仮想通貨はなぜ価格の変動が大きいのか【仮想通貨取引所の元トレーダーが解説】

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今回は、仮想通貨の価格変動について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. 仮想通貨とは
    1-1.仮想通貨の概要と歴史
    1-2.仮想通貨の仕組み
  2. 仮想通貨の価格変動が大きい理由とは
    2-1.流動性の低さ
    2-2.裏付け資産が存在しない
    2-3.1日の値動きに対する上限が定められていない
    2-4.制度整備が完全でない
    2-5.市場がまだまだ成長期な状態
  3. まとめ

近年、暗号資産(仮想通貨)取引市場がますます注目を集めてきています。仮想通貨は他の金融商品と比べて価格変動が特に大きく、「ボラティリティが高い」と言われます。そのため、少ない元手で大きな利益を得ることもできれば、多大な損失を被ってしまう可能性も高い、投機性の高い商品となっています。仮想通貨取引においてリスクを最低限まで抑え、効率よく利益を上げるためには、まず仮想通貨の性質をしっかりと理解し、価格変動が発生する仕組みを知ることが重要です。

この記事では、仮想通貨の概要や仕組みを説明しながら、仮想通貨はなぜ価格の変動が大きいのかについて解説していきます。

①仮想通貨とは

1-1.仮想通貨の概要と歴史

仮想通貨とはインターネットを介して取引されるデジタル通貨で、ブロックチェーンテクノロジーを用いて管理されています。物理的な貨幣を持たず、主にインターネット上における送金または決済に利用されている仮想通貨は、世界中の仮想通貨取引所で法定通貨との取引に用いられています。仮想通貨は日本円やアメリカドルといった法定通貨とは異なり、国家に発行されていないことも特徴です。

仮想通貨が誕生したきっかけとなったのが、2008年10月に匿名のサトシ・ナカモトという人物が「ビットコイン(BTC)」についての論文をインターネット上で公開したことです。この論文は当時数多くの研究者や開発者にインスピレーションを与え、論文公開後の2009年1月にはビットコインの最初のマイニングが実施されました。そして2010年2月には、ビットコインの両替が可能な取引所が設立されました。2011年以降に急速にビットコインが世界中に広まり、派生した代替通貨(アルトコイン)が登場することになりました。その後、日本国内でも取引所が続々と設立され、仮想通貨に関する法制度も徐々に整備が進み、多くの投資家が仮想通貨投資に参入することとなりました。

1-2.仮想通貨の仕組み

仮想通貨は法定通貨とは異なる仕組みを有していますが、最も大きな違いとして、中央管理者が存在しない点が挙げられます。法定通貨は国家や銀行など、それを管理する中央集権的な組織が存在します。一方で仮想通貨にはこのような中央管理者が存在せず、ユーザー同士がダイレクトに取引できる「ピア・トゥー・ピア(P2P:Peer to Peer)」という仕組みを採っているため、仲介手数料などが発生せず、分散的な方法で管理が行われています。

また、仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンはインターネット上における分散型データ管理技術の一つとして注目を集めています。ブロックチェーンは、「ブロック」と呼ばれる塊にデータを格納し、それらを「チェーン(鎖)」のように繋げて保管するという仕組みです。ブロック毎に暗号データの連続性を持たせることで、改ざん耐性を高めています。分散ネットワークでデータを同期するため、単一コンピューター(ノード)がダウンしてもネットワークが稼働し続けることを特徴とします。

仮想通貨はブロックチェーンネットワークで流通することで、いつでも使用でき、ピアツーピアで安全で正確な取引を実現しています。

②仮想通貨の価格変動が大きい理由とは

仮想通貨は他の投資商品と比べて価格の変動が比較的大きいとされていますが、ここではその理由をいくつか解説していきます。

2-1.流動性の低さ

仮想通貨の価格変動を理解する上で最も大切な要素の一つに「流動性」があります。

仮想通貨の売買をしている投資家は、注文を入れた際にスムーズ且つスピーディに取引が成立することを望んでいますが、そのためにはマーケットにおける取引が活発に行われている必要があります。もし取引量が十分でない場合、投資家は自身の希望する額での売り手または買い手を見つけることができず、価格を調節しなければならなくなります。

