環境」であり、数理科学によってこれらを横断的に分析しています。対象となる自然現象も、光学現象や流体現象など多種多様です。
現実世界はいくつもの要素が複雑に関係しているため、数理科学研究では「モデル化」により、本質を捉えます。
3-2.数理科学がめぐりズムの商品化につながった
めぐりズムが温まる仕組みは、鉄・水分・酸素の化学反応で発生する熱です。ここで鉄粉がシートの中で偏ると温かさにムラが発生してしまうため、満足のいく温かさが得られません。初代のめぐりズムでは、鉄粉入りの原料をいかに均一に広げるかが課題でした。
ここで力を発揮したのが数理科学です。「流体シミュレーション」によって装置を作り、鉄粉入りの原料を均一に流すことに成功しました。
3-3.ビオレの商品開発にも貢献
「ビオレu 泡スタンプ ハンドソープ」は、泡が花の形で出てくる商品です。子供でも楽しんで手洗いができるようにと開発された商品であり、商品化に数理科学研究が貢献しました。
数理解析グループは、2015年に、泡が出てくるノズルの形状を、どのようにすれば思い通りの泡の形になるのかに挑みました。泡を粘性と弾性の両面から分析し、特性を把握したことで、コンピューター上で泡の動きを再現できるようになりました。
さらに品質工学によって、特定の形の泡を最も良く再現する穴の形状を効率的に割り出すことができ、泡が出るノズルの形を決めることができました。
4.まとめ
花王のめぐりズムアイマスクのヒット要因について解説しました。居酒屋のおしぼりをヒントにしたこと、使い捨てカイロとは違う使い心地にしたこと、テレビ番組で取り上げられたことなどが要因として挙げられます。
また、同社の数理科学研究も、めぐりズムの商品化につながりました。雑貨品とは一見関連のないように思われる学問も、実はめぐりズムやビオレなどの商品開発に貢献しています。
化学や生物だけでなく、他の領域の学問も取り入れたことも成功の要因です。研究開発に力を入れてきた同社の強みが発揮されたといえます。
安藤 真一郎
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