今回は、GamestopとImmutable Xの取り組みについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- ゲームストップのNFTマーケットプレイス
1-1.ゲームストップの概要
1-2.2022年後半にNFTマーケットプレイスをローンチへ - Immutable Xとは?
2-1.Immutable Xの概要
2-2.Immutable Xの特徴
2-3.IMXトークンの役割 - ゲームストップがImmutable Xを選んだ理由
- まとめ
米ゲームソフト小売大手ゲームストップ(Gamestop)」は2月の初旬に、Immutable社との提携によりNFTマーケットプレイスを開発する計画を発表しました。2021年に急騰劇を繰り広げたミーム株の代表格であるゲームストップは、Immutable社が開発しているイーサリアムのレイヤー2スケーリングソリューション「Immutable X」を使用して、NFT市場に参入します。そこで今回は、ゲームストップのNFTマーケットプレイスのねらい、同社が採用するImmutable Xについて解説します。
①ゲームストップのNFTマーケットプレイス
まずは、ゲームストップおよびそのNFTマーケットプレイスについて、基本的な事項を解説します。
1-1. ゲームストップの概要
ゲームストップは、アメリカに本社を置くコンピュータゲームの小売店で、ニューヨーク証券取引所(NYSE)にティッカーシンボル(GME)で上場しています。現在、世界10ヶ国で4,000店舗以上の店舗を展開しており、世界最大のコンピュータゲーム小売店とされています。
ゲームストップは1980〜2000年代のゲーム小売店舗型の全盛期を経て、オンラインショップの普及を受けて多くの実店舗を閉鎖してきました。その後、オンラインでの販売に方向転換し、ゲームと親和性が高いとされるNFT業界に進出しています。
1-2. 2022年後半にNFTマーケットプレイスをローンチへ
ゲームストップはNFTマーケットプレイス運営を目的に新部門の立ち上げを計画しており、これまでに20人以上の従業員を雇用したということです。新部門は今後、ゲーム内アイテムのNFTを取引するオンライン上のハブ(中心)を構築する計画です。
また、仮想通貨企業2社とのパートナーシップ契約が間もなく成立する予定で、技術共有からブロックチェーンやNFTの技術を伴うゲーム開発、そしてNFTプロジェクトに共同で出資するなどの取り組みを計画しています。ゲームストップは関連分野に今年中に数千万米ドル(数十億円相当)規模の投資を行う予定です。
②Immutable Xとは?
次に、ゲームストップのNFTマーケットプレイスに採用された「Immutable X」について解説します。
2-1. Immutable Xの概要
Immutable Xは2018年創業のオーストラリアのImmutable社が開発を進める、NFTに特化したイーサリアムのレイヤー2ネットワークです。利用者拡大に伴う取引手数料の高騰や処理速度の遅延といった、イーサリアムの課題を解決するために開発されています。
Immutable社は、2019年に当時最高額の210 ETH(3万1,000米ドル相当)のセールス記録を打ち出して注目されたNFTトレーディングカードゲーム「Gods Unchained」の開発企業として有名です。Immutableは過去3回の資金調達で合計7,740万ドル(約88億円)をVCから集めており、2021年9月にCoinListで行われたトークンセールでは1,250億米ドルを超える資金を1時間で調達しました。
2-2. Immutable Xの特徴
①高セキュリティ環境での高速取引が可能
Immutable Xは、イスラエルのStarkWareとのパートナーシップにより開発されたゼロ知識証明ベースのスケーリングエンジンを採用しています。Immutable XにはVolitionという仕組みがあり、「Validium ZK-proof(プライベート)」か「ZK-Rollup(パブリック)」のどちらを使うかをクライアントが選択できます。
ZK-Rollupはレイヤー2上でのトランザクションをまとめ、状態変化のみをL1に記録することで、Immutable X上でのガス代をゼロとしながら最大秒間9,000トランザクション処理を実現します。ZK-Rollupはイーサリアムのセキュリティを活用できるため、不正・改ざんに対してより強い耐性を確保できます。
②ガス代が不要
