証券会社を経て、暗号資産(仮想通貨)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。
目次
今年に入って、暗号資産FXに挑戦したいというユーザーが増えてきています。これはコロナショックにより将来を不安視した若い世代が増えてきている証拠であり、結果的に政府が推進する「貯蓄から投資へ」の流れが加速しているとも言えるでしょう。
初心者にとって最初に勉強したいのが「テクニカル分析」でしょう。ここでは相場分析に必須となるテクニカル分析の基礎として、「チャートパターンの代表的な形状」をご紹介したいと思います。
それぞれの形状には投資家の心理的背景が反映されています。そうした点まで理解すると有意義です。これは暗号資産に限らず、FX(外国為替証拠金取引)でも株式でもゴールドなどの商品市場でも一緒なので、基本的な知識として捉えて覚えておきましょう。
①三尊(逆三尊)
最初にご紹介するのは、チャートパターンの代表的な形状でもある「三尊(逆三尊)」です。英語で「ヘッドアンドショルダー(逆ヘッドアンドショルダー)」と呼ばれています。
ヘッドアンドショルダー(逆ヘッドアンドショルダー)が現れるタイミングは、チャートの天井付近か大底付近です。つまりトレンドの変わり目に発生しやすいと言えます。
下図は、ビットコイン円の日足チャートで「逆三尊」の例であり、下落トレンドが上昇トレンドに転じる場面について解説します。
- 下落後に一旦反発して「左ショルダー」を形成しています。
- 再度下攻めを行い「ヘッド」を形成、下落トレンド継続とマーケットが判断した格好となります。「左ショルダー」の安値をブレイクし、改めて安値を更新しますが、再び反発します。
- 出来高が低下して「左ショルダー」と同じ位置で上方向の勢いを失い、「右ショルダー」を形成します。ここで「下落トレンドは終了」とみなした投資家が反転ロング方向でポジションを取り始めたため、反発しています。左ショルダーから反発した高値(850,000円)を超えた段階で、「トレンド反転」とみなすことができ、上昇トレンドに入ります。
トレーダーの心理的背景を推察するときに、「2、ヘッド」の部分の動きが重要です。ここで安値を更新したものの、すぐに大陽線をつけて反発しています。このタイミングで「ショート」を仕掛けているトレーダーに不安な心理が芽生えるのは予想しやすいと思います。
そして再度下落してもなかなか安値を更新せず、反発後に高値を更新すると、「一旦はポジションを閉じておこう」という心理になるでしょう。
これが「逆三尊」を作り出している背景です。「3、右ショルダー」を形成した後、850,000円の高値を更新すると、そのラインがサポートとなって支えられているのがわかると思います。
レジスタンスラインを突破すると、以前のレジスタンスラインはその後のサポートラインに転じます。これも重要なポイントです。
参考までに「三尊」のパターンのチャートも載せておきます。こちらは、上昇トレンドが下降トレンドに転じているケースです。
②二番底(二番天井)、三番底(三番天井)
二番底(二番天井)、三番底(三番天井)は英語で「ダブルボトム(トップ)、トリプルボトム(トップ)」と呼ばれます。これらもまた、トレンドの変わり目に発生しやすいチャートパターンです。実際のビットコイン円チャートで説明します。
上図の二番底のチャートパターンに即して、トレーダーは以下のように行動していると分析できます。
- 下落トレンドの最中、水色の○印の位置で反発しています。
- 下落トレンド中のため「戻り売り」が集中し、改めて下攻めを開始します。
- 水色の○印の位置へ再度下落し、安値更新するかどうかの攻防を経て、大陽線で反発しています。
- 高値をブレイクして、上昇トレンドへの反転が確定しました。
同じ価格帯で下落が止まったことよりも「高値更新で上昇へ転換」するタイミングの方が重要です。その後、上昇が継続していることから、二番底でトレンドが転換したことが理解できます。
次に三番底の例です。下図はビットコイン円の1時間足です。
上図も同様に、青色の水平線を超えて上昇トレンドに転じたと判断できます。二番底と考え方は同じですが、三番底の方が、二番底より明確に反転したと考えられます。
このような「反転の兆し」を示すチャート形状はとても重要です。しっかりと理解しましょう。
③三角保ち合い(トライアングル)
三角保ち合い(トライアングル)はトレンド継続の時間調整のタイミングで発生しやすいパターンです。保ち合いを抜けると、トレンドを継続しやすいと考えられます。
早速、実例を見てみましょう。下図はビットコインの4時間足チャートです。上昇トレンドの最中で発生した三角保ち合いとなります。
三角保ち合いとは、トレンド中の時間調整のような状況であり、上下どちらにも攻めきれず、値幅が収斂していく動きを示します。背後では、「上に行く」と思うトレーダーと「下に行く」と思うトレーダーが拮抗している状況です。
三角保ち合いの状況では、サポートラインあたりで「ロングポジション(買い持ち)」が作られ、レジスタンスラインあたりで「ショートポジション(売り持ち)」が作られます。三角保ち合いが長引くほど、両サイドのポジション量は蓄積されます。
そして、どちらかにブレイクすると反対サイドのポジションでストップロス(損切)注文が発動するため、大きく動きやすくなります。上図の場合、上昇トレンド中に三角保ち合いの時間調整が入り、トレンドと同様の方向にブレイクしたため改めてトレンドが継続するという動きになりました。
覚えて頂きたいことは、ブレイク時に「トレンドに逆らう方向のポジションを取らない」ことです。今回は上昇トレンド中の三角保ち合いでしたが、仮に下方向にブレイクしていたとしても、「ショートポジション」を取らない方がいいということです。
利益を出すためには少しでも可能性が高いトレードをすることが重要です。基本となるトレンドと同じ方向にブレイクした場合は、ついていくポジションを取ることは妥当です。しかし、逆方向であれば一旦は見送る判断が適切となります。
三角保ち合いは視覚的に理解しやすく、ブレイクした段階で迂闊にエントリーしたくなりますが、控えるようにしましょう。
③チャートパターンは聖杯ではない
今回ご紹介した3つは、投資家としては必ず覚えておくべきチャートパターンの代表格です。これらは必ず押さえておくようにしましょう。
しかし、当然ながら必ずセオリー通りに動くわけではありません。例えば下図をご覧下さい。
こちらのチャートはビットコイン円の日足チャートです。紫の○印をご覧いただくと二番天井を形成しています。そしてネックラインを下抜けする動きを見せますが、結果的に反発しており「騙し」となっています。
このようにチャートパターンのみで勝てるほどマーケットは甘くありません。特に暗号資産の世界は流動性が低いため上下の値幅(ボラティリティ)が大きく、騙しも発生しやすい特徴があります。
そのため、オシレーター等を併用して総合的に判断することが望ましいでしょう。しかし、まずは3つのパターンを理解するところから始めてみてください。
テクニカル分析はトレーダーによって千差万別です。今回画像で利用したGMOコインは「TradingView」と呼ばれる、世界中のトレーダーが愛用しているツールを導入しており、分析指標は豊富に揃っています。是非一度利用してみてください。
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中島 翔
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