イーサリアムはスマートコントラクトを備えることによって、分散型アプリケーション(DApps)や分散型金融(DeFi)プラットフォームの基盤となり、ネイティブトークンのイーサリアム(ETH)は時価総額で第2位の暗号資産に成長しました。
しかし、イーサリアムは取引手数料の高騰や取引処理速度が遅いといった問題を抱えています。これらの問題を解決するためにイーサリアム自体のアップグレードが計画されていますが、アップグレードには時間を要しています。
そこで、イーサリアムの取引をより安くより速くするためのスケーリングソリューションが登場しました。Optimismもこのスケーリングソリューションの1つにあたります。
Optimismとは?
Optimismとは、高度なデータ圧縮技術を使ってイーサリアムブロックチェーンの外で取引を処理することで、イーサリアムの取引を高速化し、コストを削減するスケーリングソリューションです。
Optimismでは、Optimistic Rollupというスケーリング手法を用いています。Optimistic Rollupは、複数のトランザクションを1つのトランザクションにまとめ、イーサリアムの外のRollupチェーン(レイヤー2)で取引を処理、まとめられたトランザクションはメインのイーサリアムのブロックチェーンに書き込まれるという技術です。
Optimistic Rollupはロールアップ技術の一種です。他のロールアップ技術と比較して特徴的な点は、ロールアップしたすべての取引が有効であると「楽観的に」仮定することにあります。これにより、個々の取引はその有効性を直接証明するものを提出する必要がなくなるため、コストや時間を節約することができるのです。
Dune Analyticsのダッシュボードによると、Optimismはイーサリアムの取引手数料(ガス代)を129分の1に削減していることがわかります。また、SynthetixやUniswapなどの様々なDeFiプラットフォームをサポートしていることもわかります。
Optimismは2019年6月に導入され、2019年10月にテストネットが公開されました。2021年10月にEVM(Ethereum Virtual Machine)と互換性のあるバージョンのアルファメインネットをローンチ、2021年12月にオープンメインネットがローンチされました。
Optimismの仕組み
前述で、Optimistic Rollupではロールアップしたすべての取引が有効であると「楽観的に」仮定すると説明しましたが、ここで疑問が生じます。イーサリアムに書き込まれるトランザクションを検証せずに有効であると仮定したままで良いのか、また虚偽の結果が書き込まれる可能性は無いのかという疑問です。
実はOptimistic RollupにはFault proof(旧称:Fraud proof、FP)が実装されているため、楽観的な仮定が可能になっています。仮定されたものを検証し、不正を正すことができる期間が設けられているのです。
Optimismではロールアップされたブロックはすべて、Canonical Transaction Chainと呼ばれるイーサリアムのスマートコントラクトに格納されています。ユーザーがCanonical Transaction Chainに直接トランザクションを提出しない限り、新しいブロックはシーケンサと呼ばれるノードによって生成されます。
このシーケンサは有効な取引を即座に確認し、Optimismのレイヤー2からレイヤー1ブロックチェーン(イーサリアム)の上にあるブロックを作成し実行するという役割を担っているのです。
OptimismのFault proofでは、検証者がシーケンサが書き込んだトランザクション群に不正がないかを検証します。不正がなければ何もせず、不正があれば検証者は異議を申し立てます。異議申し立てにあたっては、イーサリアム上のOVM(Optimistic Virtual Machine)と呼ばれるEVMと似た設計で作られた互換性のある環境での検証に必要な情報を提出することになります。
OVMで状態遷移が再実行され、不正があったと判断された場合、異議が申し立てられた以降の状態が無効になり、不正が正されたということになります。
シーケンサになるには担保を預けておく決まりになっているのですが、Fault proofの一連の流れで、シーケンサが預け入れた担保は一部がバーンされ、残りは不正の証明に貢献した検証者に分配されるという仕組みで、検証者にインセンティブを与えています。
Optimismの利用方法
Optimismを利用するには、イーサリアム(ETH)またはERC-20トークンが必要です。用意したトークンをOptimismのトークンブリッジに預けることで、Optimismを通じてイーサリアムで取引することができます。取引が終了したら、トークンをイーサリアムのメインネットに戻すことも可能です。
また、トークンを入金するためにはOptimism Gatewayを通じて入金する必要があります。MetaMaskのような暗号資産ウォレットを通じてGatewayに接続します。ただ、入金には手数料と数十分程度の時間がかかる場合が多いようです。
Optimismに資金を預けると、サポートされている分散型アプリケーション内で利用することができます。例えばUniswapでは、Optimismを通じて取引することで手数料を節約することが可能です。ネットワークのメニューからOptimismを選択するだけで、通常通り取引ができます。
OptimismとArbitrum
既存のロールアップソリューションはOptimismだけではありません。同様のソリューションを提供する他のネットワークにArbitrumがあります。他のロールアップソリューションと比べても、機能性などの観点から、ArbitrumがOptimismに最も近いものであると言えます。以下では、両者の違いと類似点を見てみましょう。
類似点
Arbitrumでは、開発者はEVMコントラクトを変更せずに実行することができ、イーサリアムのセキュリティの高さを享受しながら、イーサリアムのトランザクションをレイヤー2で実行することができます。
イーサリアムのトランザクションをレイヤー2で実行し、かつセキュリティの恩恵を受けている点などは、Optimismとよく似た機能を提供していることがわかります。
相違点
Arbitrumは、イーサリアムのスマートコントラクトの機能を強化するレイヤー2ソリューションです。スマートコントラクトのスピードとスケーラビリティを向上させ、プライバシー機能を追加することに重点を置いています。
Optimismはトランザクションコストを低下させることに重きを置いているので、ここが違いの一つと言えるでしょう。
また、OptimismとArbitrumの違いに、前者がシングルラウンドのFP、ArbitrumはマルチラウンドのFPを使用する点にあります。OptimismのシングルラウンドFPでは、レイヤー1が全てのレイヤー2トランザクションを実行することに依存しており、それによってFPの検証が即座に行われることが特徴です。
また、ArbitrumはArbitrum Virtual Machine(AVM)を、OptimismはOptimistic Virtual Machine(OVM)を使用していることも大きな違いになります。Optimismでは、スマートコントラクトの実行に使用するイーサリアムのノードごとに、イーサリアムのネットワークとの接続をより強化する必要があるのです。
現在、イーサリアムのすべての問題に対応するスケーリングソリューションは存在しません。Arbitrumは主にイーサリアムのスマートコントラクトの機能性を向上させることを目的としています。Optimismも同様ですが、トランザクションのコストを削減することに重きを置いているという点が大きく異なります。
まとめ
Optimismは、2022年3月にAndreessen HorowitzとParadigmが主導する1億5,000万ドルのシリーズB資金調達ラウンドを終了し、16億5,000万ドルの企業価値が付けられました。ロードマップには、次世代Fault proof、シャーデッドロールアップ、分散型シーケンサなど、Optimismプロトコルのアップデートが含まれています。
Optimismはこれまで、イーサリアムと比べ、特定のバリデータをホワイトリストに登録するといった中央集権的な面も持ち合わせていました。しかし、2022年4月に分散化に向けて大きな一歩を踏み出し、Optimism Collectiveと呼ばれるDAOを立ち上げ、プロトコルを統治しています。
また、DAOとOptimismの分散化された未来を後押しするOptimismユーザーやコミュニティ参加者に、新たに発行されるネイティブトークンのOPトークンのエアドロップも開始しています。今後も様々な変化が期待されるOptimismに注目していきましょう。
監修者: 田上智裕

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