Immutable Xの「ガス代ゼロ」は、状態変化をL1に記録する際にかかるガス代をImmutable Xが負担する形で実現します。ただし、インセンティブがゼロではImmutable Xのネットワークを維持できないため、プラットフォーム上のNFTの取引や販売に対して2%の手数料を課しています。つまり、この2%はImmutable Xを利用するためのベース手数料となります。その上でゲームストップなどのサードパーティが手数料を設置したり、NFT作成者がロイヤリティを追加することも可能です。
③NFTアプリケーションの構築が容易
Immutable Xは、REST APIを提供することでNFTアプリケーションの構築を円滑化しています。REST APIとは、Webシステムを外部から利用するためのプログラムの呼び出し規約(API)の一つです。Immutable XではNFT発行から取引、転送等をREST APIを使って呼び出すことによってより高速な処理が可能です。Immutable Xがガス代ゼロで利用できることと併せて、NFTの発行を効率化しています。
2-3. IMXトークンの役割
IMXとはImmutable Xの独自トークンのことで、IMXには固有のユーティリティが設定されています。
①手数料の支払い
Immutable Xでは、NFT取引に対して2%の手数料をIMXか購入時の通貨で徴収し、一部をステーキング報酬として還元する仕組みが組み込まれています。エンドユーザーは必ずしもウォレットにIMXを保有する必要はなく、背後で購入時の通貨をIMXにスワップする形で徴収されます。
②ステーキング
ユーザーが支払った手数料は、各ステーキング参加者の資産量に比例した毎月の報酬として配分されます。なおステーキング報酬の獲得には一定期間内のガバナンス投票への参加やNFTの保有、取引履歴などの条件が設定されています。
③ガバナンス
IMXトークンの保有者は、Immutable Xの運営に関するガバナンスに参加できます。ガバナンスはトークン準備金の配分方法、開発者助成金の投票、デイリーリワードの有効化、トークン供給量の変更などを提案・決定します。
③ゲームストップがImmutable Xを選んだ理由
リリースによると、ゲームストップにとってImmutable Xを採用することに大きく3つの利点があります。
1つ目は開発者にフレンドリーであること。イーサリアムのガス代高騰はゲームアイテム開発者にとって経済的に不自由な環境となっていました。2つ目はスケーラビリティとセキュリティを実現しながら、イーサリアムのユーザーベースにアクセスできることです。そして最後の1つは、Immutable Xが、NFTの作成・取引にかかる電力消費量に対するカーボンオフセットを約束している点です。
Immutable Xはイーサリアム・ネットワーク上での処理を削減してエネルギー消費を抑えつつ、カーボンクレジットを購入します。Immutable X により100%のカーボンニュートラルでありながら、より速く、より手頃な価格で利用可能なNFTマーケットプレイスを構築できるのです。
⑤まとめ
ゲームストップは、Immutable Xプロトコルをベースに構築することで、より高速且つ安価で、カーボンニュートラルな取引を可能にすると述べています。ゲームストップのNFTマーケットプレイスがローンチする今年後半には、Immutable X (IMX)の注目度はさらに高まることが予想されます。
国内で取り扱いのない仮想通貨IMXを購入するには、まず国内取引所でビットコインやイーサリアムを購入し、その後にバイナンスなどIMXを扱う取引所に仮想通貨を送付する必要があります。国内取引所としては多数の銘柄を取り扱うコインチェックや出庫手数料が無料のGMOコインの利用を検討してみることをおすすめします。
Coincheck(コインチェック)からビットコインを送金する方法を解説【Binance(バイナンス)でBTCアドレスを取得】
中島 翔
最新記事 by 中島 翔 (全て見る)
- 脱炭素に向けた補助金制度ー東京都・大阪府・千葉県の事例 - 2024年10月22日
- 韓国のカーボンニュートラル政策を解説 2050年に向けた取り組みとは? - 2024年10月7日
- NCCXの特徴と利用方法|ジャスミーが手掛けるカーボンクレジット取引所とは? - 2024年10月4日
- Xpansiv(エクスパンシブ)とは?世界最大の環境価値取引所の特徴と最新動向 - 2024年9月27日
- VCMIが発表したScope 3 Flexibility Claimとは?柔軟なカーボンクレジット活用法を解説 - 2024年9月27日