コカ・コーラがブロックチェーンで「使用済みペットボトル」のリサイクル実証実験を開始

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「環境対策」は今や国際的な焦点となり、企業には前向きな行動が求められています。その一環として、「プラスチックのリサイクル」の推進に向けて、ブロックチェーンの活用が注目されています。この技術を活用し、新たな挑戦を行うのがコカ・コーラボトラーズジャパンです。彼らは東京都内のファミリーマートを舞台に、「使用済みペットボトルのリサイクル」に関する実証実験を始めました。本記事では、コカ・コーラボトラーズジャパンの取り組みと、ブロックチェーンを活用することで生まれる資源循環の新たな可能性について解説します。

目次

  1. コカ・コーラのブロックチェーンPETリサイクルとは
    1-1.実証実験の手順
    1-2.2022年9月〜11月の実験結果
    1-3.回収量向上を目指すアプリ
  2. 「BLUE Plastics」とは
  3. プラスチック食品容器製造・販売を行う企業の廃プラのトレーサビリティとは
    3-1.DIC株式会社の廃プラスチックのトレーサビリティ
    3-2.Green Token by SAPのGreenTokenシステム
  4. 海外でのブロックチェーンでプラスチックリサイクル実現へ
  5. ノルウェーの成功事例、ペットボトルのリサイクルシステム
  6. まとめ

①コカ・コーラのブロックチェーンPETリサイクルとは

まず、「コカ・コーラのブロックチェーンによるPETリサイクル」とは何でしょうか。この実証実験は、東京都内のファミリーマートにて行われ、旭化成、ファミリーマート、伊藤忠商事、伊藤忠プラスチックス(CIPS)もこのプロジェクトに参画しています。

この実験は、「BLUE Plastics(ブルー・プラスチックス:Blockchain Loop to Unlock the value of the circular Economy)」というプロジェクトの一部として行われます。このプロジェクトは旭化成が主導し、資源循環社会の実現に向けたデジタルプラットフォームを開発するというものです。また、このプロジェクトのトレーサビリティ(追跡可能性)システムには、日本IBMのブロックチェーン技術が導入されています。

今回の実証実験は、6月15日から8月31日までの約2ヶ月間、ファミリーマートの秋葉原富⼠ソフトビル店、三軒茶屋東店、⼭王⼤森駅前店の3店舗で行われます。

1-1.実証実験の手順

では、具体的な実験の流れはどのようなものでしょうか。

まず、参加者には自身の「使用済みペットボトル」を特設の回収箱に投入してもらいます。その後、回収箱に記載された二次元コードをスマートフォンでスキャンし、投入したペットボトルの本数を専用のWebアプリ上で登録します。そして、そのペットボトルがどこでどのようにリサイクル素材や製品へと加工されるまでを、Webアプリ上の地図で追跡することが可能になります。

この実証実験を通じて、コカ・コーラを始めとする関連企業は、アプリの稼働状況、消費者の行動パターンの変化、そして再生プラスチックへの関心増加などの影響を検証します。

1-2.2022年9月〜11月の実験結果

昨年度も、旭化成、ファミリーマート、伊藤忠商事、CIPSの4社は同様の実証実験を行いました。それは9月から11月の期間に東京都葛飾区のファミリーマートで行われ、実店舗で初めてブロックチェーン技術を活用した追跡可能性の実験でした。

その結果は、期待以上のものでした。特に注目すべきは、スマートフォンアプリの利用により、ペットボトルの回収量が通常の2倍以上に増えたことです。さらに、回収されたボトルの品質(洗浄やラベル除去など)も大幅に向上したとのことです。

前回の実証実験では、リサイクル企業までの追跡がメインでした。しかしこの度、コカ・コーラボトラーズジャパンの参画により、ペットボトルが再び製品になるまでのプロセスを追跡することが可能となりました。これにより、参加者は自分が投入したペットボトルがどのように再生されているのかを確認でき、自分が環境に対して何か良いことをしているという実感を得ることができます。

1-3.回収量向上を目指すアプリ

今回の実証実験では、アプリのアップデートが行われ、リサイクルの効果を参加者がより実感できるような工夫が施されています。それは、回収されたペットボトルの質と量の向上を目指すという観点から考えられたものです。