つまり、ここで言う流動性とは、仮想通貨を安定して取引できるかどうかの度合いを表し、流動性が高ければ高いほど、投資家はスムーズな取引を行うことができるというわけです。しかし、仮想通貨市場は株やFXなどに比べてまだまだ取引量が少なく、流動性が十分でないため、大口取引が発生した場合などにはすぐに価格に影響が及んでしまい、簡単に大きな価格変動が発生してしまいます。

この問題を解消するため、分散型取引所(DEX)では「イールドファーミング」や「流動性マイニング」によって流動性を確保し、流動性提供者に対する報酬としてトークンを配布するなどといったマーケティング手法を採用しています。

2-2.裏付け資産が存在しない

法定通貨に連動するように設計されている「ステーブルコイン」を除き、一般的な仮想通貨は裏付け資産を有していません。そのため、マーケットにおける需要と供給のバランスをはじめとするあらゆる要因によって、価格が大きく変動するという特徴があります。

2-3.1日の値動きに対する上限が定められていない

代表的な投資商品として知られている株には、1日の値動きの幅に対する上限が定められており、これを「値幅制限」と呼びます。値幅制限の上限まで株価が上昇することを「ストップ高」と言い、反対に下限まで下落することを「ストップ安」と言います。このように、株式市場では値幅制限を設けることによって、株価が異常に急騰したり暴落したりする事態を防ぎ、投資家を莫大なリスクから守っています。

一方で仮想通貨市場にはこのような制限が設けられておらず、1日の価格の変動幅に対する上限が定められていないため、株よりも大幅な価格変動が発生することが少なくありません。

2-4.制度整備が完全でない

仮想通貨市場は近年の急速な発展と普及により、各方面における制度整備が追いついていないという現状があります。そのため、仮想通貨市場に対して良いニュースが報道された場合は価格が上昇し、反対に不利な制度が制定されたり、悪いニュースが報道されたりした場合、市場全体の価格が下落するという傾向にあります。

このように、仮想通貨に関する制度整備が完全でなく、世界各国が規制などについて模索している状況のため、価格が不安定になりやすいというわけです。

2-5.市場がまだまだ成長期な状態

仮想通貨市場は近年急速に発展しているとはいえ、市場はまだまだは発展途上とも言えるでしょう。そのため、株やFXなどのように、この状況ではこうするべきなどといった一定の取引戦略が確立されておらず、取引方法に関して手探りの部分が多い点が挙げられます。

また、ブロックチェーンゲームやNFTの登場により、仮想通貨は単なる投資としての意味合いだけでなく、一種のコンテンツとして受け入れられるようになってきています。そのため、これまで投資経験のなかった初心者たちが多数参入しているほか、株やFXに比べてプロのトレーダーが極端に少ないため、取引のセオリーがなく、価格が変動しやすい状況となっています。

ここ数年では機関投資家の参入や先物市場、オプション市場が出来上がってきているため、プロの投資家も参入しやすいマーケットになってきています。

③まとめ

仮想通貨は流動性に大きく左右されることや、市場自体が萌芽期にあるなどといった理由から、価格の変動が比較的大きくなっています。価格の変動が大きいということは、少ない元手で大きな利益を挙げられる可能性がある一方で、大きな損害を被るリスクもあるため、取引を行う際はそのことをしっかりと理解しておく必要があります。

仮想通貨は他の投資商品と比べてより少額から始めることができるほか、仮想通貨関連のコンテンツも多数リリースされているため、興味のある方は仮想通貨取引所で口座を開設し、仮想通貨の世界に触れてみることをおすすめします。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12