今回は、押し目買いについて、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
暗号資産(仮想通貨)市場は2020年後半から上昇の一途を辿ってきましたが、ここへきて足元急落する動きも見せています。
1月10~11日にかけてビットコインは最大26%下落しており、最大1万ドル近い下落幅はこれまで経験したことのない程大きいものです。リスクコントロールに苦戦を強いられたトレーダーも多いことでしょう。
ダウ理論によると、長期的な上昇トレンド中でも、短・中期的に見ると下降トレンドを迎える局面があります。投資家としては不用意な取引を避け、押し目を狙って保有量を増やしたいところです。
特にビットコインは2万ドルという過去最高値を突破しており、上値の目処がなくなっている状況です。投資家としてはどこかで積極的に買っていきたいものの、購入のタイミングが判断できずに悩んでいる方も多いと思います。
そこで、ここでは押し目のタイミングを測るための手段を解説したいと思います
①フィボナッチリトレースメント
フィボナッチリトレースメントとは、レオナルド・フィボナッチという数学者が発見したフィボナッチ数列に基づいたインジケーターです。
フィボナッチ数列は、前の二つの数字の和を並べた数列(1, 1, 2, 3, 5, 8…)のことで、数列の連続する項は、最も美しい比とされる黄金比に近い値となっています。黄金比率は自然界で数多く存在し、人間が好む形とされ、FXのチャート分析にも応用されています。
フィボナッチ・リトレースメントは一時的な上げ止まりや下げ止まりを予想するために、フィボナッチ数列から導き出される「23・6%」「38・2%」「61・8%」「76・4%」といった数値を重視します。実際にこれらの比率が抵抗帯や支持帯として働くことが多いからです。例として下記のチャートをご覧ください。
上記チャートはGMOコインのイーサリアム円の1時間足チャートです。2020年12月の安値から1月につけた高値でフィボナッチリトレースメントのラインを引くと、自動的に数列に応じた価格水準が現れてきます。チャートをよく見ると、結果的にラインが引かれた水準で下落や上昇が止まっている場面が見つかるでしょう。
このようにフィボナチリトレースメントは、自然界から導き出された数列を、価格分析の一つの指標として活用しています。こうした指標は絶対的なものではありませんが、結果的に値動きが収束しやすいポイントとして多くのトレーダーが意識します。
つまり、高値と思ったラインから事前にフィボナッチリトレースメントを先に引いておくと、下落時に意識すべき反発ポイントの見通しが立ちます。フィボナッチで特に重要なのは0.382%(3分の1戻し)、0.50%(半値戻し)、0.618%(3分の2戻し)という3つの水準が重要となります。利用する際は、これら3つのラインを意識してみてください。
②ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドは標準偏差を1本のラインで表し、標準偏差の範囲内で価格が収束する傾向を利用して、値動きを予想する指標です。
これはトレンドフォロー型のテクニカル指標となっており、逆張りで利用する方もいますが、逆張りは暗号資産FXの初心者は控えた方がいいでしょう。それでは実際にどのように表示されるのか確認したいと思います。
上記は先ほどと同様にGMOコインのイーサリアム円の日足チャートです。
チャート上で複数のラインが引かれ、束になっているように見える部分がボリンジャーバンドです。中央のラインが「中心線」と呼ばれ、中心線を起点に1つ目のラインが「1σ」、2つ目は「2σ」、次に「3σ」となります。ボリンジャーバンドのそれぞれの範囲内に収まる確率は下記の通りです。
- ボリンジャーバンドの±1σの範囲内に収まる確率・・・約68.3%
- ボリンジャーバンドの±2σの範囲内に収まる確率・・・約95.4%
- ボリンジャーバンドの±3σの範囲内に収まる確率・・・約99.7%
ボリンジャーバンドには4σや5σもありますが、3σを最大値として使用するトレーダーが多くなっています。
押し目を測る際のボリンジャーバンドのシンプルな使い方は、価格変動によってチャートが「3σ」まで到達したら、「2σ」か「1σ」、もしくは中心線あたりが押し目のラインとなります。そこから上昇しそうな気配を見せたら「トレンドフォロー」でついて行くと良いでしょう。
上記のチャートを見ると、中心線あたりでヒゲを作り、下げ止まっています。これは重要なポイントです。
つまり、ボリンジャーバンドやフィボナッチリトレースメントで「ヒゲ」となりそうな位置のあたりをつけておき、指値を入れておくことで有利なポジションを構築する確率を高めることができます。暗号資産で勝率を上げる上で良い戦略と、筆者は考えています。
③移動平均線
押し目の測り方として、最後にご紹介するのは「移動平均線」です。移動平均線は、設定日数の過去平均値を表しており、将来価格は移動平均線に収斂しやすいとされています。
移動平均線は基本的なテクニカル指標であり、多くの投資家がチェックしているので非常に重要です。それでは実際のチャートを見てみましょう。
上記はGMOコインのイーサリアム円の日足チャートです。
移動平均線は「指数平滑移動平均線」という種類で、62日と200日の2つの移動平均線を表示しています。指数平滑移動平均線は、直近の値動きに重きをおいて計算しており、単純移動平均線とは若干異なります。指数平滑移動平均線(EMA)を推奨する理由は、直近の値動きの方が重要と考えるからです。
上記のチャートを見ると、イーサリアムの押し目となる位置は「62日指数平滑移動平均線(青)」付近となります。
暗号資産の値動きの大きさは、トレーダーから見るとメリットの一つです。当然、過度な値動きはリスクと表裏一体ですが、価格は大きく動くと結局大きく戻す傾向があります。例えば、毎日朝起きて価格をチェックし、上記のように移動平均線から乖離していたら、指値を入れておき、大口に売り込まれた時にポジションを持てるようにすると利益を出しやすくなります。
④押し目買いは焦らず少額から
最後に、現在のビットコインのように押し目(下落)を狙ってエントリーする場合、長期的な上昇トレンドの中で短期的な下落トレンドで仕掛けることになります。
つまり、実際に押し目で下落が止まるかどうかはわかりません。そこで大事なポイントが「リスクコントロール」です。複数に分けて買い注文を入れるというのも、リスクを抑えるトレード方法の一つです。
これは横軸の時間分散という考え方に基づいており、筆者も取り入れているリスクコントロール方法です。トレードで重要なことは、ギャンブル的な手段で大きく利益を上げることではありません。リスクコントロールを徹底することで、安定したリターンを得ることが重要です。
押し目の判断は上記のどの手法を使うかでも異なり、併用してみると見方が変化するものです。是非いろいろと試しながら、ビットコインやイーサリアムの様々な場面でどれが機能しているのか、自分自身で探ってみてください。トレードのスタイルや時間軸でも、選択する指標は異なってきます。日足で利用するものと、1時間足チャートで利用するもの等、分けて見るのも良いでしょう。
暗号資産の将来性に期待する投資家は皆、どこかで仕込んでいきたいと考えています。チャンスを逃さないように色々チェックするようにしましょう。
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中島 翔
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