ブロックチェーンで何が変わる?金融領域のユースケースとは

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ブロックチェーンと仮想通貨には密接なつながりがある。しかし、デジタル通貨としてビットコインを機能させるために考案されたブロックチェーン技術は今、ビットコインから注目をされる存在となっている。2018年以降の仮想通貨市場の下落相場を受け、多くの投資家が仮想通貨とブロックチェーンに興味を失い去っていたが、その一方でブロックチェーンはKYC(本人確認)プロセス・資産運用管理・保険金請求・貿易金融など金融領域での利用に向け着実に歩みを進めている。

KYC

KYCは、銀行で口座開設をする際の本人確認をするための一連の手続きを指す。KYCの目的は、架空の人物や法人が口座開設し、マネーロンダリングなどの不正利用を防ぐことだ。従来のKYCでは、顧客が金融機関に新規口座を開設する度に、文書をやり取りする必要がある。

このKYCプロセスにブロックチェーンを導入すると、本人確認手続きに必要な個人情報を複数の金融機関で共有することが可能になる。改ざん耐性が高く、透明性の高いブロックチェーンの特徴を活用し、個人情報を安全に管理できるようになるため、金融機関はKYC業務に必要となる人員コストを削減することができる。

国内では、金融庁と日本銀行の監修の元で「FinTech実証実験ハブ」を活用してみずほや三井住友、三菱UFJ、デロイトが実証実験を先導した。また、2017年7月から2018年3月の間で「ブロックチェーン技術を活用した本人確認(KYC)高度化プラットフォーム構築の実証」も実施されている。

資産運用管理

資産運用管理においても、従来の取引処理への利用が考えられている。これまでは資産運用会社が取引ごとに一つの記録を保持していたため、新たに金融商品が開発され取引される度に手動で記録を行う必要があった。

こうした資産運用管理が行われるため、必然とプロセスは複雑になる。複雑化した作業を処理するために企業は人材を増員するものの、人員増加に比例してコストは上昇し、さらには人為的なミスが増えるというジレンマを抱えていた。

この問題は、取引情報を管理するために必要な企業間連携の不足、または情報を安全に管理する第三者・手法が存在しないために生じていたものだ。ブロックチェーンが導入されることで、透明性を維持しながら安全に取引を記録することができ、資産運用管理のプロセスは合理化・自動化することが可能だ。

保険金請求

保険金請求の業務では、保険会社は損害の発生から保険会社の支払いに至るまでに、損害発生の検証、保険証券の発行、補償内容の確認、また場合によってはクレーム受付の代理店などについて、複数企業との情報共有が必要になる。こうした一連のプロセスを従来の手作業で行うことは迅速さに欠けるという課題があった。ブロックチェーンを活用することで、ネットワークに参加する企業は安全かつ迅速に情報を共有可能となり、迅速な保険金請求が可能になる。

日本では、東京海上日動火災保険株式会社と株式会社NTTデータが「外航貨物海上保険における保険金請求へのブロックチェーン技術適用に向けた実証実験」を行った。この実験は、世界8拠点(ドイツ、オランダ、米国、チリ、中国、台湾、韓国、タイ)の企業を対象として、保険金の支払い業務で利用したデータをブロックチェーンで共有、保険金の支払いプロセスに利用できるかを検証したものだ。当実験により、被保険者は必要書類の提出後、受け取りまでの期間が最大1か月超から1週間程度まで短縮可能になるとの効果が確認された。

貿易金融

貿易金融においてもブロックチェーンは利用が検討されている。貿易取引では、輸送時間の関係で商品の引き渡しと代金決済の間にタイムラグが発生する。また、多種多様な取引が複数の関係者により行われることから、通常の商取引よりも成立が難しく、取引が複雑だ。

そうした国境を超えた取引を円滑に進めるために、貿易金融では銀行発行の「信用状」を利用する。従来の信用状を利用した取引では、輸出者、輸入者、銀行など取引関係者が多く、メールや郵便での連絡を行う。しかし、こうした事務手続きで消費する時間は貿易金融において課題となっていた。

ブロックチェーンの活用は、銀行による信用状の発行から輸出者へ情報が届くまでに要する期間を、数日程度から最短数分にまで省略することが可能だ。日本においては、オリックスとNTTデータがブロックチェーンを活用した貿易金融の実証実験を実施している。

まとめ

各分野へブロックチェーンが導入することによって、コスト削減、精度向上、透明性向上、品質・信頼性・トレーサビリティ向上につながる。しかし、ブロックチェーンのユースケースを従来のサービスに取り入れるには、まだまだクリアしなければならない技術的課題や法律も多い。ここで取り上げたブロックチェーンのユースケースは金融分野に絞っており、他にもIBM・ウォルマートが進めるサプライチェーンへのブロックチェーン活用など、さまざまなユースケースも存在している。第4次産業革命の一角を担うブロックチェーン、引き続き注目していきたい。

【参照記事】Identifying financial service use cases in blockchain for businesses
【参照記事】「FinTech実証実験ハブ」初の支援決定案件の実験結果について
【参照記事】世界のブロックチェーン調査2018
【参照記事】JPX_working_paper_Vol26.pdf
【参照記事】外航貨物保険の保険金請求へのブロックチェーン技術適用に向けた実証実験の完了

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。