アップデートされた機能の中には、「自身が投入したペットボトルの追跡」、「個人の活動成果の表示(投入したボトルの本数や投入回数、リサイクルによるCO2削減量など)」、「ペットボトルを投入するとアプリ内の植物が成長する」といったものがあります。

さらに新たに、「各店舗や参加者全体のペットボトル投入数ランキング」、「回収されたペットボトルのリサイクル状況を地図上で確認する」、「クイズや動画などを通じてリサイクルの知識を提供する」といった機能が追加されています。

ペットボトル投入ランキングは、リサイクル活動をゲーム感覚で楽しむことができ、また自分の努力を見える化することが可能です。その他の新機能を通じて、参加者同士の一体感や理解の深化を促進し、消費者の参加意欲を高めることが期待されています。

②「BLUE Plastics」とは

「BLUE Plastics」は、2021年5月に始まったプロジェクトで、デジタルプラットフォームのプロトタイプを作成しています。以下に、その3つの主な特徴を説明します。

1) ブロックチェーンによる認証でリサイクル証明を担保
再生プラスチックのリサイクル率を証明するために、日本IBMのブロックチェーン技術を活用します。具体的には、消費者はスマートフォンのカメラで再生プラスチック製品に貼られたQRコードなどを読み取ることで、再生プラスチックのリサイクル率を確認できます。

2) リサイクルチェーンの可視化により消費者の安心感を醸成
製品のQRコードを読み取ることで、リサイクルチェーンとその参加者(プレイヤー)をさかのぼって確認できます。データはブロックチェーンで管理され、来歴の透明性を確保することで、消費者の信頼感を強化します。

3) 消費者のリサイクル行動の変容を促す仕組みづくり
リサイクル行動にポイントを付与することで、消費者の行動を変化させることを目指します。具体的な手段としては、実証実験や社会実装を通じて効果的な仕組みを開発し、新しいリサイクル文化の創出を目指します。

これらの特徴を通じて、BLUE Plasticsプロジェクトは再生プラスチックの使用率の確認、リサイクルチェーンの可視化、そして消費者の行動変容を促す仕組みを構築し、消費者を含む全体的なリサイクル文化の創造を目指しています。

③プラスチック食品容器製造・販売を行う企業の廃プラのトレーサビリティとは

コカ・コーラボトラーズジャパンなどの企業が、自社から発生する再生可能な廃棄物の追跡(トレーサビリティ)を試みています。これはリサイクル率を高めるための一環で、ブロックチェーンを活用したシステムが次々と導入されています。

3-1.DIC株式会社の廃プラスチックのトレーサビリティ


一例として、2022年7月にDIC株式会社は、プラスチックの資源循環を促進するための実証実験を始めました。SAPとの連携により、ブロックチェーン技術を活用した廃プラスチックのトレーサビリティシステムの構築を進めています。DIC社は食品容器など様々な用途に用いられる合成樹脂、ポリスチレンの製造・販売を手がけています。

プラスチックは廃棄後も長い年月をかけて自然に分解されます。しかし、微細なパーツまで分解されると海洋環境に影響を及ぼし、最終的には海洋生物の体内に蓄積されることが明らかにされています。このような問題を受け、一部企業ではプラスチックストローを紙製に変更するなど、プラスチック使用量削減の動きが見られます。

その一方でDIC社は、食品パッケージ市場という注力分野における循環型社会の実現を目指しています。2020年11月には、パートナー企業と共同でポリスチレンの完全循環型リサイクルに取り組む計画を発表しました。両社が持つ技術やリサイクルシステムを活用し、新たなモデルを提唱しています。

この新モデルでは、マテリアルリサイクルに適していない市場回収品を再生するためにケミカルリサイクル技術を用いて、ポリスチレンを原料であるスチレンモノマーに還元します。これは完全な循環型リサイクルの実現を目指したものです。また、サステナビリティへの注目が高まる中、プラスチック素材のリサイクル需要が増し、リサイクル原料の出自や含有物質の情報が必要とされています。

