世界のヘッジファンドの仮想通貨投資の現状【今後の運用資産の見通し・伝統的ファンドの見解まで網羅】

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今回は、仮想通貨ヘッジファンドについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. ヘッジファンドに関する基礎知識
    1-1.ヘッジファンドとは?
    1-2.代表的なヘッジファンド
  2. ヘッジファンドによる仮想通貨への見解
    2-1.Bridgewater Associatesのレイ・ダリオ
    2-2.Soros Fund Managementのジョージ・ソロス
    2-3.ヘッジファンドが投資している仮想通貨は?
  3. 仮想通貨への投資が進むヘッジファンド
  4. まとめ

その運用額の大きさから世界の金融市場に大きな影響を及ぼす組織がヘッジファンドと呼ばれる投資運用組織です。ヘッジファンドは伝統的なアセットクラスに対しての投資を続けてきましたが、近年は仮想通貨への投資額が増えてきています。また今後、ますますヘッジファンドの仮想通貨市場に対する影響は増える一方だと思われるため、今回は世界のヘッジファンドと仮想通貨の関係について解説します。

①ヘッジファンドに関する基礎知識

まずはじめに、ヘッジファンドそのものに関する基礎的な事項について解説します。

1-1. ヘッジファンドとは?

「ヘッジファンド」とは、顧客の資産を預かって証券、通貨、商品等に対する積極的な投資・裁定取引を行って利益を返すことを生業とする私的な投資会社・パートナーシップの総称として使われている言葉です。

実際は「ヘッジファンド」を正確に定義することは困難ですが、バーゼル銀行監督委員会の報告書によると、その定義の難解さを認識しつつ、ヘッジファンド等の「ハイレバレッジ機関」の特徴として、以下の3点を挙げています。

  1. 政府や監督機関から直接的な規制・監督をほとんど受けていないこと
  2. 規制対象金融機関や上場会社に比べ、ディスクロージャー義務が極めて限られていること
  3. 資金運用の際のレバレッジが高いこと

その上で同報告書は、レバレッジが高いことにより市場価格の大幅な変動に対するエクスポージャーが大きくなり、他の市場参加者にとっての大きなカウンターパーティー・リスクになると述べています。例えば世界最大のヘッジファンドとされるBridgewater Associatesは、10兆円以上の運用額を扱っています。

1-2. 代表的なヘッジファンド

次に世界的なヘッジファンドの運用残高ランキングトップ10をペンション&インベストメンツのデータに基づきご紹介します。

1 Bridgewater Associates  $105,700
2 Man Group $76,800
3 Renaissance Technologies $58,000
4 Millennium Mgmt $52,314
5 TCI Fund Mgmt $40,000
6 D.E. Shaw Group $39,738
7 Two Sigma Investments/Advisers $39,550
8 Farallon Capital Mgmt $38,100
9 Citadel $37,630
10 Davidson Kempner Capital Mgmt $37,350
※順に、順位・ヘッジファンド名・運用残高(万ドル)

②ヘッジファンドによる仮想通貨への見解

最近は多くの有名ヘッジファンドマネージャーが仮想通貨に対する前向きな見解を発表しているので、代表的なものをご紹介します。

2-1. Bridgewater Associatesのレイ・ダリオ

21年5月にはブリッジウォーター・アソシエーツ(Bridgewater Associates)の創設者で富豪のレイ・ダリオ(Ray Dalio)氏がビットコインをいくらか保有していることを明かにしました。「インフレ防衛策として債券よりもビットコインを選ぶ」との考えも示し、去年の段階では懐疑的な見方を示していた彼の転換は他のヘッジファンドマネージャーに対する影響も大きいようです。

一方で「ビットコインにとって最大のリスクはその成功だと思う」とし、投資家の需要急増は規制強化を招く可能性が高いと警戒感も示しています。実際にビットコイン投資家は増加しており、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの間、個人投資家から機関投資家まで多くの投資家が長期的なインフレ懸念への妥当な備えとして、仮想通貨を選好するようになってきています。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレー、テスラなども相次いでビットコイン関連サービスを発表したました。ダリオのインタビューが流れた24日にはビットコイン価格は約3万7775ドルと1日で11%上昇しました。

