今回は、JPモルガンのオニキス・ラウンジについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
2022年2月15日に米金融大手JPモルガン・チェースは、仮想空間「ディセントラランド(Decentraland)」に「オニキス・ラウンジ(Onyx lounge)」を開設したことを発表しました。アメリカの有力銀行による仮想空間への参入は、メタバース産業発展への期待感を高める動きとして注目を集めています。そこで今回は、ディセントラランドに開設されたJPモルガンのOnyx Loungeについて、その概要や特徴を解説します。
①ディセントラランドとは?
まずは、ディセントラランドとは何かについて、その基本的な事項を解説します。
1-1. ディセントラランドの概要
ディセントラランド(Decentraland)とは、仮想通貨とブロックチェーン技術を活用したメタバースプラットフォームで、そのプラットフォーム上で使用される仮想通貨は「マナ(MANA)」と呼ばれています。
メタバースとは、インターネット上に構築された多人数参加型の仮想空間プラットフォームのことで、ブロックチェーンゲームとは、ブロックチェーン技術を基盤に構築されたゲームのことを指します。データの改ざん防止や膨大な処理の分散に優れたブロックチェーン技術を活用することで、従来の技術では到達できなかった「完全なメタバース」を構築できるとして、近年大きな注目を集めています。
ディセントラランドは2015年、Ari Meilich氏とEsteban Ordano氏の手により2Dプラットフォームとして誕生した後、VR(バーチャルリアリティ)とブロックチェーン技術を組み合わせたメタバースプラットフォームへと進化を遂げました。
また、仮想通貨MANAは2017年にICO(資金調達のためのプレセール)を実施しており、その際わずか35秒で2,400万ドル(約26億円)もの資金が集まったことで話題になりました。現在ディセントラランドの開発・運営を行うのはカリフォルニアを拠点とする非営利団体「Decentraland Foundation」で、20を超える世界中の投資家からのサポートを受けています。
1-2. ディセントラランドの特徴
①仮想通貨を取り入れた仮想空間プラットフォーム
ディセントラランドはメタバースと仮想通貨を組み合わせているため、ユーザーは自分の仮想通貨ウォレットをディセントラランドに接続することによって、仮想空間上でアバター・土地・不動産・アートなどといった様々なアイテムを自由に売買することができるようになっています。
また、ディセントラランドでは既に老舗ゲーム開発企業「Atari(アタリ)」によって構築されたカジノである「Atari Casino」なども公開されているため、ウォレットに保管している仮想通貨を使用してブラックジャックやルーレットなどのカジノゲームをプレイすることもできるようになっています。
②Play to Earn
需要のあるNFTのアイテムを手に入れたり、作成したりすれば、ディセントラランドで遊びながら収益化する「Play to Earn」が可能となります。メタバース上の土地「LAND」やアイテムなどのNFTは、ディセントラランド内のNFTマーケットで仮想通貨MANAを使って売買できるようになっています。また、OpenSeaなどの外部のNFTマーケットに持ち出せばイーサリアムなど他の仮想通貨での売買も可能です。
③クリエイター向けの「ビルダーツール」
ディセントラランドは、ゲームコンテンツやアイテムなどを構築したいクリエイター向けのビルダーツールである「Builder」や「The Decentraland SDK」を提供しています。 「Builder」はドラッグ&ドロップで利用可能なコーディング必要なしのシンプルなビルダーツールとなっており、「The Decentraland SDK」はコードを記述することによってプロフェッショナルな作品を構築することができる自由度の高いビルダーツールとなっています。
④他のNFTゲームとのNFT相互利用が可能
ディセントラランドはこれまで下記のNFTゲームと提携しており、一部のゲーム内アイテムやキャラクターを相互利用できるようになっています。
- AxieInfinity(アクシー・インフィニティ)
- Etheremon(イーサエモン)
- Etheremon Battle Racers(バトル・レーサーズ)
②ディセントラランドに開設されたJPモルガンのラウンジ
次に、ディセントラランドに開設されたJPモルガンのラウンジについて解説します。
2-1. Onyx Loungeの開設
先日、JPモルガン・チェースは、ディセントラランドにオニキス・ラウンジ(Onyx Lounge)を開設しました。Onyx Loungeは、Republic Realm社が構築している東京の原宿にインスパイアされたショッピング街「Metajuku(メタジュク)」にあります。
ラウンジの1階では虎が歩き回り、壁には銀行のCEOである「ジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)」のポートレートとメタバースの進化を示す年表が飾られています。また、奥に設置されている階段を上って2階に行くと、専門家たちのアバターが仮想通貨市場について話している様子や、幹部によるプレゼンテーションなどの映像を閲覧することができるということです。
なお、金融業界でメタバースに参入したのは、JPモルガンが初めての事例となっています。
2-2. Onyx Loungeのねらい
2020年に設立されたJPモルガンのデジタル通貨・ブロックチェーン技術部門Onyxは、ラウンジの設置とともに「Opportunities in the metaverse(メタバースにおける機会)」と題したレポートをリリースしています。
今改めてメタバースが注目されている背景についてJPモルガンは、「拡張現実(AR)および仮想現実(VR)ヘッドセットが安価になり、ユーザー体験をより没入的で高度なものに変化させていることが要因」であり、「デジタル通貨やNFTにより、クリエイターがトークンを使って自身の活動を収益化できるようになったこと」も要因になったと述べています。
Onyxの幹部であるChristine Moy氏は、同社がゲームパブリッシャーなどの顧客にブロックチェーンや決済技術を含むインフラを提供することにフォーカスしていると語っています。Onyx Loungeについて同氏は、JPモルガンのブロックチェーンへの取り組みの初期段階として「社内のユースケースを分析していた」とBloombergのインタビューで述べています。
③まとめ
ディセントラランドにラウンジを開設したことは、JPモルガンが仮想通貨(暗号資産)を完全に受け入れることを意味するものではありませんが、暗号技術(分散型台帳、NFT、仮想通貨)の持つ可能性を認識していることを示唆しています。
JPモルガンは急速に発展するメタバースが人々の生活の中で極めて重要な役割を果たすと予測しており、その市場機会は年間収益で1兆円以上になると試算しています。さらに、メタバースの発展は強固で柔軟な金融エコシステムを持てるかどうかにかかっており、クロスボーダー決済、外国為替、金融資産の作成、取引、カストディなどのコア機能が、”メタバースにおいて大きな役割を果たすだろう “と述べています。
JPモルガンのラウンジ開設とレポートの内容を受けて、メタバース市場の可能性が改めて認識されたことで、今後は参入する企業がさらに増加していくと考えられます。ディセントラランドのメタバース内のデジタル不動産(LAND)は数が限られているため、優れた立地を巡る企業による奪い合いが生じ、地価を押し上げているとも言われています。現在のところ、メタバースでできることは限られていますが、デジタルアバターや構築物が充実する中でメタバース経済がどのようなスピードで発展を遂げるか注目していきたいところです。
メタバース内のデジタル不動産への投資に関心のある方は、仮想通貨取引所CoincheckのNFTマーケットプレイスで関連商品を検討することができます。Coincheck NFT(β)は現在のところディセントラランドのLANDは取り扱っていませんが、人気メタバース「The Sandbox」のデジタル不動産(LAND)を取り扱っています。興味のある方は、仮想通貨取引所Coincheck の口座を開設しておくと良いでしょう。
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中島 翔
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