カーボンニュートラルは、気候変動防止のための重要な課題となっています。既に多くの企業や国がこの方向への取り組みを開始しており、その中にはブロックチェーン技術を利用している例も存在します。
2022年12月2日には、福岡県北九州市が社会貢献アプリ「actcoin(アクトコイン)」を開発するソーシャルアクションカンパニー株式会社と連携し、一緒に「KitaQ Zero Carbon」という気候変動対策プロジェクトを進行中です。これは、市民生活とのつながりを深め、カーボンニュートラルへの取り組みの進行状況をより明確にすること、そして市民が脱炭素型ライフスタイルを採用しやすくすることを目指しています。
この記事では、福岡県北九州市でのアクトコインの取り組みについて詳しくお伝えします。
目次
- 「actcoin(アクトコイン)」とは
- カーボンニュートラル実現プロジェクト「KitaQ Zero Carbon(キタキューゼロカーボン)とは
2-1. 宅配便ロッカーPUDOステーションを利用して荷物受け取り
2-2. 小型電子機器の回収
2-3. KitaQ Zero Carbon関連イベントでのゼロカーボンアクション - カーボンニュートラルとは
- カーボンニュートラルにブロックチェーンを使うメリットについて
4-1. 透明性の確保
4-2. 自動化と効率化
4-3. トークン化による新しいビジネスモデルの創出 - まとめ
①「actcoin(アクトコイン)」とは
ソーシャルアクションカンパニー株式会社が運営する「actcoin」は、ブロックチェーン技術を活用して、個々の社会貢献活動を可視化し、その量を定量化する手段として提供するサービスです。2019年にこのアプリは公開され、個々人の社会貢献活動がそれまでのように無形のままではなく、具体的な形で表現されるようになりました。
「actcoin」は、SDGs(持続可能な開発目標)に貢献する行動を行ったユーザーに対してデジタルポイント「アクトコイン」を発行します。ユーザーの活動が可視化され、各ユーザーの関心分野や、登録団体の活動について理解を深めることが可能となります。このサービスを活用することで、社会課題についてのセミナーへの参加やボランティア活動、課題解決を目指す団体への寄付、あるいは日常生活において社会や環境に配慮した行動を取り入れるといった「ソーシャルアクション(=社会貢献活動)」が認識され、アクトコインを獲得することができます。
actcoinのスマートフォンアプリには、参加機能、習慣機能、寄付機能、発信機能という4つの機能が備わっており、ユーザーは自分に合った機能を選んで利用することができます。このアプリを通じて、ユーザーはSDGsの17の目標それぞれに対応した形での支援を行うことが可能となります。
「actcoin」は300を超えるパートナー団体(NPO、企業、自治体など)と連携し、”ソーシャルアクションを新しい価値に変える”というミッションのもと、社会貢献の輪を広げています。2022年12月時点で、15,000人以上のユーザーと320を超える登録団体(NPO、企業、学生団体、自治体など)がつながる、社会貢献プラットフォームとして機能しています。
ユーザーが集めたアクトコインは、法定通貨(日本円など)に直接換金することはできません。それらは、NPOへの寄付やエシカルな商品との交換、あるいは社会貢献活動を行う個人への支援といった形で使用することができます。
ユーザーがactcoinを通じて行った社会貢献活動の履歴は可視化され、これによりユーザーは自己の活動や興味関心をPRすることや、同じ興味関心を持つ人々と新たなコミュニケーションを持つことが可能となります。
actcoinが獲得できるアクション(2022年12月1日より実装)
②カーボンニュートラル実現プロジェクト「KitaQ Zero Carbon」とは
次に、カーボンニュートラル実現プロジェクト「KitaQ Zero Carbon(キタキューゼロカーボン)」について説明します。
福岡県北九州市は2021年から「KitaQ Zero Carbon」プロジェクトを推進しています。そして、2022年12月からはこのプロジェクトを、ソーシャルアクションカンパニー株式会社と協働で進めることになりました。この協働により、福岡県北九州市内限定で、オープン型宅配便ロッカーPUDOステーションの利用や小型電子機器の回収への協力など、日常的で反復可能なアクションに対して「actcoin」を獲得できる新しい機能が実装されました。これにより、市民生活との接点を増やし、取組みの可視化を推進し、より多くの人々が脱炭素型ライフスタイルに移行するのを後押しします。
2-1.宅配便ロッカーPUDOステーションを利用して荷物受け取り
具体的な取り組みの一つに、オープン型宅配便ロッカーPUDOステーションの利用があります。Packcity Japanが運営するこのロッカーは、駅、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、駐車場、公共施設などで24時間いつでも宅配便の受け取りや発送が可能です。利用するためには、ヤマト運輸が提供するサービス「クロネコメンバーズ」への会員登録が必要です。
荷物をPUDOステーションで受け取ることで再配達によるCO2排出が抑制され、環境に優しい取り組みとなります。一回の利用で500コイン獲得できます。現在、アクトコインが獲得できる設置場所は以下の通りで、今後も拡大される予定です。
- 北九州モノレール 城野駅
- 北九州モノレール 香春口三萩野駅
- アミュプラザ小倉
- 北九州モノレール 片野駅
- 北九州モノレール 競馬場前駅
荷物の受け取りからactcoinの獲得までのプロセスは以下の通りとなっています。
- 「クロネコメンバーズ」に登録する
- 荷物受け取り場所の指定
「クロネコメンバーズ」サービスの受け取り場所から、利用可能な宅配便ロッカーを選択します。選択は一覧からでも地図からでも可能です。指定したロッカーに荷物が届くと、「納品完了通知」が送られてきます。 - 荷物の受け取り