2-2. Soros Fund Managementのジョージ・ソロス

また、7月には伝説のヘッジファンドマネージャーであるジョージ・ソロス(Gorge Soros)氏が設立したソロス・ファンド・マネジメント(Soros Fund Management)社もビットコインなどの仮想通貨取引を開始したことが判明しました。

Soros Fund Managementは主に多額の資産を有するファミリーオフィスの顧客にサービスを提供していますが、同ファンドは21年3月、仮想通貨への投資やカストディ事業を手がける米NYDIG社の2億ドルの資金調達ラウンドに参加、直接的な仮想通貨への投資だけではなく、関連事業への投資も行っています。

2-3. ヘッジファンドが投資している仮想通貨は?

次にヘッジファンドがどのような仮想通貨に投資をしているのかという点についてPwCの調査結果を基に解説します。

仮想通貨に特化したヘッジファンドのうちビットコインを取引しているファンドは92%で、1日の取引量の半分以上をビットコインが占めると回答したのは56%、そのうち15%はビットコイン取引に限定したファンドであるとされています。

一方、ステーブルコインを除く1日の取引量が上位を占めるアルトコインと割合は次の通りです。

  1. イーサリアム(ETH):67%
  2. ライトコイン(LTC):34%
  3. チェーンリンク(LINK):30%
  4. ポルカドット(DOT):28%
  5. ライトコイン(LTC):34%
  6. アーベ(AAVE):27%

また、ヘッジファンドの31%がDeFiを利用し、中でもUniswapが15.7%と最も広く利用されており、続く1inchが7.9%、SushiSwapは4.5%、Balancerは3.4%、Curveが2.2%という結果となっています。

③仮想通貨への投資が進むヘッジファンド

最後に今後の仮想通貨市場においてヘッジファンドがどのような動きをするのかという点について解説します。

ファンド管理サービスを提供するIntertrustによると、ヘッジファンドは5年以内に資産の7.2%を暗号資産で保有するようになるだろうとされています。7.2%という数値はヘッジファンド全体で約3,120億ドル(約34兆4,000億円)に相当するとの事です。

調査対象となったファンドは平均72億ドルの資産を管理し、回答者のうち17%が2026年には運用資産の10%以上を仮想通貨に割り当てるようになると考えているとしています。また、北米のファンドは資産の10.6%を仮想通貨に配分し、イギリスやヨーロッパのファンドに関しては資産の6.8%を仮想通貨に配分するとしています、

先述のPwCのレポートは仮想通貨投資に特化していない「伝統的な」ヘッジファンドについての調査結果もまとめており、既にこれらのヘッジファンドの21%が総資産の平均3%を仮想通貨に投資しています。その85%以上が2021年末までにさらに資金を投入する意向を示しています。一方、仮想通貨に投資をしていないファンドの26%は「投資を計画、もしくは検討の最終段階にある」としていますが、投資を躊躇している理由として、「規制の不確実性」が82%、「仮想通貨に対する知識が十分でない」が64%となっています。

④まとめ

このようにヘッジファンドを始めとする機関投資家の仮想通貨市場への進出は、市場そのものの時価総額の向上と同時に、マーケットの動き方に関しても変化を起こすと考えられます。特に株や為替市場と比較しても時価総額の小さな仮想通貨市場にこのような大手のヘッジファンドがポートフォリオの一部として投資を始めてくると、仮想通貨市場には価格上昇圧力として大きな影響を及ぼすでしょう。ヘッジファンドのような巨大な資金力を持ったプレイヤーの動き方を知る事は、個人のトレーダーにとっても非常に大切なことであるため別の機会にヘッジファンドの投資方法について解説したいと思います。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12