3-2.Green Token by SAPのGreenTokenシステム

DIC株式会社は実証実験においてSAPのGreenTokenシステムを用いています。これにより、生産初期段階からサプライチェーンに沿って原材料を追跡し、リサイクル原料の製造工程や検査工程、物性情報や品質情報を可視化することを目指しています。SAPは、そのグローバルネットワークを活用して、社会に対してポジティブな貢献を行っている企業です。

GreenTokenはプライベートブロックチェーン技術を駆使し、プラスチック素材の原材料から製品の製造・販売・使用、回収、粉砕、再利用までを追跡し、サプライチェーンの透明性を高めます。つまり、資源ライフサイクルの全過程を追跡するシステムなのです。

さらに、GreenTokenシステムではデジタルツイン技術を導入しています。原材料の属性や、カーボンフットプリント、市場回収品の出自、サステナビリティ認証データなどの情報をトークンに記録します。これにより、リサイクル原料が他の原材料と混合され、新たな製品が生産された場合でも、そのリサイクル原料を正確に追跡することが可能になります。

④海外でのブロックチェーンでプラスチックリサイクル実現へ

日本国内だけでなく、海外でもブロックチェーンを用いたプラスチックリサイクルの取り組みが進行しています。ノルウェーの首都オスロで活動するスタートアップEmpowerは、「プラスチック・ポジティブ」という理念のもと、様々な活動を展開しています。

Empowerが提供するシステムは、地域の人々にプラスチックごみを回収してもらう代わりにデジタルトークンを付与します。そして、そのプラスチックごみが回収後にどのように再利用されるのかまでを、ブロックチェーン技術により追跡可能にしています。この企業は2018年に設立され、2020年現在では多くのプラスチック廃棄物収集業者、廃棄物管理会社、リサイクルプラスチック製造業者などと提携。ヨーロッパ、アジア、アフリカなど世界15か国でシステムの試験運用を行っています。

Empowerの取り組みは誰でも参加可能です。たとえば、オスロやカンボジア、ポルトガルなどの国の人々は、海岸沿いに捨てられたペットボトルやおもちゃなどのプラスチック製品を集め、それを地域のリサイクルステーションに持ち込みます。その際、回収したプラスチック製品の重さに応じて15~30セント程度のデジタルトークンが即時に付与されます。

このシステムが提供する現地通貨を得るというインセンティブにより、地域の人々は積極的にプラスチックごみを回収します。これは貧困に陥っている人々にとっても、些かの援助となっています。

Instagram

引用:@empowerplastic

⑤ノルウェーの成功事例、ペットボトルのリサイクルシステム

Empowerの本拠地であるノルウェーでは、ペットボトルのリサイクルシステムが既に確立されています。ノルウェーで販売されるペットボトルの97%は、スーパーマーケットなどに設置された回収ボックスに戻され、リサイクルされています。これはペットボトルの価格に少額のデポジット(保証金)が上乗せされており、それが回収ボックスに返却した際に返ってくる仕組みとなっているからです。

先進国ではペットボトルのリサイクルに関するシステムが導入されていますが、ノルウェーのリサイクル率は特に高いです。その背景には、プラスチック製造・販売業者に課される環境税があります。全国のリサイクル率が95%を超えるとこの環境税が免除されるため、事業者は自社のリサイクルへの取り組みを強化しています。

しかし、ペットボトル以外のプラスチックのリサイクルは、ノルウェーでもまだ十分に進んでいないとのことです。分別されてリサイクルされると思われていたプラスチックが、実際には焼却されるだけというケースも存在します。このような問題の解決は、リサイクル技術のさらなる発展によって実現されると考えられます。

⑥まとめ

プラスチックは我々の生活にとって不可欠な素材です。地球環境を悪化させないためにも、廃プラスチックのリサイクル技術は今後さらに進化することが期待されます。そして、消費者が企業や団体が提供するリサイクル方法を積極的に利用することが、未来の環境に対する貢献となるでしょう。

企業が提案する新しいリサイクル方法はこれからも増えていくと思われます。そこで、この問題に興味を持つ方は、例えばコカ・コーラの実証実験など、各企業の取り組みを追ってみると良いでしょう。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。