納品完了から3日以内に指定したPUDOステーションで荷物を受け取ります。操作は次のとおりです。(1) タッチパネルを触り、「受け取り」を選択します。
(2) 「納品完了通知」に記載の「受取用バーコード」をスキャナーにかざすか、「認証番号」を入力します。
(3) サイン欄に指で署名します。
(4) ロッカーの扉が開いたら、荷物を取り出します。 - actcoinの獲得
対象施設の宅配便ロッカーの扉裏には、actcoin獲得用のQRコードが掲示されています。actcoinアプリでこのQRコードを読み取り、コインを獲得します。
2-2.小型電子機器の回収
不要になった小型電子機器の回収もactcoinの獲得につながります。回収・リサイクルされることで、廃棄物の削減に貢献します。専用の回収ボックスに小型電子機器を入れ、ボックスに貼られたQRコードをactcoinアプリで読み取ると、一回につき500コインが獲得できます。
以下に、actcoinが獲得できる回収ボックスの設置場所を一部紹介します。今後、設置場所はさらに拡大される予定です。
- 北九州市役所
- 小倉北区役所
- 若松区役所
- 八幡西区役所
- 北九州市立大学(北方キャンパス)
- 門司区役所
- 小倉南区役所
- 八幡東区役所
- 戸畑区役所
2-3. KitaQ Zero Carbon関連イベントでのゼロカーボンアクション
市内で開催されるイベントに参加し、会場に設置されたQRコードを読み取ることで、actcoinを獲得することが可能です。このイベントでは1時間につき1000コインが獲得できます。以下は2023年3月時点で実施されているKitaQ Zero Carbonプロジェクトの一部で、ここでactcoinが獲得できるイベントを紹介します。詳細はactcoinのWebサイト内の「ACHIEVEMENT」から確認することができます。
③カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、人間の活動によって排出される温室効果ガス(主に二酸化炭素)の量を削減し、また何らかの方法でこれらのガスを吸収し、その結果として排出量がゼロになる状態を指します。つまり、排出される温室効果ガスを減らすことと、残った排出量を吸収することがカーボンニュートラルの達成には必要です。
このカーボンニュートラルは、気候変動の防止という大きな課題に対する一つの解決策であり、多くの企業や国がこの目標に向けて様々な取り組みを進めています。具体的な取り組みとしては、再生可能エネルギーの利用拡大、省エネルギーの推進、森林保護と植林などが考えられます。
そして、カーボンニュートラルの達成は、SDGs(持続可能な開発目標)の中でも特に気候変動や環境保全に関連する目標の達成に重要とされています。特にSDG13「気候変動に対する緊急対策」の達成に向けて、カーボンニュートラルの実現は必須とされています。
北九州市では、以下の3つの環境活動が進められています。
- 北九州市森林組合では、森林が持つ多様な機能を持続的に発揮するための取り組みをしています。
- NPO法人I-DOでは、自転車を中心とした都市部の移動環境の改善に努めています。
- 認定NPO法人フードバンク北九州ライフアゲインでは、商品にならない食品を引き取り、必要としている施設や団体、困窮している家庭に無償で提供する活動を推進しています。
④カーボンニュートラルにブロックチェーンを使うメリットについて
ブロックチェーンは、仮想通貨だけでなく金融、不動産、物流、食品等の多くの分野で活用が進んでいます。さらには、スマートコントラクトを活用したNFT(非代替性トークン)など、価値の譲渡や売買を容易にする用途も見られます。このようなブロックチェーンの特性は、環境保全活動にも期待されており、以下にその利点を説明します。
4-1.透明性の確保
ブロックチェーンを使用することで、カーボンニュートラルに向けた取り組みの過程と成果を正確に記録し、公開することが可能となります。これにより、信頼性のある活動レポートを公開でき、消費者や投資家が環境に配慮した企業やプロジェクトを選びやすくなります。
4-2.自動化と効率化
ブロックチェーンを活用することで、カーボンニュートラルへの取り組みに関連するデータ管理、契約作成、取引処理などを自動化できます。このようにシステム化が可能になるため、actcoinのような仕組みが実現しやすくなり、管理業務の効率化が図れ、人為的なミスも減らせます。
4-3.トークン化による新しいビジネスモデルの創出
ブロックチェーンを用いて、カーボンニュートラルに貢献した二酸化炭素の削減量をトークン化することで、新しいビジネスモデルの機会が生まれます。これはactcoinがすでに行っているような取り組みの一例です。企業が自身の取り組みを通じて削減した二酸化炭素量をトークン化し、それを売却することで、資金調達が可能になります。これにより、環境保全とビジネスを両立させた取り組みが可能となります。
⑤まとめ
社会貢献活動やボランティアは参加者に満足感をもたらしますが、その成果が明確に残ることは少ないのが一般的です。環境保全のための活動に参加したとしても、その具体的な貢献度を見ることは難しいでしょう。しかし、actcoinのようなシステムでは、貢献度に応じてポイントが得られるため、貢献度が可視化されます。これは、ゲーム感覚での継続参加を促進する効果もあります。ブロックチェーンが活用されていることで、貢献が確実に記録され、公開が容易になると同時に、ポイントの還元等もシステム化しやすいと言えます。
ただし、これらの環境保全活動をより活性化させるためには、actcoinのようなサービスが広く認知されることが必要です。actcoinに関心を持たれた方は、是非そのウェブサイトを訪れてみてください。
立花 佑
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